上 下
14 / 78
第一部

第13話 ※

しおりを挟む



 エルーシアはベッドの中で深いため息をついた。

 今日はエデルを怒らせてしまった。あんなエデルを見たのは初めてだった。未だにエデルが怒った意味がわからない。エデルが働いているのに義兄と遊びに行ったことがやはりよくなかったのだろうか。その上謝ることもせずそのまま立ち去ってしまった。明日の午後は会いにきてくれるだろうか。ちゃんと話をしてきちんと謝らないといけない。

 うつらうつらとそんなことを考え、ふとエルーシアは自分の頭を撫でる手に目を覚ました。目を擦り見上げればエデルが立っていた。エデルは全身黒服を着ていた。ランプを灯したまま寝てしまったため剥き出しの顔だけ闇から浮かんだ様だった。

「エデル?!」
「夜中にすみません」
「全然平気よ?どうしたの?」

 会いたかった愛しい恋人が目の前にいる。機嫌は収まっただろうか。エルーシアを送り届けるために寝室に入ることはあったが会いに来てくれたことは初めてだ。それがとても嬉しい。

「その‥昼間つまらないことで怒ってしまい‥謝りに‥」

 自分を気遣いわざわざ謝りに来てくれたの?視線を逸らし言い淀むエデルが愛おしい。エデルの手を取れば随分と冷たい。夏も終わりかけ、外は寒かったのだろうか。

「怒ってないわ。私こそごめんなさい」
「いえエルシャ様は何も‥」
「嬉しい‥会いたかったのよエデル」
「エルシャ様‥」

 温めてあげたい。ベッドに抱き寄せればエデルがのしかかってくる。その体を上掛けで包んだ。

「体冷えてる。寒かった?」
「いえ‥そういうわけでは‥エルシャ様は暖かいですね」

 体を撫でる冷えた手に甘い声が出そうになるが必死に堪える。エデルとベッドで触れ合うのは初めてだ。しかもここは自分の寝室。その背徳感でさらに鼓動が跳ねる。エデルの親指がエルーシアの唇を撫でた。

「エデル‥」
「少しだけ‥すぐ帰ります‥」

 帰らないで。そう囁けばエデルの体が強張った。二週間、昼も夜も触れ合えず焦れに焦れていた。抱きしめられ口を塞がれ全身を撫でられる。性急に夜着の中に手が入れられ胸を揉まれまだ柔らかい頂を転がされればすぐに硬く勃ち上がる。エルーシアの鼻から甘い声が抜けた。久し振りに抱き合い触れ合える。異常に興奮しているのはエデルもだろうか。少し荒い愛撫もそう思えば嬉しい。求められていると感じられた。

「エデル‥大好き‥」
「エルシャ様‥」

 冷たい手が太ももを辿り付け根を撫でる。眠る前の剥き出しのそこにエルーシアは頬を染めて顔を背けるがエデルが笑みを深めた。

「あん‥」
「今日も履いてないんですね」
「だって‥眠るところだったから‥」
「いつも僕を迎えてくれるようで嬉しいです」
「エデル‥」
「でも他の男には晒してはダメですよ?この体も‥」

 夜着越しにひんやりとした手が這わされエルーシアがビクビクと反応する。触れられただけで快感が走る。体が与えられる愉悦に反応した。だがエデルの手がノックの音で止まる。

「シア?まだ起きていたのかい?」

 ランプの灯りが漏れていたせいだろう、ラルドが扉を開けて寝室に入ってきた。エルーシアの体に触れていたエデルがびくりと震える。エデルは黒服を着ていたが白い寝具の上では目立ってしまう。エルーシアは慌てて寝具を乱しエデルを隠した。もう夜も更けている。あまり遅いとラルドはエルーシアの部屋に顔を出さない。今晩は来ないと思い込んでいた。

「エルシャさ‥」
「黙って!動かないで!」

 エルーシアは寝具の中で膝を立てエデルの空間を確保する。こんなところにいるエデルが義兄に見つかったら殺されてしまう。エルーシアは背筋をぞくりと震わせた。

「シア?」
「えっと‥寝付けなくて‥‥」

 下手に拒絶しては勘繰られそうだ。半身を起こしラルドに笑顔を向ける。その笑顔に誘われるようにラルドが近づいてきた。

「お休みが言えてよかったが今日は遠乗りで疲れただろう?」
「た、楽しかったから興奮してるのかも‥‥」

 自然に会話しようとすればするほどわざとらしく感じられ焦りまくる。ラルドはそれに気づいていないのかベッドに腰を下ろし横になるエルーシアの頭を撫でた。ラルドがもう少しでエデルに触れそうでエルーシアがガチンと固まった。

「そうか、ならばまた時間をとって出かけようか」
「そう‥です‥ね」

 エルーシアの言葉が詰まったのはエデルの手がエルーシアの太ももを這ったから。その悩ましい動きはまるでエルーシアの答えはダメだと罰しているようだ。

「もう休みなさい。明日はゆっくりすればいい」
「はい、ありがとうございます」

 そして頭を撫でていたラルドがエルーシアを抱き寄せするりと優しく口づけてきた。いつものおやすみのキスだが今は側にエデルがいる。エルーシアは息をのんだ。だがここで抵抗すれば怪しまれる。この口づけを大人しく受け入れるしかない。
 抵抗しないエルーシアにラルドが目を細めベッドに押し倒すように覆いかぶさってきた。

 え?これは‥‥?

 エルーシアは喉の奥から声を漏らしたがラルドはさらに大きな体でのしかかり唇を塞ぐ。普段は抱きしめるだけ、ベッドに押し倒されたことはない。初めての展開に頭が真っ白になった。

 エデルがいる‥悟られちゃ‥‥抵抗しちゃダメ‥‥

 されるがままにキスを受け入れていれば、さらに口を親指で割られて舌が滑り込んできた。舌で口内を愛撫される。

「ん‥‥ふ‥ンンッ」

 昼間に受け入れたばかりのそれをラルドが当然のようにしてくる。口内を舌で弄られ感じやすい歯の裏をなぞられエルーシアはぶるりと震えてしまった。そこはエデルのキスで気持ちがいいと教えられている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...