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第2章 剣術競技祭に迫る陰謀
第8話 断罪する者
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あれから2週間、剣術競技祭まで1週間を切っていた。
1週間前の試験で、剣術の成績にも変化があった。
1位はレイシアに、2位はシルフィになっていた。
ハルクはというと、最下位だった。魔術で気絶させられたせいで、試験に参加することが出来なかったから。
そして今、赤く染まり始めた空の下、2組の生徒達が練習に励んでいた。
隣で練習をする一組の生徒達は、とある2人の練習とは言えない練習に釘付けになっている。
「うぐっ……」
ハルクの剣に脇腹を直撃されたレイシアが呻き声を上げる。 そして、脇腹を抑えながら地面に座り込んだ。
刃を落としているとはいえ、2時間の練習の間に金属の剣に何回も斬られた彼女は服に血を滲ませていた。
「そろそろ限界?」
「ま……まだよ……」
練習初日は1分と耐えられなかったレイシアだが、2週間の練習で2時間も耐えられるようになった。
それに、ハルクの剣に打たれる事も少なくなった。
「二組の1位は最下位に負けるほど弱いみたいだなぁ」
不意に、一組の方からそんな声が聞こえてくる。
「ぁ……」
一組の声など気にしていなかったが、弱っているレイシアはあっという間に剣に打たれて座り込んだ。
今度こそ限界だった。
「《癒しの光よ》」
ハルクが簡単な治癒魔術の呪文を唱える。
レイシアの傷はどれも大したこと無いから、簡単な治癒魔術で足りる。
そんなんで、レイシアの傷が癒えた時だった。
「貴様! 王女様を傷つけた罪、死をもって償え!」
いつの間にかハルクの背後に来ていたシャルアがハルクに斬りかかった。
シャルアの剣は実剣を思わせる光沢を纏っていた。
「やめてっ!」
治癒魔術を使ったばかりで防御が出来ないハルクの前にレイシアが声を上げながら飛び出した。
剣が大して上手くないシャルアが大振りを止めることは出来ずに、剣がレイシアを襲う。
「……っ」
腕を襲った痛みを必死に堪えて、何とか剣を受け流した。
だが、実剣に打たれた腕からは血が流れ始めていた。それもかなりの量が。
直後――
ガッ!
シャルアの方から鈍い音が響いた。
そして、そのままシャルアが地面に崩れ落ちた。
ハルクがシャルアを殴って気絶させたのだ。
「シルフィ! 止血を手伝え!」
「うん!」
「ツバルト! 法医の先生を!」
すぐにハルクがレイシアの処置に取りかかる。
彼女の傷はかなり酷い。それも、普通の温室育ちのお嬢様なら気が遠のく位の痛みを伴う程に。
それでもレイシアが自分で止血する余裕があるのは、この2週間でハルクに散々痛めつけられたお陰で、痛みを耐えられるようになったからだろう。
「《癒しの光よ・我のマナに応じて・大いなる癒しを!》」
シルフィが治癒魔術【ヒールライト・プロフリカバー】の呪文を唱えると、現れた魔法陣が淡い光を放ちはじめて、瞬く間にレイシアの傷を癒やした。
魔導公家の長女のシルフィはこれくらいの魔術、余裕で使える。
「ハルクくん、ありがとう」
すっかり回復したレイシアがそんな事を口にした。
「それはこっちが言いたい。ありがとう」
「ハルクくんが素手の戦い方を教えてくれてなかったら……」
「あ、シャルア程度の攻撃、見なくても避けられるから」
「えっ!?」
「でも、ありがとう」
直後、レイシアの視界にハルクの後ろから迫り来る銀色の物が目に入った。
そして、その陰がハルクの目に入った。
「きゃあっ!? いやああああぁぁっ!」
突然ハルクに抱き着かれ、次の瞬間には視界が物凄い速さで流れたレイシアは思わず悲鳴を上げた。
そして、金属の音が悲鳴に掻き消される事なく、中庭に響き渡った。
「断罪を免れようとした罪、そして王女様を手にかけようとしたその罪、死をもって償え!」
