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第二章:バチャタン奪還戦

レイナがパーティーに加わった

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翌朝、俺とライカが宿の食堂で朝食を摂っているところに、ミエルとレイナがやってきた。

「おはよう、僕たちも朝食を一緒させってもらうよ」

「おはようございます。お邪魔させていただきますね」

ふたりの姿を見たライカはまたも不機嫌そうな顔をした。

「あなたたち、昨夜はあれほど酔っ払っていたわりに早起きね」

「あら、あの程度なら酔ったうちに入りませんわ・・というのは嘘です。あれほど飲んだのはひさしぶりです。ミエルさんお強いんですもの」

レイナはライカのぶっきらぼうな態度も意に介せず応じた。

「お酒だけじゃなく、あっちのほうもお強い戦士様でしたわ」

「ああそう、それはよかったわね」

ライカはさらにぶっきらぼうに応えたが、レイナはどこ吹く風である。
しかし酒はともかくあっちのほうなら俺の方が強いことを、いずれレイナにも思い知らせてやろうか。

それにしてもミンミンに思いを寄せていたミエルが、レイナとこう簡単に男女の仲になるとは意外だった。
なにしろライカのいう通り、レイナはおよそミンミンとは似ても似つかない。
生真面目なミンミンと違い、巫女という職業にしてはおそろしく奔放な性格のようだ。

あえて似ている点があるとすれば童顔であることと、魔法少女系であることくらいか。
案外、ミエルの女の好みは単純にロリな魔女っ娘なのかもしれない。

2人の朝食が運ばれてくると、ミエルが話を切り出した。

「マーカス、まずはレイナをパーティーに加えてくれ。それが済んだらバチャタンの現状を説明する」

俺はレイナにパーティー参加の意思を確認し、承認する。
簡単な口頭でのやり取りで契約は完了した。

鞄の裏蓋にレイナのステータスが表示されたことを確認する。

◆レイナ
レベル:20
HP:200
MP:200
職業:巫女
スキル:ハポン神道本庁アカデミー卒 合気柔術
魔法:蛇炎術 結界術 式神使役術 傷病平癒術 毒消術
武器:
防具:巫女の衣装
アイテム:呪符制作キット

「じゃあ、これでレイナは正式にパーティーのメンバーだ。ミエル、バチャタンについて説明してくれ」

「よし、では説明する。およそ1週間ほど前のことだ・・・」

ミエルの話を要約すると以下のようなものだ。

バチャタンは王都に次ぐ第二の都市であり、王国の台所というべき商都である。
そのバチャタンに新王都軍と名乗るモンスターを含む武装勢力が侵入し、わずか1日で制圧したのだ。

しかし不思議なことにそれほどの大事件であるにもかかわらず、その事実はバチャタン外部にはまだほとんど知られていない。

「バチャタンは新王都軍の制圧後も都市機能を維持しているからね。この村にもバチャタンから多くの物資が輸送されている。武装勢力は商都としての機能を維持したまま、バチャタンの独立を王国に要求しているわけさ」

それは王国としては許しがたいことだが、同時にあまり大っぴらにしたくもない。
そこで水面下では新王都軍と交渉しつつ、密かに奪還を企てているのだが何しろ国家の台所を人質に取られているようなものだ。

王国の正規軍や騎士団を動かしての全面戦争をやれば、国家の財政にも影響する。

「そこで僕たちのようなフリーの上級冒険者にだけ、お触れを回したわけさ。バチャタンを奪還した者には莫大な賞金を出すってね」

「雑な作戦だな。王国政府は馬鹿どもの集まりか?」

「過去にも何度か王国存亡の危機があったんだけどね、その都度勇者が現れて解決してくれただろ?だからこの王国の政府は戦略的に物事を考えられなくなってるんだろうね」

「それにしてもこんな大きな事件、いつまでも隠しておけるわけないだろ」

「実際、もう噂になってるよ。商人たちにとっては王国でも新王都でも商売になればどっちでもいいわけだし、彼らの口に戸は立てられないさ」

「それにそんなお触れ回したところで、奪還に行く奴なんか居るのか?」

「まあ居ないだろうね。都市部を1日で制圧するほどの武装勢力相手に、数名のパーティーで乗り込むなんて死にに行くようなものだからね」

「そこに俺たち4人で乗り込もうってわけだよな」

ミエルはいかにも愉快だといった笑い声を上げた。

「そうともマーカス。僕たちの名を上げるチャンスだろ?4人で奪還してやろうぜ」

俺はミエルのこういうストレートなところが好きだ。悪く言えば単純なんだけど。

「なにかいい策でもあるのか?ミエル」

ミエルはきょとんとした顔をした。

「策?そんなものいらないだろ。バチャタンには別に入れないわけじゃないんだから、行ってその新王とやらを倒せばいいんじゃないの」

はあ・・やはりこいつは単純すぎる。

「商人のふりでもしてバチャタンに入ろう。なに入るのは簡単さ。出るのが難しいだけで」

「なあミエル、お前も戦略的に考えるのが苦手なようだな。しかし気に入った。バチャタンに行って大暴れして解決するか」

そこまで黙って聞いていたライカがたまらず口を挟んだ。

「あなたたちは馬鹿なの?ミンミンちゃんがあんなことになったのに、また無計画に危険に飛び込みたいわけ?」

確かにそれを言われると痛い。
俺はのど元過ぎると熱さを忘れるタイプなのだ。

「まあそれでよろしいんじゃないですか?下手な考え休むに似たりとも言いますわ。どっちにしても行ってみなければ何もわかりませんから、出たとこ勝負で行きましょうよ」

レイナがそう言った。こいつもなかなかアブない性格のようだ。
そのレイナをライカが無言で睨みつけた。

「まあライカの言うのも一理あるけど、とにかく行って様子を見ることにしよう。どうするかはそれから考える。明朝出発だ」

俺はパーティーのリーダーとして決定を下した。
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