10 / 18
第2章 剣術競技祭に迫る陰謀
第10話 敵は弱点狙い
しおりを挟む
「シルフィ、相手を頼む」
「私なんかでいいの?」
「ああ」
そんな会話を交わした後、ハルクとシルフィが向き合って剣を構える。
勝敗は、寸止めではなく先に相手の身体を捉えた者が勝者となる。
「始め!」
審判役のレイシアの掛け声でシルフィが一気に間合いを詰める。
そして、突きの攻撃を放った。
「なっ……」
ハルクが弾いたせいで、シルフィの剣先は地面に向かっていた。
そして、ハルクの剣がシルフィの剣を弾いた反動を利用して切り返して足元から迫ってくる。
(それだけはやめて……)
シルフィがそう思った時には既にハルクの剣が彼女のスカートの中に直撃していた。
「痛いっ!」
シルフィが悲鳴のような声を上げる。
そして、表情を歪めて股を押さえて座り込んだ。
「ハルクくんの勝ちなんだけど……シルフィ、大丈夫?」
地面に倒れて股間を押さえながら痛みに悶えるシルフィにレイシアが声をかける。
シルフィが年頃の女の子にあるまじき体勢をしている事は言うまでもない。
「うぅ……」
「ごめんな。変なとこ当てちゃって」
「ひどい……」
目に涙を浮かべたシルフィがそう漏らす。
「うぅ……」
「シルフィ! 大丈夫か!?」
地面に倒れているシルフィに気が付いた生徒達が集まってくる。
「だ、大丈夫よ……」
痛そうにしながらも、シルフィは立ち上がって制服をはたいていた。
* * *
「王妃様、1週間後に行われる剣術競技祭ですが、このような物が届きました」
王城で友人と共に優雅にお茶をしていた王妃が封筒を手渡された。
「少し失礼するわね」
友人にそう言って、王妃は自室に戻った。
それから、封を開けて、その中に入っていた1枚の紙を読み始めた。
『ご息女のレイシアの命が惜しければ、次の剣術競技祭で二年二組を優勝させること。ハルク・グランシード』
そんな文面を見た王妃、アイリス・シルクスは慌てて友人の下に戻った。
「アリア! これ見て!」
さっきまでの空気はどこに行ったのか。
王妃のアイリスが学生時代からの友人のアリア・グランシードにその紙を見せた。
「これ……ハルクの字とは違うわ」
「やっぱり? ど、どうしよう……レイシアが……」
大切な娘の殺害予告を真に受けたアイリスが目を潤ませてアリアを見上げる。
「少しは冷静になりなさい。いざとなれば、私とアイリスでどうにかなるでしょ?」
「そ、そうね……。調査命令を出してくるわ」
「私はレイシアちゃんの護衛に行ってくるわね」
アリアはそう言って部屋を後にした。
向かう先は、もちろんハストル学院だ。
……。
…………。
「計画は順調か?」
「もちろんですわ。ハルク・グランシードの名前で脅迫状も送ってありますわ」
雨で人通りの少ない商店街でそんな会話を交わす男女の姿があった。
その姿は、雨の日でもデートをする熱々の……いや、ただの馬鹿なカップルに見えていた。
「1週間後が楽しみだよ。アイツが捕まるところを見るのがな」
「二組が優勝したら、計画は失敗ですわよ?」
シャルアの欲望に、エリアナがそう告げる。
「アイツが捕まるだけでも十分だよ」
「そうですか。貴方のクラスが優勝するのを楽しみにしておりますわ。全ては聖なる国のために」
エリアナはそう言ってその場を後にした。
* * *
「シルフィ、大丈夫?」
「うん。もう平気よ」
シルフィが剣を構えながらそう口にする。
「シルフィ、一組が股を狙う練習してたから、防ぐ練習した方がいいと思うよ。あれやられると痛いからね」
股を打たれた時の痛みは半端では無い。特に男は。
その証拠に、ハルクの言葉を聞いた二組の男子生徒達が青くなった。
「レイシア、ハルクくんが言ってることって本当なの?」
「うん」
レイシアの答えはシルフィの期待を裏切っていた。
「本番で無様を晒す訳にはいかないわよね……。レイシア、相手お願い」
「私、寸止め出来ないよ……」
「それでもいいわよ!」
「じゃあ、いくよ?」
――略。
「うぅ……ハルクくんの時よりも痛いって……どういうことよ……」
一撃だけしか受けていないのにも関わらず、シルフィは地面に倒れていた。
「狙ったか狙ってないかの差じゃないのか?」
「……」
「シルフィ、早く防げるようになろうよ?」
「そうね……」
シルフィが起き上がって剣を構える。
そして……
「ひゃん! うぅ……」
……シルフィの剣はレイシアの剣を掠めただけで、レイシアの剣はやっぱりシルフィに直撃していた。
――略。
「きゃっ! あぅ……」
――略。
略。略。略。略。――略。
「ひゃあっ!?」
9回目もレイシアの剣に直撃を許していた。
だが、地面に倒れる事はなかった。
そして……
キイイィィンッ!