ハルクを囲う一組の生徒の1人が剣を向けて声を大にして言い放った。
1週間前の試験で、剣術の成績にも変化があった。
1位はレイシアに、2位はシルフィになっていた。
ハルクはというと、最下位だった。魔術で気絶させられたせいで、試験に参加することが出来なかったから。
そして今、赤く染まり始めた空の下、2組の生徒達が練習に励んでいた。
隣で練習をする一組の生徒達は、とある2人の練習とは言えない練習に釘付けになっている。
「うぐっ……」
ハルクの剣に脇腹を直撃されたレイシアが呻き声を上げる。 そして、脇腹を抑えながら地面に座り込んだ。
刃を落としているとはいえ、2時間の練習の間に金属の剣に何回も斬られた彼女は服に血を滲ませていた。
「そろそろ限界?」
「ま……まだよ……」
練習初日は1分と耐えられなかったレイシアだが、2週間の練習で2時間も耐えられるようになった。
それに、ハルクの剣に打たれる事も少なくなった。
「二組の1位は最下位に負けるほど弱いみたいだなぁ」
不意に、一組の方からそんな声が聞こえてくる。
「ぁ……」
一組の声など気にしていなかったが、弱っているレイシアはあっという間に剣に打たれて座り込んだ。
今度こそ限界だった。
「《癒しの光よ》」
ハルクが簡単な治癒魔術の呪文を唱える。
レイシアの傷はどれも大したこと無いから、簡単な治癒魔術で足りる。
そんなんで、レイシアの傷が癒えた時だった。
「貴様! 王女様を傷つけた罪、死をもって償え!」
いつの間にかハルクの背後に来ていたシャルアがハルクに斬りかかった。
シャルアの剣は実剣を思わせる光沢を纏っていた。
「やめてっ!」
治癒魔術を使ったばかりで防御が出来ないハルクの前にレイシアが声を上げながら飛び出した。
剣が大して上手くないシャルアが大振りを止めることは出来ずに、剣がレイシアを襲う。
「……っ」
腕を襲った痛みを必死に堪えて、何とか剣を受け流した。
だが、実剣に打たれた腕からは血が流れ始めていた。それもかなりの量が。
直後――
ガッ!
シャルアの方から鈍い音が響いた。
そして、そのままシャルアが地面に崩れ落ちた。
ハルクがシャルアを殴って気絶させたのだ。
「シルフィ! 止血を手伝え!」
「うん!」
「ツバルト! 法医の先生を!」
すぐにハルクがレイシアの処置に取りかかる。
彼女の傷はかなり酷い。それも、普通の温室育ちのお嬢様なら気が遠のく位の痛みを伴う程に。
それでもレイシアが自分で止血する余裕があるのは、この2週間でハルクに散々痛めつけられたお陰で、痛みを耐えられるようになったからだろう。
「《癒しの光よ・我のマナに応じて・大いなる癒しを!》」
シルフィが治癒魔術【ヒールライト・プロフリカバー】の呪文を唱えると、現れた魔法陣が淡い光を放ちはじめて、瞬く間にレイシアの傷を癒やした。
魔導公家の長女のシルフィはこれくらいの魔術、余裕で使える。
「ハルクくん、ありがとう」
すっかり回復したレイシアがそんな事を口にした。
「それはこっちが言いたい。ありがとう」
「ハルクくんが素手の戦い方を教えてくれてなかったら……」
「あ、シャルア程度の攻撃、見なくても避けられるから」
「えっ!?」
「でも、ありがとう」
直後、レイシアの視界にハルクの後ろから迫り来る銀色の物が目に入った。
そして、その陰がハルクの目に入った。
「きゃあっ!? いやああああぁぁっ!」
突然ハルクに抱き着かれ、次の瞬間には視界が物凄い速さで流れたレイシアは思わず悲鳴を上げた。
そして、金属の音が悲鳴に掻き消される事なく、中庭に響き渡った。
「断罪を免れようとした罪、そして王女様を手にかけようとしたその罪、死をもって償え!」
ハルクを囲う一組の生徒の1人が剣を向けて声を大にして言い放った。
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