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異世界生活

戦闘訓練①

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突如現れたフェンリル。
どの物語でも最上級の強大な力を誇る狼が、蓮の指南役なることとなった。

木の皿に盛られた世界樹の実を食べ、訓練再開。


蓮はフェンリルと闘気の使い方や戦闘方法を学ぶ。
桜と向日葵はユグドラシルと魔法の練習。

魔法の練習といっても向日葵が居るため、お遊び程度の内容だ。

「くれぐれも怪我の無いようにお願いします」

ユグドラシルは『お二人の加護は私以上ですのでご安心を』と笑顔で答えた。
特に向日葵には、万が一にも起きえないそうだ。

「それでは訓練の前に、皆様にお渡ししておきますね」

ユグドラシルはそう言うと、地面に右の掌を向けた。


すると右手から地面に向かって木が伸びた。

ゆっくりと、しかし遅くはない速さで伸びた木は見事な片手直剣となった。
柄の部分も握りやすく、滑らない様に服に使用されているような布が巻かれている。

刃は片側のみだが、木刀の様に反っておらず直剣。
先端は細くなり過ぎていないため、斬るも突きも可能な形状だ。

全長140cmセンチメートル、刃長110cmセンチメートル、幅15cmセンチメートルと言ったところだろうか。
剣道の竹刀よりも少し長いくらいだが、触れなくはない。
木製だが、軽すぎず、丁度良い重さだ。

ユグドラシルは木製の片手直剣を蓮に渡し、再び、右手の掌を地面に向けた。


次に作り出したのは片手直剣よりも短い木の杖。
魔法のステッキの様な短く細い物ではなく、全長100cmセンチメートル、太さ5cmセンチメートルほどのものだ。

先端には女神を彷彿ほうふつとさせる細工があしらわれている。

「間に合わせではありますが、どうぞ」

ユグドラシルはそう言うと、蓮に木製の片手直剣を、桜には木製の杖を渡した。

「ひぃちゃんは……?」

「ヒマワリ様にはこちらを」

ユグドラシルは30cmセンチメートル程度の細い杖を渡した。

「それぞれ闘気や魔力を通しやすいものですので気を付けて使ってください」

ユグドラシルがそういうとフェンリルが『何が間に合わせだ……』と小さく呟いた。

その言葉が聞こえたのか、ユグドラシルは誤魔化すように笑みを浮かべ、そそくさと桜と向日葵を連れて湖の傍に移動した。


「我らはここでは動きにくいな。少し離れるぞ」

「え?見えない所に行くの不安なんですけど……」

フェンリルの移動の言葉に、即座に発動する蓮の過保護。

蓮の言葉にフェンリルは呆れ、そして湖の畔に居るユグドラシルを見ながら言葉を続けた。

ユグドラシルあやつが居れば、まず問題ない」

フェンリル曰く、ユグドラシルまた世界最上級レベルの力を有しているらしい。
この辺りでユグドラシルと対等に渡り合えるのは、フェンリル本人と竜族の上位種くらいだという。
女神に蓮達の事を任されたくらいだから、よほど強いとは思っていたが、まさかそこまでとは想像もしていなかった。

「試しにそのとやらを鑑定してみよ」

この世界に来てから自身のステータスボードを見る時以外に鑑定を使用したことがなかった。

直感スキルのおかげなのか使い方が分かる。
蓮は心の中で鑑定と念じながら目を凝らした。


【世界樹の片手直剣:レア度S】
・物理攻撃力:+2000
・闘気伝導率:+900%
・特殊効果:自動修復、斬撃強化、自然治癒、

「おお!見えた!え……これって……」

見えたことへ感動。
そして性能の高さに危険を感じた。

「ふむ。問題なくすべて見えておるようじゃな」

通常のスキル欄い記載された鑑定はレベルによって見える範囲が異なる。
さらに、相手との実力に大きな差があればさらに内容は見えにくくなる。
中には認識阻害の結界で鑑定を拒まれる場合もこともあるそうだ。

しかし、蓮達は女神に与えられたユニークスキル。
そういったマイナス要素はなく、全てを見ることができる。

「察しの通りで、とてつもない性能の一品じゃ」

蓮はフェンリルの言葉を聞いて、湖の畔で魔法訓練を始めようとしている桜と向日葵の杖を鑑定した。

【世界樹の魔杖まじょう:レア度S】
・物理攻撃力:+500
・魔法攻撃力:+2400
・魔力伝導率:+1000%
・特殊効果:自動修復、魔力強化、自然治癒


【世界樹の杖:レア度S】
・物理攻撃力:+300
・魔法攻撃力:+1000
・魔力伝導率:+500%
・特殊効果:自動修復、魔力強化、自然治癒


「こ、これってとてつもないんじゃ……」

蓮の察しの通りで、一般的な剣士や魔法使いが手にする事のないほどの最高品質の武器だそうだ。

少し気になるのは桜の杖の方が高性能だということだ。
フェンリルに尋ねると『ユグドラシルあやつ自身が、魔法との相性がよいからじゃろうな』と答えが返ってきた。

「さぁゆくぞ」

フェンリルはそういうと、家の南側にある開けた所に移動した。
湖の方向に目を向ける。
桜と向日葵は遠いが見えなくはない。

シュッ!

風を斬り裂く音で戦慄が走る。

ギィィン……。

蓮が本能的に振り返りながら構えた世界樹の片手直剣に何か硬い物が当たった。
まるで金属同士がぶつかり合ったかのような音が、静かに響く。

「ほう。今のを防いだか。ではこれはどうかな」

違う。
防いだんじゃない。
防がせてもらったんだ。

フェンリルが本気だったならば反応できなかった。
今のは、ギリギリ防げるかどうかを試す程度の一撃だった。

蓮は瞬時に力量さを悟った。

蓮の表情の変化を確認すると同時に、フェンリルは蓮に向かって駆け寄り、一瞬で距離を詰めた。

「やば……っ!」

シュッ……。

間合いを保とうとする思考も間に合わないほどの速度で、間合いをつぶされ、むやみに木剣を振るが、当然の様にかわされる。

フェンリルは避けながら長い尾をしならせ蓮を打ち据えようとしたが、蓮はそれをギリギリの所で防いだ。

ギィィン……。

先程聞こえた金属同士がぶつかり合ったかのような鈍い音。
それは、蓮の世界樹の片手直剣をフェンリルの尾が打ち据えた音だったのだ。

「ほう。これも防ぐか。大したものじゃな。さぁ!どんどん行くぞ!死ぬなよ!」

「しゅ、趣旨変わってんじゃんか!死んでたまるか!」

フェンリルは不敵な笑みを浮かべ、そして意気込み声を荒げた。
対する蓮は、命を振り絞る様に、生き残りをかけて叫んだ。
無意識の間に、全身に闘気を張り巡らせていることも築かずに……。
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