上 下
19 / 109
異世界生活

女神の加護で成長チート①

しおりを挟む
訓練を終え、話す蓮達。
その後ろで音がし、振り返るとフェンリルよりも二回ふたまわりほど巨大な鳥が横たわっていた。

「美味い奴が居たぞ」

フェンリルはどこか得意げな表情を浮かべている。
しかし、血を流した巨大な鳥の登場は、日本育ちの蓮達には、主に向日葵には刺激が強すぎた。

「うえぇぇん」

向日葵の号泣に慌てた様子のフェンリル。
悪気はなかったようだ。

「ちょっといいかな?」

「ちょっといいかしら?」

闘気をむき出しにした蓮と、魔力を漲らせた桜に、フェンリルはただただ怒られた。

「む、むぅ……」

涙ぐむ向日葵を見て、そして小さく『すまぬ』と言葉を漏らした。
まだ少しすすり泣きをしている向日葵に擦り寄り、柔らかい毛で覆われた身体で向日葵を優しく包んだ。

その一連の言動を見て、ユグドラシルは驚いた。

「あなた……。ひょっとして……」

「なんということじゃ……。よもやフェンリルの王たる我が従魔になるとはな」

従魔。
聞きなれないが、向日葵のスキル欄には確か従魔術Lv10と記載されていた。

「どういうこと?」

蓮が状況を確認すると、フェンリルが答えた。

「その言葉の遠い、我はこやつの従魔となったのだ」

その言葉を聞いて桜が『こやつって誰のこと?』と怒りを口にした。
フェンリルは桜にも弱いようで、慌てて『ヒマワリじゃったな』と訂正した。

理解が追い付かない蓮達にユグドラシルが補足する。

従魔とは、魔物と意思疎通を図り、従える事。

身体が大きい魔物や飛行能力のある魔物を移動用従魔にする事もあれば、強力な力を持つ魔物を戦闘用従魔にする事もある。
従魔契約は、主人か従魔のどちらかが死ぬまで続くそうだ。

「これも女神様のお導きか……。ヒマワリよ。我に名を授けよ」

フェンリルは納得したような表情を浮かべ、向日葵に名を付けるように言う。

言葉の意味が分かっていない向日葵に、蓮が『狼さんにお名前つけてあげて』と補足する。

「おなまえ……。んー。リル!リルちゃん!」

「ちゃ、ちゃんはやめよ」

ちゃん付けを恥ずかしがるフェンリル改めリル。
名付けたことで従魔契約完了。

完了の証に、向日葵とリルを青白い光が包み消えた。


向日葵のステータスボードを見ると従魔の欄が増えていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【ヒマワリ・ミツルギ Level:1 人族♀ 4歳】
HP:110   / 110
MP:830 / 830
SP:350   / 350
筋力:40  攻撃力:340
耐久:55  防御力:1055
知力:430  魔力:1430
抵抗:85  抵抗力:1085
敏捷:70
器用:83
幸運:7777

【ユニーク】
創造神エマーテルの加護、運命神フォルトゥナの加護、アイテムボックス、鑑定、自由奔放

【スキル】
従魔術Lv10、愛嬌Lv10、癒しLv10、水魔法Lv1、

【属性】
水Lv5、火Lv5、風Lv5、氷Lv5、地Lv5、雷Lv5、光Lv5、支援Lv10

【装備】
世界樹の衣、世界樹の杖

【従魔】
リル(フェンリル族)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「レベルが上がらなくてもステータスは伸びるんだね」

