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スイカ割
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「お昼ご飯にするぞ」
黍兄と団蔵がバーベキューの道具を運んでいた。
いないと思っていたら二人で買い出しに行ってくれていたみたいだ。
「ぼくも手伝うよ」
団蔵から買い物袋を半分持とうとしたんだけど。
「無理しなくていいて。それよりもおまえは他に取って来ないといけないものがあるんじゃないのか?」
団蔵に指摘されてはっとした。
そうだった。今お義母さんが持たせてくれた黍団子があるんだった。
ぼくは黍兄から車のカギを借りると慌てて坂道を登って行った。
黍団子を抱えて皆がいる浜辺へと戻るとすでに香ばしい肉や野菜を焼く匂いが漂ってきた。
火の当番は主に年長者である黍兄が担当しているみたいだ。
「ほらよ。熱いから気をつけろ」
黍兄が差し出してきれた焼き立ての串を手に取る。
ほくほくとしていておいしい。
多少焦げている部分もあったけれども、空気の美味しい場所で食べるご飯は格別だった。
「黍団子持ってきたんだ。よかったら食後のおやつにもどうぞ」
「ありがとう」
「わーおいしそうな黍団子だね」
「理の家の黍団子は最高にうまいからな」
「桃川君の家で作ったの?すごいね?」
食事を終えてそれぞれ黍団子を口に運ぶ。
「デザートは黍団子だけじゃないぞ」
黍兄が網に入ったスイカを掲げた。
「海と言えばスイカ割だろう?」
黍兄は予備のビニールシートをスイカの下へとひく。
団蔵がどこからか木の棒を持ってきてぐるぐると回りだした。
スイカになかなか当てられなくて苦戦して、結局全員回ってもスイカを割ることが出来なくて、キレた団蔵が目を開けたままスイカをぱかーんと割ったのだった。
「反則だよ」
各方面から苦情の声があるが誰も本気では怒ってはいなかった。
団蔵が割ったスイカを黍兄がきれいに整えてカットし直してくれたスイカを口へと運ぶ。
スイカの甘さと塩加減が丁度いいバランスを保っている。
お昼ご飯を食べて満腹になると、砂浜にゴロンと寝ころんだ。
サラサラとした砂が心地よい。
ぼくが休んでいる間にも黍兄はせっせと片付けをしていた。
手伝おうかと声をかけたのだけれども、仕事をしていないと落ち着かないからって言われた。
「ねえ、ビーチーボールしようよ」
寝転がっていたぼくの上空に突如ビーチーボールを抱えた鬼島さんが飛び込んでくる。
慌てて起き上がったぼくは、鬼島さんと至近距離で顔を近づけてしまい、顔を真っ赤にした。
「向こうで待っているからね」
鬼島さんは何事もなかったようにぼくから離れていった。
ぼくの心臓はドキドキとなりっぱなしでしばらくその場を動けなかった。
片付けを終えた黍兄が車から荷物を置いて戻ってくると。ビーチバレーの開始の合図がなった。
審判役は黍兄。
ぼくと団蔵チーム対雉宮君と鬼島さんチームだ。
勝ったチームは負けたチームに一つだけ言うことを聞くルールだ。
もちろん危険を伴うものは禁止だけれども、なぜか団蔵と雉宮君がすごく張り合って勝負している。
鬼島さんは雉宮君のプレイ姿に夢中だし、ぼくは運動音痴なので、結果として張り合っている二人の邪魔をしている形にしかならなかったのだけれども、仲間内で体を動かすのはすごく楽しかった。
体育の授業だと憂鬱な気持ちになるのに、みんなとやると楽しいから不思議だ。
「理ぼさっとするな!さっきもボール落としただろう」
「ご、ごめん」
ぼんやりしているぼくを見かねてか団蔵がそっとぼくに耳打ちしてきた。
「優勝したら、鬼島と一日デートとかもできるかもしれないじゃん。
もっと頑張れよ」
「な!」
鬼島さんとぼくがデート!
いやいやダメだ。ゲームの勝ち負けでデートしてもらうだなんて不謹慎すぎる。
でも、ゲームでもなければ鬼島さんは一生ぼくとはデートしてくれないんだろうな?
たとえゲームの罰ゲームだとしても、鬼島さんと二人っきりでデートできるのならば、ぼくは鬼島さんの事を諦められるのではないのだろうか?
いい思い出だったと心に言い聞かせることが出来るんじゃないのだろうか?
そうしたら、ぼくが雉宮君に弟子入り必要性も無くなる。
雉宮君は本心を鬼島さんに告げることが出来るのではないのだろうか?
ぼくさえいなくなれば。
ぼくは歯を食いしばって気合を入れた。
飛んできたビーチボール。
ぼくは思いっきりボールを跳ね上げた。
ボールはぼくの腕にバウンドして、雉宮君が作った砂の城を飛び越えて明後日の方向へと飛んでいってしまった。
やってしまった。
運動神経の悪いぼくが気合をいれたからっていきなり上手くなるわけないじゃないか?
