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異世界生活

異世界農業②

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リンゴの木を作り終え、実食。
あまりの回復力に驚いた。

8等分したリンゴの内、桜が食べたのは3切れ。
それでリンゴの木を作るのに消費した4000近いMPが回復したのだ。
リンゴ1つ当りに秘められた回復性能は上級ポーションに匹敵する。
8分の1のたった1切れでも中級ポーションに匹敵るする優れものだ。

「さぁ!どんどんやるよ!」

「やるよぉ!」

腕まくりをしてミカンの木を作る。
先程同様に地に手を当てて魔素を流し込む。
より甘く、より水水しく。
イメージと共に魔素を流し込む。

向日葵も変わらずポーズと表情だけは一人前だ。

先程よりも速く、そして消費MPを少なくしてミカンの木が完成。

桜は、今まで鑑定を疎かにしていたことに気が付いたようで、すぐさまミカンの性能を見た。

真似するようにミカンを睨みつける向日葵。
真剣な表情なので笑いにくいが、ついつい和んでしまう。

【ミカン レア度S】
・HP上回復。
・MP上回復。
・SP上回復。

こちらも問題なく高性能。

桜の行動を見てユグドラシルは驚いた。
先程よりも速く、消費MPを少なくミカンの木を作り上げたからだけではない。

物にしても魔物にしても鑑定をして情報を得ることは生存率を上げる。
桜が魔物などとの戦闘時を想定して、意識的に素早くミカンを鑑定した様子を見て、学習能力の高さに驚いたのだ。

元々の頭の良さに魔法神マーリンの加護が加わり、知力が高い。
そのため、様々な面で物覚えが良いようだ。

ミカンを剥いて一口食べる。
リンゴ同様に、高級ミカンのように甘くておいしい。
繊維も全く気にならない。

向日葵がミカンを食べている間に、小さなピーマンの木を2本。
人参、キャベツ、ジャガイモ、玉ねぎ、ニンニクをそれぞれ10個ずつ作った。

作った野菜は収穫してアイテムボックスにしまっておく。

「この中に入れておけば腐らないって本当に便利」

食材を手にする様になって、駄神改め、時空神クロノスから授かったアイテムボックスに感謝が強まる。

「これって放置してたらどうなるの?」

うねに作った野菜は収穫済み。
何も残っていないため、放置で良い。

しかし、ピーマンは収穫しても小さな木が残る。
リンゴとミカンは全て収穫するのは大変。
魔法で出来なくはないが、可能なら必要分だけ取って放置したい。

「しばらくすると新しい実が出来たり、今ある実が落ちます」

当たり前の回答が返ってきた。
収穫や水やりが日課になりそうだ。

大樹の家の傍で結界魔法の中にあるため、甘い匂いに誘われて魔物が侵入してくることもない。
結界魔法が元居た世界にあったなら、鳥害や獣害に悩む農家の人たちは喜んだ事だろう。

ピーマン、リンゴ、ミカンの木はそのままに、包丁や鍋などを作るために少し移動。
昨日ユグドラシルが作った石製の焼き台やテーブルのあるところに来た。

「えっと……。これと……。これはこうして……」

桜は何やら呟きながら地魔法でどんどん作り出していく。

鋭い石の包丁。
石製の口が広く浅い鍋。
石製の寸胴鍋。
石製の焼き台の横に、石製の調理台を作る。

どちらも表面が滑らかで、高度な魔力制御によって作られていることが読み取れる。

「これと同じものを木で作れるかな?」

桜は地魔法で石のとまな板を作りユグドラシルに見せた。

石製のは重くて混ぜにくく、掻き混ぜたときに鍋とぶつかってかける可能性がある。
まな板も同様だ。

欠けた石が体内に入っては一大事。

ユグドラシルは用途にあった木の質感で再現。
後は蓮が狩ってくる肉を待つだけ。

「ねぇユグドラシルさん。こういうのは作れる?」

桜は地面に絵を描き説明した。

しなり易い木の棒。
棒の下部には丸い滑車があり、服に使用させる繊維が巻かれている。
棒の中部から先端にかけて輪があり、輪の中を繊維が通る仕組みになっている。

釣り竿だ。
ユグドラシルは念のため桜の記憶を読み取らせてもらい、即座に再現。
長さ、重さ、しなり具合、滑車の滑らかさ、繊維の強度。
どれも完璧だ。

釣り針は地魔法を使い石作り。
半月状に弧を描く返しのある石針を作る。
硬すぎると折れるため、少し粘度のある石をイメージ。
そこに繊維を巻き付け出来上がり。

「ひまちゃん、お魚釣りしてみる?」

「おさかな!する!」

暇を持て余し始めた向日葵の遊び道具だ。
それに蓮が返ってくるまでに何か1匹くらい釣って驚かせたい。

万が一、何かあれば助けてもらえるようにユグドラシルに伝え、一緒に湖の畔に移動。
針に小さく切ったウマドリの肉をつけて、湖に投げ入れる。

竿を持つ向日葵。
向日葵を後ろから抱き締めるようにして竿を一緒に持つ桜。

クイ……。クイ……。グイッ!

弱い引きが、強い引きへと変わる瞬間に竿を立てて合わせる。

「よし!巻くよ!」

「うん!」

向日葵が滑車部分を回して手を痛めてはいけないため、桜が回し、向日葵は桜の手の甲に手を添えている。

重く強い引き。
大物だ。

「雷魔法で弱らせては?」

ユグドラシルがいきなりとんでもないことを言う。
効率は良いが、そういう問題ではない。

食物連鎖において、過程を楽しむという事は無駄な行為だ。
合理的に考えればユグドラシルの意見があっている。

しかし、向日葵に体験学習をさせるには、魔法に頼らない方が良いこともある。

ユグドラシルの言葉に『それじゃあダメなの』とにこやかに返答し、滑車を巻き続ける。

ザバァ……。

格闘の末に吊り上げられたのはさけの様な魚。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【キングトラウト Level:3】
HP:30   / 30
MP:10 / 10
SP:12   / 60
筋力:20  攻撃力:20
耐久:40  防御力:40
知力:30     魔力:30
抵抗:40  抵抗力:40
敏捷:45
器用:22
幸運:11


【スキル】
危険察知Lv3、水魔法Lv1、鱗強化Lv1

【属性】
水Lv1、光Lv1

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ただの魚のように見えて、ちゃんと魔物に分類されるのだと感じた。

体調は60cmセンチメートル程度。
なかなかの大きさだ。

「やたぁ!すごい!?すごい!?」

「やったねぇ!すごいすごい!」

向日葵は目を輝かせながら飛び跳ね桜に聞く。

桜は向日葵を抱き上げ、クルクルと回り抱きしめた。

向日葵は、褒めろと言わんばかりにユグドラシルを見てドヤ顔をしている。
この世界に来てから1番明るく良い表情であることに気づいたユグドラシルは、桜と同じように抱き上げ、回り、そして抱きしめた。

「ヒマワリ様。とっても凄いですよ」

ユグドラシルが優しく伝えると向日葵はご満悦。

そして向日葵の視線はあるものに釘付けとなった。
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