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異世界生活:グリーデン編

殺奪のゴブリンキング①

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集落のゴブリンの処理と不屈の剣の3人の保護をユグドラシルに任せ、蓮達はグランの元へ向かった。

「この先におるぞ。気を抜くな」

リルがフェン達に言い、気を引き締めさせる。
磔場はりつけじょうとテント内、洞窟内に居たゴブリンどもを差し引くと、おおよそ20体から30体のゴブリンが残っている計算になる。

集落から東側に森を抜け、走ること5分。
再び木々のない開け場所がある。

キンッ!
ヒュンッ!
キンッ!

鉄がぶつかるような音や何かが空を斬る音が聞こえてくると同時に交戦しているグランが見えた。

「まずいっ!」

片膝をついたグランの頭上から、青い剣身が振り下ろされようとしている。

ザシュッ!

青色の剣は空振り、地面を斬りつけた。
すんでところで蓮が闇魔法を発動し、グランを引き寄せ、回避させたのだ。

「ゲギャッ!?」

狙った獲物が思わぬ動きをしたため、状況が分からずに下卑た声を発する。
しかし、声の主は剣を振り下ろしたゴブリンジェネラルではなかった。

動きを封じるために威圧スキル発動。
蓮が睨む先には2体のゴブリンジェネラル。
そして、その先にはゴブリンとホブゴブリンに囲まれ、人間の骨を組んで作られたような玉座に、ふんぞり返るように座るゴブリンキングが居た。
ゴブリンキングの足元にはブレイドと思われる人族の男性が横たわっている。

他でもない。
下卑た声の主はゴブリンキングだ。
ユグドラシルが言うように、ゴブリンジェネラルからは意志が感じられない。

「へへっ。遅かったじゃねぇか……」

グランにはいくつもの切り傷がある。
それも、腕や脚などまるで致命傷にならないような場所ばかり。
グランが致命傷を避けるために自身を守ったという事もあるのだろうが、メイやフェンもそうだった。
その事から蓮は、あえて痛めつけているのだろうと思い、苛立ちを抑えられなくなっていた。

「すいません。これを……」

蓮はユグドラシルからもらった世界樹の実を食べさせ、完全回復させた。

近くで身構える意志を感じない2体のゴブリンジェネラルの手にはそれぞれ、ミスリルの剣と槍が握られている。

「返してもらうぞ!」

蓮は再び闇魔法を発動。
一気にミスリルの剣と槍を引き寄せ、奪い返し、それをフェンとローに渡した。

「リルは残党を頼む!グランさんとフェンとローはゴブリンジェネラルを!」

蓮の指示で戦闘開始。
グラン、フェン、ローは『おうっ!』と返事をし臨戦態勢に入り、リルは遠吠えを上げ取り巻きの注意を引き付けた。

「お前の相手は俺だ!」

蓮は瞬時に間合いを詰め、跳躍。
蓮は自身の倍以上の背丈のあるゴブリンキングの顔面目掛けて蹴りを放つ。
それを蓮の身の丈ほどありそうな大きな鉈のような剣でゴブリンキングは防ぎ、高らかに笑った。

「ゲギャギャギャギャ!」

聞くだけで苛立つ笑い声。
生理的に受け付けないなどという生易しものではない。
まるで昔から殺し合いをしてきているかのように。
まるで遺伝子に殺し合いをするように組み込まれているかのように殺意が湧き出てくる。

蓮は蹴りでゴブリンキングの意識を引き付け、その場から少し移動した。
ここで戦えばブレイドの死体やゴブリンジェネラルと戦うグランたちに被害が出るからだ。

鑑定

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【ゴブリンキング Level:223 】
 HP:32213  /  32213
 MP:22165  /  22165
 SP:30895  /  30895
 筋力:5042  攻撃力:5532
 耐久:6566  防御力:7066
 知力:4642    魔力 :4642
 抵抗:6874  抵抗力:6874
 敏捷:8998
 器用:5362
 幸運:  300

【ユニーク】
スキル強奪

【スキル】
剣術Lv8、武術Lv6、剣技Lv5、武技Lv2、統率Lv6、剛力Lv5、震脚Lv4、鎧皮Lv4、威圧Lv5、咆哮Lv6、身体強化Lv7、魔力強化Lv6、危険察知Lv6、気配探知Lv6、闘気制御Lv5、魔力制御Lv5、自然治癒Lv7、斬撃軽減Lv4、衝撃軽減Lv2、魔法ダメージ軽減Lv4、再生Lv4、水魔法Lv5、火魔法Lv6、風魔法Lv6、氷魔法Lv4、地魔法Lv7、雷魔法Lv3、闇魔法Lv4、支援魔法Lv7、結界魔法Lv3、

【適性】
火Lv3、風Lv1、地Lv3、闇Lv4、支援Lv3

【装備】
鎧斬りの大剣アーマーブレイカー、鋼の胸当て、鋼の肩当
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

マンティコアとの戦闘前であれば苦戦をしたであろうステータス。
しかし、今は脅威というほどのものではない。

恐ろしいのではなく、ステータスではなく噂通りの、スキルを奪う能力を有していることだ。
まさかゴブリンキングが元々持っている適性以上の魔法を使用できるとは予想外だ。

まるで積み上げたもの奪われ、殺されていった者たちの無念が見えるようだ。
蓮はこれほど不愉快な鑑定結果はないと感じた。

「ゲギャッ!ゲギャッ!ゲギャッ!」

再びゴブリンキングが大声をあげて笑う。
フェンが言うように、嘲笑うように。
こけにする様に。
まるで蓮が敗北する未来が見えているかのように。


蓮はアイテムボックスから竜狼蓮華を取り出し、鞘から抜き構えた。
最大の一撃を繰り出そうと、蓮は全身と刀身を闘気で覆う。
刹那。
身体の力が抜ける。

闘気が乱れ、刀を落としそうになる。

「なんだ!?」

蓮は大きく後方へ跳躍し間合いを取る。
そして、自身のステータスと、ゴブリンキングのステータスの変化を見比べた。
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