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海賊編 第九章 武道会
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武道会当日。
「集まった勇敢なる戦士達よ。
ここに熱い決戦の幕は訪れた。
はたして勝利するのは誰なのか!」
司会者の解説で、観客は大盛り上がりだった。
ゲオルグは、慎重だが確実に勝ち抜いて行った。
「あれは」
ゲオルグの次の対戦相手を知り、ラセは身構えた。
「クレイもこの大会に出ていたのか」
隣に座る、ルイも難しい表情をした。
「クレイ相手だと、今のゲオルグでは厳しいかも」
「おいおい。せっかくの奇策を披露しないで、終わるのかよ」
「それは、ゲオルグ次第」
ラセとルイは、ゲオルグとクレイに視線を向け直した。
司会者が開始の合図をする。
ゲオルグとクレイはお互い間合いを保ちながら、交戦を繰り返していた。
実践経験の豊富なクレイの方が、動きが早い。
ゲオルグは、ハンマーで剣を防いでいるが、押され気味だ。
「若い割になかなかやる」
「貴様もな!」
金属同士が、ぶつかる音が響く。
「ここで、負けるわけには、いかないんだ!」
ゲオルグは、叫ぶと、ハンマーを振り回した。
「ふん。軌道が、ばれているぞ」
クレイは先を見通して、左へと避けた。
その時、ゲオルグは強引に軌道をずらした。
「なに!」
軌道をずらしたことにより、ハンマーは、クレイに直撃した。
痛みを感じて、倒れこむクレイ。
「勝者。ゲオルグ!」
司会者の合図で試合が終わった。
「なかなかやるな。みごとだ。少年」
「貴様もな」
尻餅をついたクレイに手を差し伸べて、ゲオルグは起き上がるのを手伝った。
敗者に手を差し伸べる姿勢に、観客達から喝采が上がった。
「次がいよいよ。イハ王子との対決か」
「ゲオルグならば、大丈夫。たくさん練習したから」
ラセは、ゲオルグの勝利を祈った。
「これより、決勝戦を開催致します!」
司会者の言葉で盛り上がる観客。
だが、巨大な体格のイハ王子が登場すると、あたりは静まり返った。
「ほう。相手は、ゲオルグか?
騎士院でちやほやされているだけの実力はあるようだな」
「イハ王子。俺は貴方を倒します!」
ゲオルグとイハ王子の間に、熱い火花が散った。
観客も息を飲んで、二人を見守る。
「では、開始!」
司会者の合図で、試合は開始された。
イハ王子は棍棒を構えて、ゲオルグに突進してくる。
ゲオルグは避けようとせずに、ハンマーを振り回しながら、自身も回転を始めた。
「何をしているんだ?」
回転するゲオルグに棍棒を振り下ろす隙間がない。
イハ王子は、初めて動揺の表情を浮かべた。
観客達もおかしな行動をするゲオルグに興味津々だ。
ゲオルグは、身体を回転させながら、ハンマーの勢いを増していく。
(大事なのは、先を読ませない行動と遠心力!)
どう動いていいのかわからないイハ王子は完全に足止めされていた。
そのイハ王子めがけて、ゲオルグは、ハンマーを手放した。
勢いよく飛び出したハンマーは、イハ王子に直撃した。
何が起こったのかわからない内に、イハ王子は、地面に倒れ伏した。
観客達も、呆気にとられていた。
「け、決勝戦の勝者は、ゲオルグ。ゲオルグです!」
正気に戻った司会者がやっとのことで告げた勝利宣言。
誰もが、イハ王子の勝利を確信していただけあって、辺りに動揺が走った。
「こんなやり方があったなんて」
特別席で試合を見つめていたティーラ姫は、拳を握りしめた。
「俺勝ったのか?」
目の前で倒れているイハ王子を見ても、まだゲオルグは実感がなかった。
「勝利おめでとうございます」
「ロティーラ王妃!」
いつのまにか、ロティーラ王妃が、ゲオルグに近づいていた。
「俺勝ったのですか?」
「ええ。貴方はイハ王子に勝ちました。
とても素晴らしい奇策でしたね。
次の相手は、わたしです」
「え?」
ロティーラ王妃は、手に短槍を構えて、にこりと微笑んでいた。
「え?ちょっと王妃様?」
「この国で一番強いのは、誰でしょうか?それは、わたしです」
ロティーラ王妃は、司会者に目線を向けた。
打ち合わせ済みなのか、司会者は慌てる事もなく、対応する。
「決戦を優勝された方には、豪華特典として、ロティーラ王妃との決闘が与えられます!」
司会者に乗せられて、観客達から動揺が収まり、再び喝采が上がった。
「こんな特典いらない!」
ゲオルグは、試合が開催されると、涙目になって逃げだした。
