上 下
72 / 115

バッドボーイズ VS バッドボーイズ

しおりを挟む
ボブに後頭部を殴打された若者は、振り返るなりボブに掴みかかります。

ボブはその若者の髪の毛を掴んで、停車しているバスのボディに頭をガンガン打ちつける。

他の3人の若者たちはそれを止めようと、ボブに躍りかかろうとしています。

マイケルとメンクラ、そして私の3人も走って加勢に駆け付けます。

・・・4対4。戦力は互角です。

あれ?いつの間にか私もバッドボーイズの一員になっています。

このままでは大乱闘勃発は避けられません。

しかし威勢よく走ってきた私たちを見て、相手の4人は少し怯んだ様子を見せました。

これは精神的優位に立っているかも?

よし、得意のはったり技を見せてやる。

私は相手の4人の前に躍り出ると、両手を拡げてクルリと回転しながら跳びあがります。

もちろんこんな大きな予備動作の技、素人相手でもめったに当たるものではありません。

しかし私は彼らの眼前で大きく脚を回して、ゴム草履の底で自分の手のひらをパーンと音をたてて蹴りました。

これもカンフー雑誌"Inside Kung fu"で覚えた「旋風脚」の応用です。

私は空手デモのとき、適当な道具がない場合には、よくこの技を使用していました。

顔の前で大きな音を立てるので、わりとインパクトあるのです。

さて、このときの4人は目の前で行われた意味不明な軽業にキョトンとしています。

そこで私は「おりゃああああっっっ!!!」

と裂ぱくの気合を上げて、大げさなカラテ・ポーズを取ります。

「トミーは空手の達人だぞ!お前ら4人なんかトミーひとりで十分だ」

マイケルが大声で無責任な威嚇をします。・・が、それは効果があったようでした。

4人は脱兎のごとく逃げだしたのです。

「待てコラ~!」追いかけようとするボブを、マイケルとメンクラが抱きとめて制止しました。

うん、彼らはとても良い仲間だ。

・・・・

「トミー悪かったな。せっかく楽しんでもらおうと思ったのに、とんだトラブルに巻き込んじゃって」

私の宿まで送りがてらボブが詫びます。

「いや、楽しいピクニックだったよ。スリランカに来ていちばん楽しかった。ありがとう」

「そう言ってももらえると、俺も肩の荷が下りるよ」

するとマイケルが言います。

「トミーはやっぱり日本人だなあ。空手が使えるんだ」

「マイケルが僕ひとりで4人相手にできるなんていうからさ、もし彼らが掛かってきたらどうしようって焦ったよ」

ははは・・・とマイケルが笑いながら

「そのときはもちろん、僕らも戦ったさ。でもトミーの空手にビビってあいつらが逃げてくれたから、みんな怪我なしですんだしよかったよ」

確かに無事が一番です。

「でも空手ってのはすごいもんだよな」これはボブです。

「ヌワラエリヤにも空手の達人が居てさ、ひとりで5人相手に戦えるんだぜ」

へえ・・・この街にそんな使い手が居るのか?

「軍人なんだけどね、バケモノみたいに強いって噂だ」

え・・・それってもしかして・・・

「ねえ、もしかしてそれ、ベビスって人?」

「あれ?すごいな。やはり日本人にも知られてるんだ、破壊王は」

・・・やはり!

「その破壊王、ベビスはヌワラエリヤに住んでいるのか?」

「いや、彼は軍人だからいつも居るわけじゃない。けどヌワラエリヤに弟が居てね、だからときどき現れる」

「ボブはベビスを見たことある?」

「ああ、彼の弟は知り合いだからね。雑貨店をやってるから、そこでたまに見かけるよ」

一呼吸おいてボブがつづけます。

「トミー、破壊王に会いたいかい?会わせてやろうか?」

・・・いえ、結構です!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

夫の不貞現場を目撃してしまいました

秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。 何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。 そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。 なろう様でも掲載しております。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

旦那様が不倫をしていますので

杉本凪咲
恋愛
隣の部屋から音がした。 男女がベッドの上で乱れるような音。 耳を澄ますと、愉し気な声まで聞こえてくる。 私は咄嗟に両手を耳に当てた。 この世界の全ての音を拒否するように。 しかし音は一向に消えない。 私の体を蝕むように、脳裏に永遠と響いていた。

形だけの正妃

杉本凪咲
恋愛
第二王子の正妃に選ばれた伯爵令嬢ローズ。 しかし数日後、側妃として王宮にやってきたオレンダに、王子は夢中になってしまう。 ローズは形だけの正妃となるが……

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...