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第一部
第10話
しおりを挟む毎晩義兄がエルーシアの部屋に通うようになり夜会以外で夜にエデルに会うことができなくなった。その一方でエルーシアは昼も部屋を抜け出せなくなってしまった。ドロシーに加えもう一人専属侍女がつけられてしまったためだ。
侍女の名はルイーサ。背が高く口数の少ない侍女だった。専属ゆえに常にエルーシアの側についていた。おやつタイムにも釣られない。ドロシーと二人きりになれない、そのため外に出られなくなってしまった。
「えっと実は外に出ているのがバレて監視してるとか?」
「それはないと思います。侍女としてはポンコツなので」
「え?」
周りに聞かれないようにふたりはコソコソするが故に傍目には相当に怪しい。それをルイーサが遠目で見ているがツっこんではこない。
「とにかく不器用です。あれでなぜ専属侍女になれたのか。あれではエルシャ様の着替えの手伝いはできません。ですが力持ちなので他で役立ってますよ。監視役ならもっとちゃんとした侍女を連れてくるかと」
「そうなの?じゃあ?」
「ただ侍女たちには大人気です。第三の王子登場、みたいな」
「へ?」
「あの通り美人ですが、背も高くて男装がめちゃくちゃ似合いそうじゃないですか?声もハスキーでいい声ですよね。王子様不在の今!皆で大歓迎しているところです!男装の麗人とかステキすぎる!」
久々に見るドロシーのはっちゃけにエルーシアが呆然とする。確かにハスキーボイスだ。口数が少ないが故に印象に残る。しかし王子とは?なぜに男装?王子様は女性でも構わないのか?
「もうね、笑顔が至高で侍女殺しと呼ばれていますよ。ものすごく凛々しい笑顔らしいんですが私はまだ見たことありません!是非みたいです!できれば男装姿で!」
そこはやはり男装なのか。
「今度着替えて貰えば?」
「なるほど!お願いしてみます!」
配属されたてで人となりもわからない。味方に引き込むかどうか様子を見ましょうとドロシーにも言われてしまった。ルイーサの休憩がエデルの逢瀬に被るためエデルのことはまだバレていないようだがエデルとは鉄格子越しに会うだけになってしまった。それでもエデルから指にキスを落とされれば至福で蕩けてしまう。
「仕方がありません。こうして毎日会えてますし昼間は無茶をしないでください」
「でも夜も‥‥」
「旦那様が夜会に出かける日まで大人しくしていましょう」
それは辛すぎる。エデルに触れたい。だが仕方ない。エルーシアは嘆息と共に頷いた。
「明日は遠乗りに出かけようか」
その晩はラルドのたっての願いでエルーシアはベッドから出てラルドの膝に横抱きにされていた。両親がいなかったエルーシアは子供の頃にラルドにべっだり甘えていた。よくラルドの膝にも乗っていたのだが今するのは子供のようで気恥ずかしい。もじもじしつつ義兄の言葉に応じた。
「遠乗りですか?」
「ずっと閉じ込めてしまっているからね。明日は時間が取れる。一緒に出かけよう。馬車になるが大丈夫か?」
エルーシアは馬車に乗っていて野党に襲撃された。そこを気遣われたのだと思えば義兄の心遣いがとても嬉しい。
「はい、大丈夫です。嬉しい‥ありがとうございます」
遠乗りということは敷地外だろうか。そうなるとあの襲撃事件以来だ。半年ぶりの外出に笑顔を弾けさせればラルドが嬉しそうに抱きしめてくる。背筋を撫でられ耳に口づけられると気持ちよさでぞくりと震えが走る。そこはすでにエデルに散々攻めれらて感じやすくなっていた。
義兄に口づけられ全身を優しく撫でられるとエデルの逢瀬の時の様にエルーシアの奥が熱くなるのがわかる。兄妹なのに、恋愛感情はないのに。子供の頃と同じ義兄の抱擁でなぜエデルの時のように体が反応してしまうのか、エルーシアにはわけがわからない。
家族のキスなのに‥こんな風に感じる私はいけないことをしているの?エデルに会えなくて欲求不満?私が淫らではしたないからかしら?
そこを義兄に指摘されぎくりとした。
「シアは感じやすいな」
「え?そんな‥」
「恥ずかしがるところも初々しくて可愛らしい」
可愛い。愛らしい。ラルドから溢れんばかりの賛辞が降ってくる。ラルドの甘い言葉はエルーシアの乙女心をくすぐっていた。昼夜エデルに会えなくなり焦がれる心がそれで少し癒される。
ああ、お義兄さまのキスはエデルのキスに似ているから‥だから‥‥
義兄に甘えてばかりだと心中ため息が出てしまった。
「支度をして部屋で待っておいで。明日午後に迎えに行こう」
「はいお義兄さま、楽しみです」
笑顔のラルドに優しくゆっくりと、唇を食むように口づけらる。初めてキスされた時の、ただ触れ合うだけのものとだいぶ違っていたがエルーシアはその口づけにうっとりと目を閉じた。ラルドの手が薄い夜着越しに背筋を這い尻から太ももをゆっくり撫でる。官能を誘うように体中を這う義兄の手の愛撫にエルーシアは蕩かされていた。
少しずつ無自覚に。エルーシアは義兄の手の中で快楽に堕ちていた。
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