36 / 44
第二章:バチャタン奪還戦
俺たちはバチャタンに到着した
しおりを挟む
バチャタンはニット村から北へ馬車で2日ほどの距離だ。
そこにたどり着くまでには、それなりに小規模なモンスターとのバトルや冒険があったのだが、それをいちいち記していたのでは話が進まず、ますます読者離れが加速しそうなので割愛させていただく。
さて、俺たちは今、バチャタンの入り口前に居る。
ここにはバチャタン入りしようとする旅人たちの行列が出来ている。
バチャタンはいわゆる要塞都市になっている。
DQのメルキドとかをイメージしていただくとかなり近い。ただし要塞の入り口を守っているのはゴーレムではない。
「ここから見たところでは、以前とまったく変わりないなあ。しかし多分、入り口の関所の役人たちは新王都の連中に代わっているんだろうね」
ミエルがそう言った。
「さて、間もなく俺たちの番だけどどうする?商人のフリするにしても、武器やらなにやら見られたら厄介だしな。強行突破するか?」
「マーカス、あなたどれだけ無謀なのよ。そんなことしたらバチャタンに入る前にパーティー全滅するわ」
ライカが呆れ声でそう言った。
「ここは私にお任せいただけますか?」
これはレイナだ。
「レイナ、何か策があるのか?」
「私の特技のひとつをお見せしますわ」
レイナはそう言うと、懐から筆と紙を取り出し、なにやら呪符のようなものをしたためはじめた。
ここで関所の役人が俺たちに声を掛ける。
「お前たちは何者だ」
「私たちは旅の商人です」
とりあえず俺がそう応える。
「商人だと?そうは見えんな。馬車を検(あらた)めさせてもらう。お前ら全員、身体検査するぞ」
ここでレイナがにこにこ笑いながら役人に近づいた。
レイナは大酒飲みでサディストのアブナい女だが、こういう風にしていると人懐っこそうな童顔の美少女である。
役人はまったく警戒心を持たない。
「お役人様、素敵なお召し物ですねえ」
そんなことを言いながら役人の肩から背中を撫でまわした。
役人もまんざらではない顔をしている。
その隙にレイナはさきほどしたためた呪符を役人の背中に貼り付けていた。
そして猫なで声で言った。
「私たちはただの商人のパーティーですわ。別に検める必要は無いのじゃありませんか?」
役人はそれに応えてこう言った。
「うむ、検める必要は無いな。通って良し」
俺たちはそのまま馬車ごとバチャタン市街に入場した。
「レイナ、さっきのあれは一体どうしたんだ?」
ミエルが尋ねる。
「式神使役術を使ったのですわ。式神という目に見えない使い魔をあの役人に憑りつかせましたの。それであの方は私の操り人形ですわ」
面白い術だ。まるでスターウォーズのオビ=ワン・ケノービのフォースのようである。
バチャタン市街地はまさに商都らしく活気に溢れている。
多くの商店が立ち並ぶ大都市であり、行きかう人も多く賑やかだ。
「ミエル、新王都軍が制圧したといっても、別に圧制を布いている様子はないな。確かに商人にとっては王国でも新王都でも問題なさそうだ」
「だから制圧されていることに気づいてない旅人も多いと思うよ。ああいうものに目を留めない限りね」
ミエルが指さす建物の壁には数枚のポスターが貼られていた。
『民を栄えさせるマシウス新王と共にバチャタンを独立させよう』
『民衆に生活苦を与える王国政治に抵抗し、豊かな民衆の国を築こう』
それらのポスターを見たライカが言う。
「新王都って別に問題ないんじゃないかしら?無理に奪還する必要ある?私たちが政治に関与する必要はないわけだし」
ライカの言うのには一理ある。
別に王国が絶対正義というわけではないし、新王都が絶対悪であるとは限らない。
しかし・・・
俺たちは別に正義の味方ではない。
武名を上げ、勇者パーティーとなりこの世界でのし上がるには、バチャタン奪還は絶好のチャンスなのだ。
「ライカ、もし変異種のモンスターを多発させている黒幕がここのマシウス新王であるなら、どうせ碌な奴じゃないぞ。やはり倒さなきゃだめだ」
俺はややコジツケではあるが、大義名分を掲げた。
「ライカ、この街を制圧したモンスターの数が分かるか?」
「モンスターの数はそれほど多くは無いわ。せいぜい30体ほどね。ただし高戦闘力のモンスターばかりだけど。特にヤバいのはドラゴンが一匹居ることよ。それも普通のじゃない変異種のドラゴンよ」
「ドラゴンなら僕に任せろ。僕のドラゴンカッターはたとえ変異種であろうが切り刻めるさ」
ミエルがそう言って胸を張った。
「さすがはミエルさんですわ。頼もしいこと」
レイナがそう言うと、ライカはまたむすっと不機嫌そうな顔をした。
ミンミンのときもそうだったが、ライカは同性と仲良くなるのが苦手らしい。
「じゃあモンスターはなんとかなるとして、後の問題は人間の軍勢よ。これはモンスター探査機では調べられない。数千、あるいは万の軍勢が居るかもしれないわよ」
「そちらは私がなんとかしますわ」
レイナが微笑みながらそう言った。
彼女の性格を知らなければ、いわゆる萌えな笑顔だ。
「私は新王都軍の指揮官に接触しますわ。ひとまずここで失礼します。後ほどまたお会いしましょう」
そういうと馬車を飛び降り、街角に立っている警備の兵士に歩み寄った。
関所の役人のときと同様に笑いかけながら呪符を貼り付けている。
なるほど、ああやって指揮官のところまで案内させるつもりのようだ。
レイナは敵に回したくないタイプだが、味方だと非常に頼りになる女だ。
