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海賊編 第六章 フォーチューン国本島
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しおりを挟む「だから、首から胸が隠れる服しか着ないと、先ほどから言っている。なぜキラーは、胸元の開いた服ばかり着せたがる?」
「それは、可愛いからだ」
なかなか服を着替えようとしないラセに最初は呆れて、ルイとチャナで着せ替えを楽しんでいたキラーだが、散々遊んだ後二人の服装が決まると、今度は矛先がラセへと向けられた。
ちなみに女装させられそうになったルイは断固として許可しなかったことを付け加えて置こう。
「とにかく、この条件だけは譲れない。後着替えは自分でするから」
「まったく、ラセは強情だ。しかたがない。諦めよう」
ラセは、キラーが納得したことにほっとした。
ラセは、別に胸元が見えるのが恥ずかしいのではない。
セントミアを宿しているペンダントと鎖に通された指輪を見られるのが嫌なのだ。
「でも、この帽子は取らせてもらうよ」
そう言い放つと、気が緩んでいたラセから帽子を奪い取る。
「あ!」
ラセが気付いた時には、帽子の中に収まっていた、長い髪が零れ落ちる。
ポニーテールにした、澄んだ水色の髪を見て一同はあまりの美しさに息を飲んだ。
「ラセって髪長かったんだな」
「え、ええ」
ルイの言葉に曖昧に頷く。
「どうやら、私は、とんでもない原石を見つけてしまったようだな」
キラーは、ラセの髪を触って確かめる。
「艶のある髪。毛先も痛んでないし、何より絹の様に指通りがいい。
この髪を生かすには、私の用いるどのドレスでも、物足りない。
いっその事、オーダーメイドのドレスを作らせるか」
「そこまでしなくていいから!」
ラセは、キラーから帽子を取り戻すと髪を隠した。
「なぜ隠してしまう?勿体無いではないか?」
「勿体無くない。私は使用人の服で舞踏会に出る。ドレスは着ない」
「使用人の服で舞踏会に出るなどと変わったことを言う?」
「エレメンタル大陸では、舞踏会に家臣を伴って出席するのは、普通の事。フォーチューン国では、違うの?」
「……いや、フォーチューン国でも、一部の貴族達は、家臣を伴って出席する。
だが、ラセを家臣役に据えることになるとは」
「慣れているから平気。むしろ気楽」
「そうか。まあ、舞踏会に来てくれるだけで、良しとしよう」
「なら、俺も使用人服がいい。その正装はやっぱりなれないから。どうせ、クレイとチャナは正装するんだろ?だったら、使用人が二人いてもいいだろう?」
「ルイまで、使用人がいいと。まったく変わった人達だ。
だが実に面白い。よいだろう。使用人の服を二人には用意しよう」
キラーは、服装が決まったことをホークに知らせに部屋を離れた。
「使用人であるか?随分と物好きなことである。チャナを存分に引き立てるのだぞ」
チャナは嫌味を込めて、ラセに告げた。
ラセは嫌味だと気付いていながらも、頭を下げた。
「チャナ様の代理家臣として恥のないように努めさせて頂きます」
嫌味を的確に交わしたラセをチャナは悔しそうに睨み付けた。
ルイは、礼儀正しいラセに対して、冷たい印象を受けた。
ラセは基本人と親しくなろうとせずに、突き放した物言いをする。
でも、礼儀正しいラセは、感情の籠らない無機質な存在に思えて怖い。
「なあ、ラセ」
「なにルイ?」
「俺には、その敬語とか使ったりするんじゃないぞ」
「?ルイに敬語を使う理由が思い浮かばない」
「そうだよな。ごめんな。変なこと言って」
ルイは、ラセが自分に対して敬語を使わないことに安堵していた。
突き放されてもいい。
でも、感情のないラセなど、ルイには耐えられそうになかった。
チャナは、ラセを睨み付ける。
また、ラセの方が可愛がられたである。
思わず美しいポニーテールの髪に心を揺り動かされた自分が悔しいである。
ラセは、ルイと仲がいいようである。
まずは、ルイから引き離してやるである。
チャナは意地の悪い笑みを浮かべた。
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