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明日はスリランカ 1
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「冨井さん、いよいよ明日ですね。スリランカに行くのは」
私はバンコクの屋台で朝食のおかゆを食べながら、中田さんと話しています。
「ええ、バンコクでの一週間はあっという間でしたね。短い間なのにいろいろあったなあ。。でも、これでずいぶん僕も外国に慣れたと思います。中田さんにもずいぶんお世話になりました」
「冨井さんがこうして屋台で食べている姿を見ても、誰も初めての海外旅行とは思いませんよ・・・しかし大変ですね。明日からは内戦やっている国ですから」
・・・・・え?
私は食事の手を止めます。
「あのう・・・中田さん。すみません・・その・・内戦て?スリランカって内戦やってるんですか?」
中田さんはゆっくりと・・・唖然とした表情を浮かべてこちらを向きます。
「冨井さん、まさか知らなかったの?」
「はい。僕はただスリランカに行けといわれたから行くわけで、タイもスリランカも似たようなもんだろうと。あの・・内戦てずっとやってるんですか?」
「ずっとやってますよ。あきれたなあ。。今から行く国のことを何にも知らないんですか?ガイドブックとか持ってないんですか?」
「いや、一応これ持ってるんですけど」
私はポケットからクシャクシャになった印刷物を取り出して見せます。
「なんですか、これ?」
「日本のスリランカ大使館でもらったんです。地図とか観光案内とか載っているやつ」
中田さんはそれを広げて、しばらく眺めています。
「冨井さん・・・これでスリランカに行くつもりだったんですか?信じられない。だめだなあ、これじゃ。冨井さん、今から旅行代理店に行きましょう。そこでたむろしている旅行者からスリランカの現地情報を聞くんです。あとは一応ガイドブックを買いましょう。古本で充分ですから。ガイドブックは鵜呑みに信じちゃダメだけど、地図とかは使えますから」
バンコク市内の某旅行代理店。
ここにはいつでも、ヒッピー風旅行者が数名たむろしています。
中田さんは、彼ら数人と話をして、そのうちのひとりドレッドヘアーの若者を連れてきます。
「彼は先月までスリランカにいたそうです。彼にスリランカの話を聞いてみましょう」
「あ、はい。ありがとうございます」
私はドレッド君に尋ねました。
「スリランカってどんなところですか?」
「ああいう怖い国には二度と行きたくないですね」
・・・これがドレッド君の第一声でした。
「スリランカのキャンディってとこでね、僕、アメーバ性赤痢になっちゃって1週間ほど寝込んじゃったんですよ。なんとか少し元気になって外に出て、ゲストハウスの前でぼーっと立っていたとき・・・僕のすぐ隣にも男がひとり立っていたんです。突然、バタバタと数人の男がライフルを持って近づいてきて、銃口をこっちに向けるんです。あっと思っている間にいきなり発砲ですよ!撃たれた・・と思ったら、隣に居た男が倒れて・・・僕は銃で撃たれて死ぬ人を初めて見ましたよ。それを見て僕は腰を抜かしてその場に座り込んだんです」
「銃を持った男のひとりが僕に近づいてきて言うんです。ドンウォーリー、ノープロブレムって。なにがノープロブレムですか!すごいプロブレムじゃないですか」
ドレッド君はよほど怖い目に会ったと見えて、だんだん興奮してきました。
「男は自分達は警官だ。撃たれた男はテロリストだ・・って言うんです。スリランカのテロっていきなり自爆するんですよ。そんな奴が僕の真横に立っていたんだ。それを問答無用でぶっ殺す警官・・・・ああ、もうむちゃくちゃですよ!何が仏教の国だ。あんなとこもう二度と行くもんか!!」
「あの~。。僕は明日から行くんですが。。」
ドレッド君はちょっと、バツの悪そうな顔をして・・
「ああ、そう。ええと、ビーチはいい感じですよ」
・・・いや、フォローになってないって!!
私はバンコクの屋台で朝食のおかゆを食べながら、中田さんと話しています。
「ええ、バンコクでの一週間はあっという間でしたね。短い間なのにいろいろあったなあ。。でも、これでずいぶん僕も外国に慣れたと思います。中田さんにもずいぶんお世話になりました」
「冨井さんがこうして屋台で食べている姿を見ても、誰も初めての海外旅行とは思いませんよ・・・しかし大変ですね。明日からは内戦やっている国ですから」
・・・・・え?
私は食事の手を止めます。
「あのう・・・中田さん。すみません・・その・・内戦て?スリランカって内戦やってるんですか?」
中田さんはゆっくりと・・・唖然とした表情を浮かべてこちらを向きます。
「冨井さん、まさか知らなかったの?」
「はい。僕はただスリランカに行けといわれたから行くわけで、タイもスリランカも似たようなもんだろうと。あの・・内戦てずっとやってるんですか?」
「ずっとやってますよ。あきれたなあ。。今から行く国のことを何にも知らないんですか?ガイドブックとか持ってないんですか?」
「いや、一応これ持ってるんですけど」
私はポケットからクシャクシャになった印刷物を取り出して見せます。
「なんですか、これ?」
「日本のスリランカ大使館でもらったんです。地図とか観光案内とか載っているやつ」
中田さんはそれを広げて、しばらく眺めています。
「冨井さん・・・これでスリランカに行くつもりだったんですか?信じられない。だめだなあ、これじゃ。冨井さん、今から旅行代理店に行きましょう。そこでたむろしている旅行者からスリランカの現地情報を聞くんです。あとは一応ガイドブックを買いましょう。古本で充分ですから。ガイドブックは鵜呑みに信じちゃダメだけど、地図とかは使えますから」
バンコク市内の某旅行代理店。
ここにはいつでも、ヒッピー風旅行者が数名たむろしています。
中田さんは、彼ら数人と話をして、そのうちのひとりドレッドヘアーの若者を連れてきます。
「彼は先月までスリランカにいたそうです。彼にスリランカの話を聞いてみましょう」
「あ、はい。ありがとうございます」
私はドレッド君に尋ねました。
「スリランカってどんなところですか?」
「ああいう怖い国には二度と行きたくないですね」
・・・これがドレッド君の第一声でした。
「スリランカのキャンディってとこでね、僕、アメーバ性赤痢になっちゃって1週間ほど寝込んじゃったんですよ。なんとか少し元気になって外に出て、ゲストハウスの前でぼーっと立っていたとき・・・僕のすぐ隣にも男がひとり立っていたんです。突然、バタバタと数人の男がライフルを持って近づいてきて、銃口をこっちに向けるんです。あっと思っている間にいきなり発砲ですよ!撃たれた・・と思ったら、隣に居た男が倒れて・・・僕は銃で撃たれて死ぬ人を初めて見ましたよ。それを見て僕は腰を抜かしてその場に座り込んだんです」
「銃を持った男のひとりが僕に近づいてきて言うんです。ドンウォーリー、ノープロブレムって。なにがノープロブレムですか!すごいプロブレムじゃないですか」
ドレッド君はよほど怖い目に会ったと見えて、だんだん興奮してきました。
「男は自分達は警官だ。撃たれた男はテロリストだ・・って言うんです。スリランカのテロっていきなり自爆するんですよ。そんな奴が僕の真横に立っていたんだ。それを問答無用でぶっ殺す警官・・・・ああ、もうむちゃくちゃですよ!何が仏教の国だ。あんなとこもう二度と行くもんか!!」
「あの~。。僕は明日から行くんですが。。」
ドレッド君はちょっと、バツの悪そうな顔をして・・
「ああ、そう。ええと、ビーチはいい感じですよ」
・・・いや、フォローになってないって!!
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