10回目にして、ようやくレイシアの剣が弾かれた。
「じゃあ、反撃まで一通りやろっか」
そんなんで、シルフィの足元からの攻撃を防ぐ練習は続いていた。
「私なんかでいいの?」
「ああ」
そんな会話を交わした後、ハルクとシルフィが向き合って剣を構える。
勝敗は、寸止めではなく先に相手の身体を捉えた者が勝者となる。
「始め!」
審判役のレイシアの掛け声でシルフィが一気に間合いを詰める。
そして、突きの攻撃を放った。
「なっ……」
ハルクが弾いたせいで、シルフィの剣先は地面に向かっていた。
そして、ハルクの剣がシルフィの剣を弾いた反動を利用して切り返して足元から迫ってくる。
(それだけはやめて……)
シルフィがそう思った時には既にハルクの剣が彼女のスカートの中に直撃していた。
「痛いっ!」
シルフィが悲鳴のような声を上げる。
そして、表情を歪めて股を押さえて座り込んだ。
「ハルクくんの勝ちなんだけど……シルフィ、大丈夫?」
地面に倒れて股間を押さえながら痛みに悶えるシルフィにレイシアが声をかける。
シルフィが年頃の女の子にあるまじき体勢をしている事は言うまでもない。
「うぅ……」
「ごめんな。変なとこ当てちゃって」
「ひどい……」
目に涙を浮かべたシルフィがそう漏らす。
「うぅ……」
「シルフィ! 大丈夫か!?」
地面に倒れているシルフィに気が付いた生徒達が集まってくる。
「だ、大丈夫よ……」
痛そうにしながらも、シルフィは立ち上がって制服をはたいていた。
* * *
「王妃様、1週間後に行われる剣術競技祭ですが、このような物が届きました」
王城で友人と共に優雅にお茶をしていた王妃が封筒を手渡された。
「少し失礼するわね」
友人にそう言って、王妃は自室に戻った。
それから、封を開けて、その中に入っていた1枚の紙を読み始めた。
『ご息女のレイシアの命が惜しければ、次の剣術競技祭で二年二組を優勝させること。ハルク・グランシード』
そんな文面を見た王妃、アイリス・シルクスは慌てて友人の下に戻った。
「アリア! これ見て!」
さっきまでの空気はどこに行ったのか。
王妃のアイリスが学生時代からの友人のアリア・グランシードにその紙を見せた。
「これ……ハルクの字とは違うわ」
「やっぱり? ど、どうしよう……レイシアが……」
大切な娘の殺害予告を真に受けたアイリスが目を潤ませてアリアを見上げる。
「少しは冷静になりなさい。いざとなれば、私とアイリスでどうにかなるでしょ?」
「そ、そうね……。調査命令を出してくるわ」
「私はレイシアちゃんの護衛に行ってくるわね」
アリアはそう言って部屋を後にした。
向かう先は、もちろんハストル学院だ。
……。
…………。
「計画は順調か?」
「もちろんですわ。ハルク・グランシードの名前で脅迫状も送ってありますわ」
雨で人通りの少ない商店街でそんな会話を交わす男女の姿があった。
その姿は、雨の日でもデートをする熱々の……いや、ただの馬鹿なカップルに見えていた。
「1週間後が楽しみだよ。アイツが捕まるところを見るのがな」
「二組が優勝したら、計画は失敗ですわよ?」
シャルアの欲望に、エリアナがそう告げる。
「アイツが捕まるだけでも十分だよ」
「そうですか。貴方のクラスが優勝するのを楽しみにしておりますわ。全ては聖なる国のために」
エリアナはそう言ってその場を後にした。
* * *
「シルフィ、大丈夫?」
「うん。もう平気よ」
シルフィが剣を構えながらそう口にする。
「シルフィ、一組が股を狙う練習してたから、防ぐ練習した方がいいと思うよ。あれやられると痛いからね」
股を打たれた時の痛みは半端では無い。特に男は。
その証拠に、ハルクの言葉を聞いた二組の男子生徒達が青くなった。
「レイシア、ハルクくんが言ってることって本当なの?」
「うん」
レイシアの答えはシルフィの期待を裏切っていた。
「本番で無様を晒す訳にはいかないわよね……。レイシア、相手お願い」
「私、寸止め出来ないよ……」
「それでもいいわよ!」
「じゃあ、いくよ?」
――略。
「うぅ……ハルクくんの時よりも痛いって……どういうことよ……」
一撃だけしか受けていないのにも関わらず、シルフィは地面に倒れていた。
「狙ったか狙ってないかの差じゃないのか?」
「……」
「シルフィ、早く防げるようになろうよ?」
「そうね……」
シルフィが起き上がって剣を構える。
そして……
「ひゃん! うぅ……」
……シルフィの剣はレイシアの剣を掠めただけで、レイシアの剣はやっぱりシルフィに直撃していた。
――略。
「きゃっ! あぅ……」
――略。
略。略。略。略。――略。
「ひゃあっ!?」
9回目もレイシアの剣に直撃を許していた。
だが、地面に倒れる事はなかった。
そして……
キイイィィンッ!
10回目にして、ようやくレイシアの剣が弾かれた。
「じゃあ、反撃まで一通りやろっか」
そんなんで、シルフィの足元からの攻撃を防ぐ練習は続いていた。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
俺たちの結婚を認めてくれ!~魔法使いに嵌められて幼馴染に婚約破棄を言い渡された勇者が婚約したのはラスボスでした~
鏡読み
ファンタジー
魔法使いの策略でパーティから外れ一人ラストダンジョンに挑む勇者、勇者太郎。
仲間を失った彼はラスボスを一人倒すことでリア充になると野心を抱いていた。
しかしラストダンジョンの最深部で待ち受けていたラスボスは美少女!?
これはもう結婚するしかない!
これは勇者と見た目美少女ラスボスのラブコメ婚姻譚。
「俺たちの結婚を認めてくれ!」
※ 他の小説サイト様にも投稿している作品になります
表紙の絵の漫画はなかしなこさんに描いていただきました。
ありがとうございます!
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
私ではありませんから
三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」
はじめて書いた婚約破棄もの。
カクヨムでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる