かつらぽーん

うりぼう

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(あー、マジ学校いくのだるいなあ、行って隊長さん達に会ってまた無視されたり睨まれたり避けられたりすんのもう嫌だなあ、あーほんとやだ。あんな罰ゲーム受けなきゃよかった)

盛大な溜め息を吐きながら教室まで歩いていると。

「……ちょっと来て」
「!」

目の前に立ちはだかる三つの影。
それは……

「……隊長さん?」
「こっち」
「え?」

言うだけ言って、先に進む隊長さん達に付いて行く。
あの事があってから徹底的に俺を避けていた隊長さん達がこうして声を掛けてくるなんて。

(……なんだろ?)

こうして呼び出されるのは二回目だ。
最初は生徒会の奴らに近付かれて、それの制裁を受ける時だった。
結局制裁は受けずに済んで、隊長さん達と知り合うきっかけになったから良かったんだけど。

(……今回は制裁じゃ済まないかもなあ)

もうごまかしは効かないだろうし。
俺が健康優良児だってわかってるだろうし。
転校生でもなんでもない、ただの一般生徒だと知っただろうし。

(もしかしたらこれが隊長さん達と話す最後なのかもなあ)

そう思うと知らず知らずの内に再び溜め息が漏れてしまう。
そして来たのは、いつぞやも連れて来られた校舎裏だ。
あの時と同じように壁際に追いやられ、辺りを囲まれる。

(……あーあ、せっかく仲良くなれたと思ったのにな……)

最後通牒を突き付けられると思い、顔が見られなくて地面を見つめながら隊長さん達の第一声を待つ。

「……話は聞いた」
「……は?」

それは俺の想像とは違う一言だった。
思わず顔を上げて隊長さん達を見る。

「……隊長さん?」
「「「……」」」

久しぶりに見た隊長さん達は、何故かバツの悪そうな表情を浮かべていて。

「……話って……?」

俺の事ぼこぼこにするんじゃないのか?
あの時よりも更に冷たい言葉を投げかけるんじゃないのか?
疑問に思いつつも話を促す。

「昨日、君の友達って人が何人か来て」
「あれから君が凄く落ち込んでるって」
「ずっと机に突っ伏して何にもやる気がないって言われて」
「……!」

恐らく、俺のいつにない落ち込みっぷりに友人達が気をきかせたのだろう。

(……あいつら、気使いやがって……!)

元はといえば奴らが考えた罰ゲームなのだからフォローを入れるのは当然なんだけれど。
まさかそんな事をしてくれるとは思っていなかったので一瞬感動する。

「なんであんな格好してたのかも聞いた」
「罰ゲームなんて馬鹿じゃないかって思ったけど、」
「騙されたのはそりゃムカつくし、病気だって嘘吐いたのも許せない、けど」
「……」
「俺達のせいで学校辞めちゃったら後味悪いし、」
「最初からちゃんと話してくれれば良かったのにって思ったのもあるし」
「でも、良く考えたら病気じゃなくて良かったとか思って……だからつまり、何が言いたいのかっていうと」

三人はお互いに目と目を合わせ……

「……許してあげる」
「だから学校辞めないで」
「それに、そんなにへこんだ顔しないでよ」

次々とそう言われ……

「……はっ」
「「「!」」」

足から力が抜け、ずるずるとその場に座り込んでしまった。

「め、めぐむくん?!」
「どうしたの?!」
「大丈夫?!」

頭を抱えうずくまるオレを、本気で心配そうに覗き込んでくる三人に色々なものが込み上げてくる。

「……は、ははっ」
「……めぐむくん?」

込み上げてきたものがそのまま笑い声となって口から飛び出す。

「……やばい、嬉しい」
「「「!!!」」」

へにゃへにゃと、我ながら締まりのない笑みを浮かべてしまった。







あれから。

「恵、怪我の具合どうだ?」
「あ?また来たのかよ会長さん」
「会長さんなんて他人行儀だな、名前で呼べよ」
「……名前何だっけ?」
「……おい、本気で言ってるのか?それ」

相変わらず飽きずに絡んでくる会長をさらりといなす恵。

「ああー!会長様!また恵くんにちょっかい出してるんですか?!」
「全く、迷惑してるのがわかんないのかなあ?」
「ほらほらあっち行って下さい!」
「お、おい?!お前達親衛隊だろ?!」
「それとこれとは別です!」
「恵くん、怪我治った?オレ達手加減しなかったから……ごめんね」
「あ、これ食べて!美味しいんだよ、ここの焼きそばパン!」

以前同様に俺に接してくれる隊長さん達が可愛い。

「ありがとうございます」

にこーっと笑いながら隊長さん達の頭を撫でる。

「……っ、か、かわ……!!」
「っ、うわっ、会長様鼻血?!」
「ちょっ、信じらんない!」
「変態!恵くんに近付かないで下さい!」
「誰が変態だ誰が!」
「「「会長様ですー」」」
「ぶは……っ」

三人のユニゾンで変態と呼ばれた会長が面白くて、思わず噴き出してしまった俺に教室中が固まった気がするが……

(たーのしいなあ)

いつになくご機嫌な俺はそんな事には気付かず。

「あー……これ信者が増えるパターンじゃね?」
「ったく、眼鏡の防御も役に立たなくなってきたな」
「全く、うちの恵くんのフェロモンどうにかならないかねー」
「まあ元気になったから良しとしますかー」
「だなー」

騒ぐ俺達を見て友人達がそんな事を話していた事も、当然ながら気付いていなかった。





終わり
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