ロティーラ王妃は微笑みを浮かべながら、素早い動きで、ゲオルグを瞬殺した。
「集まった勇敢なる戦士達よ。
ここに熱い決戦の幕は訪れた。
はたして勝利するのは誰なのか!」
司会者の解説で、観客は大盛り上がりだった。
ゲオルグは、慎重だが確実に勝ち抜いて行った。
「あれは」
ゲオルグの次の対戦相手を知り、ラセは身構えた。
「クレイもこの大会に出ていたのか」
隣に座る、ルイも難しい表情をした。
「クレイ相手だと、今のゲオルグでは厳しいかも」
「おいおい。せっかくの奇策を披露しないで、終わるのかよ」
「それは、ゲオルグ次第」
ラセとルイは、ゲオルグとクレイに視線を向け直した。
司会者が開始の合図をする。
ゲオルグとクレイはお互い間合いを保ちながら、交戦を繰り返していた。
実践経験の豊富なクレイの方が、動きが早い。
ゲオルグは、ハンマーで剣を防いでいるが、押され気味だ。
「若い割になかなかやる」
「貴様もな!」
金属同士が、ぶつかる音が響く。
「ここで、負けるわけには、いかないんだ!」
ゲオルグは、叫ぶと、ハンマーを振り回した。
「ふん。軌道が、ばれているぞ」
クレイは先を見通して、左へと避けた。
その時、ゲオルグは強引に軌道をずらした。
「なに!」
軌道をずらしたことにより、ハンマーは、クレイに直撃した。
痛みを感じて、倒れこむクレイ。
「勝者。ゲオルグ!」
司会者の合図で試合が終わった。
「なかなかやるな。みごとだ。少年」
「貴様もな」
尻餅をついたクレイに手を差し伸べて、ゲオルグは起き上がるのを手伝った。
敗者に手を差し伸べる姿勢に、観客達から喝采が上がった。
「次がいよいよ。イハ王子との対決か」
「ゲオルグならば、大丈夫。たくさん練習したから」
ラセは、ゲオルグの勝利を祈った。
「これより、決勝戦を開催致します!」
司会者の言葉で盛り上がる観客。
だが、巨大な体格のイハ王子が登場すると、あたりは静まり返った。
「ほう。相手は、ゲオルグか?
騎士院でちやほやされているだけの実力はあるようだな」
「イハ王子。俺は貴方を倒します!」
ゲオルグとイハ王子の間に、熱い火花が散った。
観客も息を飲んで、二人を見守る。
「では、開始!」
司会者の合図で、試合は開始された。
イハ王子は棍棒を構えて、ゲオルグに突進してくる。
ゲオルグは避けようとせずに、ハンマーを振り回しながら、自身も回転を始めた。
「何をしているんだ?」
回転するゲオルグに棍棒を振り下ろす隙間がない。
イハ王子は、初めて動揺の表情を浮かべた。
観客達もおかしな行動をするゲオルグに興味津々だ。
ゲオルグは、身体を回転させながら、ハンマーの勢いを増していく。
(大事なのは、先を読ませない行動と遠心力!)
どう動いていいのかわからないイハ王子は完全に足止めされていた。
そのイハ王子めがけて、ゲオルグは、ハンマーを手放した。
勢いよく飛び出したハンマーは、イハ王子に直撃した。
何が起こったのかわからない内に、イハ王子は、地面に倒れ伏した。
観客達も、呆気にとられていた。
「け、決勝戦の勝者は、ゲオルグ。ゲオルグです!」
正気に戻った司会者がやっとのことで告げた勝利宣言。
誰もが、イハ王子の勝利を確信していただけあって、辺りに動揺が走った。
「こんなやり方があったなんて」
特別席で試合を見つめていたティーラ姫は、拳を握りしめた。
「俺勝ったのか?」
目の前で倒れているイハ王子を見ても、まだゲオルグは実感がなかった。
「勝利おめでとうございます」
「ロティーラ王妃!」
いつのまにか、ロティーラ王妃が、ゲオルグに近づいていた。
「俺勝ったのですか?」
「ええ。貴方はイハ王子に勝ちました。
とても素晴らしい奇策でしたね。
次の相手は、わたしです」
「え?」
ロティーラ王妃は、手に短槍を構えて、にこりと微笑んでいた。
「え?ちょっと王妃様?」
「この国で一番強いのは、誰でしょうか?それは、わたしです」
ロティーラ王妃は、司会者に目線を向けた。
打ち合わせ済みなのか、司会者は慌てる事もなく、対応する。
「決戦を優勝された方には、豪華特典として、ロティーラ王妃との決闘が与えられます!」
司会者に乗せられて、観客達から動揺が収まり、再び喝采が上がった。
「こんな特典いらない!」
ゲオルグは、試合が開催されると、涙目になって逃げだした。
ロティーラ王妃は微笑みを浮かべながら、素早い動きで、ゲオルグを瞬殺した。
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