そこにたどり着くまでには、それなりに小規模なモンスターとのバトルや冒険があったのだが、それをいちいち記していたのでは話が進まず、ますます読者離れが加速しそうなので割愛させていただく。
さて、俺たちは今、バチャタンの入り口前に居る。
ここにはバチャタン入りしようとする旅人たちの行列が出来ている。
バチャタンはいわゆる要塞都市になっている。
DQのメルキドとかをイメージしていただくとかなり近い。ただし要塞の入り口を守っているのはゴーレムではない。
「ここから見たところでは、以前とまったく変わりないなあ。しかし多分、入り口の関所の役人たちは新王都の連中に代わっているんだろうね」
ミエルがそう言った。
「さて、間もなく俺たちの番だけどどうする?商人のフリするにしても、武器やらなにやら見られたら厄介だしな。強行突破するか?」
「マーカス、あなたどれだけ無謀なのよ。そんなことしたらバチャタンに入る前にパーティー全滅するわ」
ライカが呆れ声でそう言った。
「ここは私にお任せいただけますか?」
これはレイナだ。
「レイナ、何か策があるのか?」
「私の特技のひとつをお見せしますわ」
レイナはそう言うと、懐から筆と紙を取り出し、なにやら呪符のようなものをしたためはじめた。
ここで関所の役人が俺たちに声を掛ける。
「お前たちは何者だ」
「私たちは旅の商人です」
とりあえず俺がそう応える。
「商人だと?そうは見えんな。馬車を検(あらた)めさせてもらう。お前ら全員、身体検査するぞ」
ここでレイナがにこにこ笑いながら役人に近づいた。
レイナは大酒飲みでサディストのアブナい女だが、こういう風にしていると人懐っこそうな童顔の美少女である。
役人はまったく警戒心を持たない。
「お役人様、素敵なお召し物ですねえ」
そんなことを言いながら役人の肩から背中を撫でまわした。
役人もまんざらではない顔をしている。
その隙にレイナはさきほどしたためた呪符を役人の背中に貼り付けていた。
そして猫なで声で言った。
「私たちはただの商人のパーティーですわ。別に検める必要は無いのじゃありませんか?」
役人はそれに応えてこう言った。
「うむ、検める必要は無いな。通って良し」
俺たちはそのまま馬車ごとバチャタン市街に入場した。
「レイナ、さっきのあれは一体どうしたんだ?」
ミエルが尋ねる。
「式神使役術を使ったのですわ。式神という目に見えない使い魔をあの役人に憑りつかせましたの。それであの方は私の操り人形ですわ」
面白い術だ。まるでスターウォーズのオビ=ワン・ケノービのフォースのようである。
バチャタン市街地はまさに商都らしく活気に溢れている。
多くの商店が立ち並ぶ大都市であり、行きかう人も多く賑やかだ。
「ミエル、新王都軍が制圧したといっても、別に圧制を布いている様子はないな。確かに商人にとっては王国でも新王都でも問題なさそうだ」
「だから制圧されていることに気づいてない旅人も多いと思うよ。ああいうものに目を留めない限りね」
ミエルが指さす建物の壁には数枚のポスターが貼られていた。
『民を栄えさせるマシウス新王と共にバチャタンを独立させよう』
『民衆に生活苦を与える王国政治に抵抗し、豊かな民衆の国を築こう』
それらのポスターを見たライカが言う。
「新王都って別に問題ないんじゃないかしら?無理に奪還する必要ある?私たちが政治に関与する必要はないわけだし」
ライカの言うのには一理ある。
別に王国が絶対正義というわけではないし、新王都が絶対悪であるとは限らない。
しかし・・・
俺たちは別に正義の味方ではない。
武名を上げ、勇者パーティーとなりこの世界でのし上がるには、バチャタン奪還は絶好のチャンスなのだ。
「ライカ、もし変異種のモンスターを多発させている黒幕がここのマシウス新王であるなら、どうせ碌な奴じゃないぞ。やはり倒さなきゃだめだ」
俺はややコジツケではあるが、大義名分を掲げた。
「ライカ、この街を制圧したモンスターの数が分かるか?」
「モンスターの数はそれほど多くは無いわ。せいぜい30体ほどね。ただし高戦闘力のモンスターばかりだけど。特にヤバいのはドラゴンが一匹居ることよ。それも普通のじゃない変異種のドラゴンよ」
「ドラゴンなら僕に任せろ。僕のドラゴンカッターはたとえ変異種であろうが切り刻めるさ」
ミエルがそう言って胸を張った。
「さすがはミエルさんですわ。頼もしいこと」
レイナがそう言うと、ライカはまたむすっと不機嫌そうな顔をした。
ミンミンのときもそうだったが、ライカは同性と仲良くなるのが苦手らしい。
「じゃあモンスターはなんとかなるとして、後の問題は人間の軍勢よ。これはモンスター探査機では調べられない。数千、あるいは万の軍勢が居るかもしれないわよ」
「そちらは私がなんとかしますわ」
レイナが微笑みながらそう言った。
彼女の性格を知らなければ、いわゆる萌えな笑顔だ。
「私は新王都軍の指揮官に接触しますわ。ひとまずここで失礼します。後ほどまたお会いしましょう」
そういうと馬車を飛び降り、街角に立っている警備の兵士に歩み寄った。
関所の役人のときと同様に笑いかけながら呪符を貼り付けている。
なるほど、ああやって指揮官のところまで案内させるつもりのようだ。
レイナは敵に回したくないタイプだが、味方だと非常に頼りになる女だ。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる