かつらぽーん

うりぼう

文字の大きさ
上 下
7 / 10

かつらの裏側

しおりを挟む


※恵の幼馴染視点


彼がこの学園に現れて早二週間。
光の速さで学園の人気者を虜にしたかつらの男。
生徒会やその他美形連中がこぞって彼の気を引こうとあれやこれや手をこまねいている。
彼は一体何者なのか。
名前はめぐむといい、どうやら一年生らしい。
情報はただそれだけ。
どこぞの国の要人か、組の一人息子かはたまた夜の街で名を馳せたやんちゃ坊主か、それとも絶世の美男子でそれを隠しているのか。
色々な憶測が校内を飛び交う中。

「恵」
「!」

人気のないトイレの中。
例のかつらの男に、俺は声を掛けた。
何故『めぐむ』ではなく『恵』と声をかけれたのか。
それは…….

「おー誰かと思ったらまことじゃん」

俺が恵の幼馴染だからだ。
マンションの隣の部屋で、生まれた時からずっと一緒。
小さい頃から整った顔をごくごく普通の髪型で隠していたが、高校に入りそれに気付く人物が増えてきたらしい。
だが新しくつるみだしたクラスの連中が良い奴らばかりなのだろう。
それをネタにからかわれる事はあっても、それによって実害を被っている事はないようだ。

「どうした?何かあったか?」
「何かあったのはそっちだろ。今日は上履きやられたの?」

履いている来客用のスリッパを指して訊ねる。

「そうなんだよ、びっちゃびちゃにされててさあ。困るよなあ」
「大して困ってるようには見えねえけど」
「これでも傷付いてんだぜ?」
「はっ、良く言うよ」

こいつがこんな事で傷付くはずがない。
ムカつき腹を立て呆れこそすれ、傷付くなどありえない。

「今度は生徒会長落としたんだって?」
「落としたんじゃねえよ、あっちが勝手に勘違いして勝手に盛り上がってるだけ」
「副会長も会計も書記も落としたって聞いたけど?」
「だから落としてねえって」
「モテモテだねえ、めぐむちゃん」
「お前がそっちで呼ぶなよ、鳥肌立つ」
「そりゃ失礼」
「あー、でもサッカー部エースと一匹狼は最近離れてきたな。あいつらは良い子だ」
「良い子って」

こいつから離れたサッカー部エースと一匹狼といえば俺と同じクラスの二人だ。

「そういやそいつらは最近よく一緒にいるとこ見かけるなあ」
「同じクラスだっけ?」
「おまけに俺の前の席」
「わお、近いじゃん。フラグ立った?」
「俺じゃなくて、あの二人にな」
「?どういう意味?」
「あの二人がお互い意識しまくってんの」
「うはっ、マジか」
「俺の目の前でほもりやがって、滅しろ」
「まあまあ、温かい目で見守ってやろうぜ。自分に被害ないなら良いじゃん」
「それがあるんだよ!」

授業中も休み時間も昼休みの間も。
お互いが気になっているのは丸わかりなのに距離をはかりあぐねているというか、付き合いたてのカップルのように微妙な距離を保っているというか。
ほんの少しでも目が合い触れ合おうものならすぐさま頬を染め目を逸らしている。
あんなドピンクな雰囲気を醸し出しているというのに、何故かその照れ隠しの矛先が俺に向けられているのである。

「どういう事?」
「だから、目逸らすだろ?いたたまれないだろ?そしたら後ろにいる俺に声掛けてくんだよ」
「……うわー」
「サッカー部……田代っつーんだけど、田代はさりげなくないさりげなさで俺に話しかけるし、一匹狼の羽賀はどうにかしろって目でこっち見るし」

おかげでクラスの中では謎の転校生めぐむからオレにターゲットを変えたのだと噂が立っている。

「何それ、親衛隊連中は大丈夫なの?」
「あいつらの親衛隊はちゃんとあいつらの事わかってるからな。むしろ二人のもだもだに巻きこんですいませんって謝られた」
「すっげえ良い子達だな」
「うん」
「それに比べて会長達の親衛隊は……」
「地味に嫌がらせ続いてるみたいだな」
「そうなんだよ、まあどれもこれも可愛いもんなんだけどな。続くとほんとうんざりしてくる」
「ああ、そうだ」

ここで俺がわざわざ人気のないトイレで恵を呼び止めた理由を思い出した。

「はい、これ」
「……は?何これ?」
「かつらだよかつら」
「かつらって……これしたらツルッパゲじゃねえか」
「だってそろそろ直接呼出し来そうじゃん?」
「それとこれと何の関係があるんだよ」
「だーかーら、そのかつらの下にこれ被ってたら親衛隊の連中もかなり驚くんじゃね?さすがにツルッパゲが隠れてるとは思わねえだろうし!」

にしし、と笑いながらかつらを恵の手に握らせる。

「なるほど!それ良いかもしれないな!さっすがまこと!」
「だろー?うまく行ったら報告しろよな!」
「おう!ていうか今日の夜お邪魔するから」
「ん?おばさん達いないの?」
「二人でデートだってよ。晩飯食いに行く」
「あーだからか、うちの母さん今朝から張り切って仕込みしてたから」
「てことは角煮かな?やった!おばさんの角煮好きなんだよなあ」
「ははっ、それ言ってやれよ。めちゃくちゃ喜ぶから」
「知ってる」

うちの母さんの様子を思い出して二人でくすくすと笑う。

「んじゃそろそろ授業だから行くな」
「おう!俺もこれ仕込んだら行く!」
「また後でな」

ひらひらと手を振る俺に恵もひらひらと手を振り返す。
教室へと戻ると、田代と羽賀が相変わらずもだもだと微妙な距離を取っていて。

「まこと、遅かったな」
「どこ行ってたんだよお前」
「……はあ」

あからさまにお互いを意識しながら声を掛けられ。

「何、まことがいなくて寂しかったの?」
「お前こそ、ずっとそわそわしてたじゃねえか」

俺がいなくてそわそわしてたのは二人きりで他にフォローする相手がいなかったからだろう。
田代の『寂しかったの?』のセリフにも『俺が一緒にいたのに』という思いが見え隠れしていて本当に……

(あーうっとおしい、さっさと告ればいいのに)

俺は大きな大きな溜め息を吐きながら自分の席にどっかりと座り。
あれやこれやと俺に声をかけお互いの本心を探ろうとする二人に心の中で悪態を吐いた。


その後、無事にヅラオンヅラ作戦が成功したと聞き、思いの他生徒会の親衛隊長達も可愛かったという話で盛り上がった。

「んんー!やっぱりおばさんの角煮めっちゃうまい!」
「やだー本当?んもう恵ちゃんったら良い子!うちの子は何も言ってくれないのにー!」
「言わなくたってわかるだろ。ご飯おかわりするの何杯目だと思ってんの?」
「それでも言って欲しいの!」
「……おいしいよ」
「やだどうしましょう恵ちゃん、うちの子が可愛いわ……!」
「おばさん、それ親ばかだよ」
「あはは!そうねー、親ばかねー!」

明るい声を響かせる母親に、俺達の箸は止まる事なく動き続けた。



終わり 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

推しを擁護したくて何が悪い!

人生1919回血迷った人
BL
所謂王道学園と呼ばれる東雲学園で風紀委員副委員長として活動している彩凪知晴には学園内に推しがいる。 その推しである鈴谷凛は我儘でぶりっ子な性格の悪いお坊ちゃんだという噂が流れており、実際の性格はともかく学園中の嫌われ者だ。 理不尽な悪意を受ける凛を知晴は陰ながら支えたいと思っており、バレないように後をつけたり知らない所で凛への悪意を排除していたりしてした。 そんな中、学園の人気者たちに何故か好かれる転校生が転入してきて学園は荒れに荒れる。ある日、転校生に嫉妬した生徒会長親衛隊員である生徒が転校生を呼び出して──────────。 「凛に危害を加えるやつは許さない。」 ※王道学園モノですがBLかと言われるとL要素が少なすぎます。BLよりも王道学園の設定が好きなだけの腐った奴による小説です。 ※簡潔にこの話を書くと嫌われからの総愛され系親衛隊隊長のことが推しとして大好きなクールビューティで寡黙な主人公が制裁現場を上手く推しを擁護して解決する話です。

だから振り向いて

黒猫鈴
BL
生徒会長×生徒会副会長 王道学園の王道転校生に惚れる生徒会長にもやもやしながら怪我の手当をする副会長主人公の話 これも移動してきた作品です。 さくっと読める話です。

眠るライオン起こすことなかれ

鶴機 亀輔
BL
アンチ王道たちが痛い目(?)に合います。 ケンカ両成敗! 平凡風紀副委員長×天然生徒会補佐 前提の天然総受け

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

王道学園なのに会長だけなんか違くない?

ばなな
BL
※更新遅め この学園。柵野下学園の生徒会はよくある王道的なも のだった。 …だが会長は違ったーー この作品は王道の俺様会長では無い面倒くさがりな主人公とその周りの話です。 ちなみに会長総受け…になる予定?です。

ダメダメ第三王子として緩やか過ごす人生プランが自称魔族の男にぶち壊されそうな件

椿谷あずる
BL
「その権利、放棄します」 自ら王位継承権を放棄した第三王子カノンは、権利争いからいち早く離脱し、自堕落な日々を送っていた。暇を持て余した彼は、何でも治療する温泉があるという村に出掛けるが、そこは妙に胡散臭い場所だった。村人に翻弄されるピンチの中、助けてくれたのは自称魔族を名乗る超マイペースなゆるゆる男だった。イマイチ頼りのない自称魔族の彼と共にカノンは無事に家に帰れるのだろうか。

矢印の方向

うりぼう
BL
※高校生同士 ※両片想い ※文化祭の出し物関係の話 ※ちょっとだけすれ違い

ある意味王道ですが何か?

ひまり
BL
どこかにある王道学園にやってきたこれまた王道的な転校生に気に入られてしまった、庶民クラスの少年。 さまざまな敵意を向けられるのだが、彼は動じなかった。 だって庶民は逞しいので。

処理中です...