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少し恋愛パートです
しおりを挟む「……正直少し、アザリーの判断を疑問視していたことを謝罪していいかい?」
ガゼルとの婚約から三日後。昼食の用意が出来たと知らせに来てくれたのはお兄さまだった。ここは使用人ではなく、あえてご自分でその役目を引き受けられたのだろう。
二日前から執務にかかりきりだったお兄さまのそんな言葉に私は……わからないふりをするとアレなので、にこにこと微笑みを返した。
「いや、もちろん。アザリーがあの男を好きになって、あの男を手に入れる為に悪だくみをしたっていう父さんの推理を納得はしたし、その為にアザリーが行った事をドマの人間として誇らしく思うんだけど……正直、あの男にそんな魅力と価値が?ってね」
「……」
私は微笑むばかりで何も言わなかった。にこにこと、女性が微笑んでいると男性というのは勝手に「こういう風に感じて考えているんだろう」と、女性を軽視しない人ほど、慮ろうと想像する。
「例えばあの男、ガゼルが実はどこぞの王族だった、とか、隠された大魔法使いの生まれ変わりだとか、実は父親に隠れて大貴族に匹敵する財産を蓄えていた、とか、そういう『特別』があるんじゃないかとも思ったけど、そういうことは一切なかった」
「……」
それはそうだろう。
彼はただの、平民の男だ。
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何も出来ず、何もかも奪われ、ただ失っていくだけのひとだった。
物語の聖女のお相手と言えば恐ろしい力を持った皇帝とか、悪女が見初めるのは不遇の王子とか、そういうものなのだろうけれど。
「地位も名誉も奇跡も、私が持っておりますもの」
「そうだね。そして、アザリーには必要ない才能を、あいつが持ってる。さすがだよ」
……え?そうなの?
私はただ、どうせ一年で死ぬんだし、私が助けたいのはガゼルだけだし、他のことはどうでもいいのだけれど、お兄さまはそういえばさっき、『疑問視していたことを』と過去形で話してたな……。
「商会の人員の移動、書面でのやり取りではあるけれど、実際関わる人間はかなりの混乱があったはずだ。悪のドマ家に関わることを不安がるもの、それなら正義のロークリフォロ家をと、普通なら居残ることを選ぶ者だって多いはずだ」
「……」
そう言えばそうだね!!!!!
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商会の長が貴族令嬢に入れ込んで破滅し、善意からロークリフォロ家が商会の従業員たちは守ろうと、抱え込んでくれたのだと、そういう「善行」と思うだろう。
だがお兄さまが調べたところによると、ハヴェル商会ではそれほど混乱なく、疑問もなく、従業員たちは移籍に同意したという。
「あの晩餐(ランチ)のあと、アザリーはガゼルを屋敷に軟禁せずさっさと自由にしただろう?つまりあの男が従業員たちを説得して収められる才覚があると見抜いていたわけだ」
へぇー……そうなのか。
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そしてお兄さまの絶賛。
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…………違います!!!!!
*
そんなお兄さまとのやり取りがあった翌日。
「……はい?」
「………………不要なら捨ててくれていい」
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