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盗賊編 第九章 水の国と風の国の結婚式
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「そうだな」
セイハは、ロティーラに微笑んだ。
セイハが、正式に水の国の王子だと世間に知れ渡ったら、もう、セイハの笑顔を近くで見ることが出来ない。
セイハが、遠くに行ってしまうと思うと、ロティーラの胸は苦しくてたまらなかった。
『本当の事をロティーラに告げなくてもいいのか?』
夕方。
魔神サピダジョースンは、セイハと二人だけなのを確認すると、問いただした。
セイハは、首を横に振り、拒否の意思を示す。
「楽しみは、後に取っとくものだろ?」
セイハは、赤く染まる夕日を見上げた。
「大丈夫だ。ロティーラは、何が起ころうとも、おれが守って見せる」
セイハは、夕日に向かって誓いを立てた。
その頃、城の一室で、ひそかに話をしている者達がいた。
『いよいよ明日が、結婚式だ』
「ええ、そうですね」
赤い髪を結った少女は、椅子に座って俯いたまま返事をした。
「……本当に、水の国の王子と結婚したら、私の国の魔神を返して頂けるのですか?」
『ローラ姫が、うまくやればな』
ローラ姫の瞳には、悲しみが映っていた。
「私が、水の国の王子と結婚するのは、闇の帝国の為ではありません。
私の国を救う為です」
「そのような、口の聞きかかたしてもいいと思っているのか?」
黒ずくめの男は、ローラ姫の刃向う口調にいらだちを覚えた。
『今、おまえの国を支配しているのは、闇の帝国なのだぞ』
ローラ姫が、恐怖で身体を強張らせると、黒ずくめの男は、満足そうに鼻で笑った。
『この計画を成功させる為に、十年もの月日を費やしたのだ。
今更失敗など許されない』
エレメンタル大陸には、五つの国が存在した。
水、風、木、地、火の五つである。
水は、火を消し、火は、水を消す。
水と火の国がくっ付けば、王族属性魔法の脅威を減らせると、闇の帝国は企んだのだ。
ローラ姫は、風の国の姫ではなく、火の国の姫だった。
火の国の守護魔神を闇の帝国に奪われて、仕方なく風の国の姫の身代わりを演じていたのだ。
逆に風とくっ付いてしまえば、効力を増してしまう。
闇の帝国は、エレメンタル大陸の五つの国が強化されてしまうのを恐れているのだ。
ローラ姫は、祈りを捧げる事しか出来なかった。
ローラ姫と闇の帝国の男が話をしている頃。
城のバルコニーに出て、夜風にあたっている少年がいた。
少年は、セイハと同じ位の年頃だった。
髪は、頭巾をしていてわからないが、目は、海を映したかのような青色だ。
なによりも目を引くのは、少年の恰好だった。
シルクの服に青いマントをなびかせている。
誰が見ても高級品だと人目でわかる恰好をしている。
彼は、セイハが、水の国の王子の身代わりを頼んだ少年ジョンだった。
ジョンは、夜空を見上げた。
星が瞬き、まるで明日の結婚式を祝福しているように感じられた。
帰ってこなかった、セイハを恨む気持ちは、ジョンにはなかった。
ただ、自分を拾ってくれて、役割を与えてくれて、一番の友人だったセイハが、幸せに生きていてくれればいいと、心の底から思った。
真珠も髪を隠して、ごまかしてきた。
けれども、ジョンは、本当の王子ではないので、どうしても水の力を扱うことが出来なかった。
水の国の魔神を王子が使役するのが、結婚式の儀式の目玉だったのだ。
しかし、ジョンには、水の国の魔神を使役する事が出来ないのである。
使役出来ない事が、発覚してしまえば、ジョンが王子ではないことがばれてしまう。
本物の王子が居ないことを知れば、王国は大騒ぎとなり、滅んでしまうかもしれない。
ジョンは、不安な気持ちで一杯だった。
セイハは、ロティーラに微笑んだ。
セイハが、正式に水の国の王子だと世間に知れ渡ったら、もう、セイハの笑顔を近くで見ることが出来ない。
セイハが、遠くに行ってしまうと思うと、ロティーラの胸は苦しくてたまらなかった。
『本当の事をロティーラに告げなくてもいいのか?』
夕方。
魔神サピダジョースンは、セイハと二人だけなのを確認すると、問いただした。
セイハは、首を横に振り、拒否の意思を示す。
「楽しみは、後に取っとくものだろ?」
セイハは、赤く染まる夕日を見上げた。
「大丈夫だ。ロティーラは、何が起ころうとも、おれが守って見せる」
セイハは、夕日に向かって誓いを立てた。
その頃、城の一室で、ひそかに話をしている者達がいた。
『いよいよ明日が、結婚式だ』
「ええ、そうですね」
赤い髪を結った少女は、椅子に座って俯いたまま返事をした。
「……本当に、水の国の王子と結婚したら、私の国の魔神を返して頂けるのですか?」
『ローラ姫が、うまくやればな』
ローラ姫の瞳には、悲しみが映っていた。
「私が、水の国の王子と結婚するのは、闇の帝国の為ではありません。
私の国を救う為です」
「そのような、口の聞きかかたしてもいいと思っているのか?」
黒ずくめの男は、ローラ姫の刃向う口調にいらだちを覚えた。
『今、おまえの国を支配しているのは、闇の帝国なのだぞ』
ローラ姫が、恐怖で身体を強張らせると、黒ずくめの男は、満足そうに鼻で笑った。
『この計画を成功させる為に、十年もの月日を費やしたのだ。
今更失敗など許されない』
エレメンタル大陸には、五つの国が存在した。
水、風、木、地、火の五つである。
水は、火を消し、火は、水を消す。
水と火の国がくっ付けば、王族属性魔法の脅威を減らせると、闇の帝国は企んだのだ。
ローラ姫は、風の国の姫ではなく、火の国の姫だった。
火の国の守護魔神を闇の帝国に奪われて、仕方なく風の国の姫の身代わりを演じていたのだ。
逆に風とくっ付いてしまえば、効力を増してしまう。
闇の帝国は、エレメンタル大陸の五つの国が強化されてしまうのを恐れているのだ。
ローラ姫は、祈りを捧げる事しか出来なかった。
ローラ姫と闇の帝国の男が話をしている頃。
城のバルコニーに出て、夜風にあたっている少年がいた。
少年は、セイハと同じ位の年頃だった。
髪は、頭巾をしていてわからないが、目は、海を映したかのような青色だ。
なによりも目を引くのは、少年の恰好だった。
シルクの服に青いマントをなびかせている。
誰が見ても高級品だと人目でわかる恰好をしている。
彼は、セイハが、水の国の王子の身代わりを頼んだ少年ジョンだった。
ジョンは、夜空を見上げた。
星が瞬き、まるで明日の結婚式を祝福しているように感じられた。
帰ってこなかった、セイハを恨む気持ちは、ジョンにはなかった。
ただ、自分を拾ってくれて、役割を与えてくれて、一番の友人だったセイハが、幸せに生きていてくれればいいと、心の底から思った。
真珠も髪を隠して、ごまかしてきた。
けれども、ジョンは、本当の王子ではないので、どうしても水の力を扱うことが出来なかった。
水の国の魔神を王子が使役するのが、結婚式の儀式の目玉だったのだ。
しかし、ジョンには、水の国の魔神を使役する事が出来ないのである。
使役出来ない事が、発覚してしまえば、ジョンが王子ではないことがばれてしまう。
本物の王子が居ないことを知れば、王国は大騒ぎとなり、滅んでしまうかもしれない。
ジョンは、不安な気持ちで一杯だった。
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