「ぼく、ボール取ってくるね」
ぼくは慌ててボールの飛んで行った方向へと駆けて行った。
黍兄と団蔵がバーベキューの道具を運んでいた。
いないと思っていたら二人で買い出しに行ってくれていたみたいだ。
「ぼくも手伝うよ」
団蔵から買い物袋を半分持とうとしたんだけど。
「無理しなくていいて。それよりもおまえは他に取って来ないといけないものがあるんじゃないのか?」
団蔵に指摘されてはっとした。
そうだった。今お義母さんが持たせてくれた黍団子があるんだった。
ぼくは黍兄から車のカギを借りると慌てて坂道を登って行った。
黍団子を抱えて皆がいる浜辺へと戻るとすでに香ばしい肉や野菜を焼く匂いが漂ってきた。
火の当番は主に年長者である黍兄が担当しているみたいだ。
「ほらよ。熱いから気をつけろ」
黍兄が差し出してきれた焼き立ての串を手に取る。
ほくほくとしていておいしい。
多少焦げている部分もあったけれども、空気の美味しい場所で食べるご飯は格別だった。
「黍団子持ってきたんだ。よかったら食後のおやつにもどうぞ」
「ありがとう」
「わーおいしそうな黍団子だね」
「理の家の黍団子は最高にうまいからな」
「桃川君の家で作ったの?すごいね?」
食事を終えてそれぞれ黍団子を口に運ぶ。
「デザートは黍団子だけじゃないぞ」
黍兄が網に入ったスイカを掲げた。
「海と言えばスイカ割だろう?」
黍兄は予備のビニールシートをスイカの下へとひく。
団蔵がどこからか木の棒を持ってきてぐるぐると回りだした。
スイカになかなか当てられなくて苦戦して、結局全員回ってもスイカを割ることが出来なくて、キレた団蔵が目を開けたままスイカをぱかーんと割ったのだった。
「反則だよ」
各方面から苦情の声があるが誰も本気では怒ってはいなかった。
団蔵が割ったスイカを黍兄がきれいに整えてカットし直してくれたスイカを口へと運ぶ。
スイカの甘さと塩加減が丁度いいバランスを保っている。
お昼ご飯を食べて満腹になると、砂浜にゴロンと寝ころんだ。
サラサラとした砂が心地よい。
ぼくが休んでいる間にも黍兄はせっせと片付けをしていた。
手伝おうかと声をかけたのだけれども、仕事をしていないと落ち着かないからって言われた。
「ねえ、ビーチーボールしようよ」
寝転がっていたぼくの上空に突如ビーチーボールを抱えた鬼島さんが飛び込んでくる。
慌てて起き上がったぼくは、鬼島さんと至近距離で顔を近づけてしまい、顔を真っ赤にした。
「向こうで待っているからね」
鬼島さんは何事もなかったようにぼくから離れていった。
ぼくの心臓はドキドキとなりっぱなしでしばらくその場を動けなかった。
片付けを終えた黍兄が車から荷物を置いて戻ってくると。ビーチバレーの開始の合図がなった。
審判役は黍兄。
ぼくと団蔵チーム対雉宮君と鬼島さんチームだ。
勝ったチームは負けたチームに一つだけ言うことを聞くルールだ。
もちろん危険を伴うものは禁止だけれども、なぜか団蔵と雉宮君がすごく張り合って勝負している。
鬼島さんは雉宮君のプレイ姿に夢中だし、ぼくは運動音痴なので、結果として張り合っている二人の邪魔をしている形にしかならなかったのだけれども、仲間内で体を動かすのはすごく楽しかった。
体育の授業だと憂鬱な気持ちになるのに、みんなとやると楽しいから不思議だ。
「理ぼさっとするな!さっきもボール落としただろう」
「ご、ごめん」
ぼんやりしているぼくを見かねてか団蔵がそっとぼくに耳打ちしてきた。
「優勝したら、鬼島と一日デートとかもできるかもしれないじゃん。
もっと頑張れよ」
「な!」
鬼島さんとぼくがデート!
いやいやダメだ。ゲームの勝ち負けでデートしてもらうだなんて不謹慎すぎる。
でも、ゲームでもなければ鬼島さんは一生ぼくとはデートしてくれないんだろうな?
たとえゲームの罰ゲームだとしても、鬼島さんと二人っきりでデートできるのならば、ぼくは鬼島さんの事を諦められるのではないのだろうか?
いい思い出だったと心に言い聞かせることが出来るんじゃないのだろうか?
そうしたら、ぼくが雉宮君に弟子入り必要性も無くなる。
雉宮君は本心を鬼島さんに告げることが出来るのではないのだろうか?
ぼくさえいなくなれば。
ぼくは歯を食いしばって気合を入れた。
飛んできたビーチボール。
ぼくは思いっきりボールを跳ね上げた。
ボールはぼくの腕にバウンドして、雉宮君が作った砂の城を飛び越えて明後日の方向へと飛んでいってしまった。
やってしまった。
運動神経の悪いぼくが気合をいれたからっていきなり上手くなるわけないじゃないか?
「ぼく、ボール取ってくるね」
ぼくは慌ててボールの飛んで行った方向へと駆けて行った。
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