魔物などの命を奪う事で生命力が流れ込みレベルが上がる。
レベルが上がるよりも成長率は悪いが、鍛えれば各ステータスはそれぞれ成長する。

努力が目に見えるのはモチベーションに繋がる。
装備が制服からユグドラシルお手製の服と杖になったことで、攻撃力や防御力などの数値が大幅に上昇している。


「成長の確認程度の目安にしておけ」

フェンリルもユグドラシル同様にあくまで目安の数値であるという。
戦いにおいて、数値は時に意味をなさないことを経験から知っているからだ。


「腹が減ったな。お主らの確認は後にして食わぬか?」

登場した時は威厳溢れ、神々しくさえあったフェンリル。
数は少ないが、強大な力を有するフェンリル。
その王たるリル。

狩ってきた巨大な鳥を前に、涎を垂らしながら尻尾を振り『こいつは美味いのだぞぉ』と言っている。
どうやら可愛げのある奴のようだ。

「先にお食事にしましょうか」

ユグドラシルはそう言うと右の掌を地にかざし、大きな木のテーブルと椅子を用意した。

更に地魔法を使い、大きな石の台を作り出した。
石の台の下に木々を並べ、リルに火を灯すように言う。

家の中にあるのと同じような、即席の石製の焼き台だ。

「さぁ、温めているうちに捌いてしまいましょうか」

ユグドラシルは食べなくても大丈夫。
リルは生のままでも食べられる。
しかし、蓮達はそうはいかない。

解体と調理をしなければならない。

「状態異常にはならぬだろう?」

お腹を壊したり病気になることはないが、そういう問題ではない。

「私がやるよ」

桜は釣ってきた魚を捌くくらいのノリで、自身が巨大な鳥を捌くというのだ。

桜は蓮に向日葵の目を覆うように指示し、世界樹の魔杖を構えた。

「リル。鳥を上に投げてくれない?」

桜の言葉に応じ、リルは巨大な鳥を咥えて、宙へ放り投げた。

投げ上げられた鳥が落下する前に、桜は結界魔法を発動。
物理障壁を生み出し、落下を止め、宙に固定した。

さらにその結界内に炎を生み出し、鳥の羽を焼き払った。

繊細な魔力制御がされており、羽は燃えているが、皮膚はほどんど焼けていない。

「あとは細切れにして、血抜きして……」

結界内に風の刃を発生させ、鳥を切り刻む。
水を発生させ、洗濯機の様に結界内で水をかき混ぜて血を洗い流す。

血を大量に含んだ水は湖から流れる川に流し、残った肉をアイテムボックスへ流し込む。

「たいしたものじゃな」

リルが思わず賞賛する。

あっという間の出来事に、蓮は開いた口が塞がらない。
結界魔法と同時に、火魔法、風魔法、水魔法を使って見せたのだ。

腰に手を当ててドヤ顔の桜。
思わずユグドラシルを見る蓮。

ユグドラシルは『の、後程お話ししますね』と言って、食事の準備を進めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生
恋愛
1・2・3巻店頭に無くても書店取り寄せ可能です! (∩´∀`∩) コミカライズ1巻も買って下さると嬉しいです! (∩´∀`∩) イラストレーターさん、漫画家さん、担当さん、ありがとうございます! ご令嬢が婚約破棄される話。 そして破棄されてからの話。 ふんわり設定で見切り発車!書き始めて数行でキャラが勝手に動き出して止まらない。作者と言う名の字書きが書く、どこに向かってるんだ?とキャラに問えば愛の物語と言われ恋愛カテゴリーに居続ける。そんなお話。 飯テロとカワイコちゃん達だらけでたまに恋愛モードが降ってくる。 そんなワチャワチャしたお話し。な筈!

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

家族もチート!?な貴族に転生しました。

夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった… そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。 詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。 ※※※※※※※※※ チート過ぎる転生貴族の改訂版です。 内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております ※※※※※※※※※

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~

クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。 だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。 リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。 だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。 あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。 そして身体の所有権が俺に移る。 リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。 よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。 お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。 お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう! 味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。 絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ! そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!

ぽっちゃりおっさん異世界ひとり旅〜目指せSランク冒険者〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
酒好きなぽっちゃりおっさん。 魔物が跋扈する異世界で転生する。 頭で思い浮かべた事を具現化する魔法《創造魔法》の加護を貰う。 《創造魔法》を駆使して異世界でSランク冒険者を目指す物語。 ※以前完結した作品を修正、加筆しております。 完結した内容を変更して、続編を連載する予定です。

処理中です...