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しおりを挟む「失礼します!」
「!」
ノックすると同時に開かれる生徒会室の扉。
聞き覚えのある声と共にやってきたのは……
「あれえ、隊長ちゃん達どうしたの?」
「どうしたもこうしたもありませんよ!」
オレのお気に入りの親衛隊長さん達だった。
なにやらぷりぷりと怒りながら生徒会室へと入ってきて、会計達に向き直る。
さりげなく会長と同じようにオレを庇っているように見えるのは気のせいだろうか。
そう思ったのは気のせいではなく。
「会計様が恵くんを呼び出したって聞いたから慌てて駆けつけてみたら……!」
「会計様!!もう!どうやって嗅ぎつけたんですか?!恵くんのとこは隠してたのに!」
「副会長様も書記様も!」
隊長さん達はそう言って会長を除く生徒会連中にきゃんきゃんと立ち向かっていった。
小さな背でオレを隠そうとしている立ち方がかわいくて堪らない。
(うーわー隊長さん達に守られてるオレ。守られるとか柄じゃねえのにすっげえ嬉しい)
既に隊長さん達のやる事なす事全てがかわいいと思ってしまっているのは否めない。
そして意外にも隊長さん達は会計達を圧していて、
「だあってさ、隊長ちゃん達も会長もすっかりこの子に夢中になっちゃってるんだもん」
「どういう方なのか気になるのは当然でしょう?」
「……でも理由はわかった」
「……っ」
「……理由、ですか?」
書記のセリフにぎくりと肩を震わせる。
隊長さんの一人がごくりと固唾を呑み、次のセリフを待つ。
(くそっ、こいつらにも気付かれたか?いっそ全員ぶん殴って記憶喪失に……)
そんな物騒な事を考えたのだが。
「こいつがめぐむに似てるから構ってるんでしょ!」
「………………………はい?」
会計が言い出したのはそんなセリフだった。
しかも他の二人も……
「確かに彼の言動はめぐむとそっくりですね。会長が気に入った理由が少しわかります」
「めぐむにそっくりでまるでめぐむがいるみたい」
「……えーと」
そんな事を言い合う三人にオレと隊長さん達はぽかんとする。
(え?オレがめぐむだって気付いてない?え?この人達って実はめちゃくちゃバカなのか?)
会長のバカのようなアシストにも気付かず、オレの正体にも気付かず。
それはそれで万々歳なのだが、この生徒会大丈夫なのかと心配になってしまった。
洞察力も観察力も直感的なものも欠落しすぎているんじゃないのかこの生徒会。
だがしかし気付かれていないのならば好都合。
隊長さん達もそれぞれ目を合わせひっそりこっそりと頷きあっている。
会長もさっきの自分の失言に今は黙って成り行きを見守っている。
今このタイミングで口を開こうものなら抹殺していたところだ。
そして盛大な誤解をしている副会長、会計、書記に対し、隊長さん達は。
「そうなんですよ!めぐむくんにそっくりで親近感湧いちゃって!」
「でもめぐむくん本人はもう転校しちゃいましたしね!」
「そうそう、彼はめぐむくんに似てるけどめぐむくんとは全く別の人ですから!一般の生徒に余計なちょっかいかけないで下さいね!」
「さあ、ほら行こうか恵くん、友達が待ってるよ!」
「それでは皆さん、職務に戻ってくださいね!」
「失礼しましたー!」
あははははーと笑いながらごまかし、オレの手を引き生徒会室から逃がしてくれる隊長さん達。
そして生徒会室から遠く離れたところに至り……
「恵くん、ごめんなさい!」
「僕達がちゃんとあの方達を見張っていなかったから……!」
「今後は二度とあの人達にちょっかい出させないようにするからね!」
「隊長さん達……」
オレの正体を知った上で、あの時と同じように(かつらがぽーんと吹き飛ぶ参照)あの生徒会連中から守ろうとしてくれる隊長さん達に感激してしまった。
「あーマジかわいいほんとかわいい隊長さん達最高ありがとうございます」
「「「!!!!!」」」
つい、隊長さん達をまとめてぎゅっと抱き締めてしまった。
(はああああ隊長さん達だけいればいいのになあ、生徒会連中ほんと邪魔だなあうぜえなあ)
「あ、ああああの、恵くん?!」
「っ、えっと、その……?!」
「ま、待って、あの、この体勢は……っ」
「んんーもう少しだけこうしてて下さい。お願いします」
「「「……っ」」」
頬を真っ赤に染め固まる隊長さん達には気付かず、オレは暫くの間その温もりに癒しを求め続けた。
その後オレを追いかけてきた会長がなんやかんやごちゃごちゃ言い出しそれを鉄拳制裁で収め、会計達が『めぐむに似てる』オレに妙なちょっかいを出して隊長さん達に追い払われたり。
色々と周囲が騒がしくなるのだが、それはまた別の話。
終わり
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