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盗賊編 第四章 親分とトタプの関係
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二台の馬車が砂漠を走る。
「近くに村があるはずですわ。少し休んでいきましょう」
エコシェニザーの馬車に同行していたロティーラは外を眺めた。
「村?」
外の様子を見て、ロティーラは訝しんだ。
近くによると、村は焼けた土地と化していた。
村人の気配を感じられない。
ロティーラ達は馬車を止めた。
「探索してくるから、待っていろ」
「わたしも行く」
ガベルの後にロティーラも続く。
「私も行きます」
「姫様危険です」
「大丈夫。ロティーラ達が守ってくれますわ」
お転婆なエコシェニザーもロティーラの後を追って村へと行ってしまった。
残された人達は仕方がなく留守番することにした。
村の中は、煙の臭いが漂っていた。
「あまり時間が立っていないようだな」
ガベルが調べている最中、エコシェニザーは村の悲惨さを目のあたりにして、強張った表情を浮かべていた。
「あれ、何だろう?ほら、ひらひらしているの?」
近くで見ると、どこかの国の紋章だった。
力強い火が闇に溶け込んでいるような、不安をあおる紋章だ。
「火の国の紋章だ。なぜここに」
エコシェニザーは、顔を抑えて泣き出してしまった。
「私の国が治めている村が、火の国に襲われてしまった」
「わたし。火の国に謝ってもらってくる。村を焼き払うなんてひどすぎるよ」
ロティーラは、盗賊だけれども、人殺しだけはしたことがなかった。
「駄目だ。今から追いかけても、奴らにはたどり着けない」
「どうしてよ。まだ煙が残って居るのに!」
「駄目だ。やつらは、闇に溶け込めるんだ」
「……どうして親分は、火の国の事にくわしいの?」
「馬車に帰ったら話す」
それだけ告げるとガベルは馬車のある方へと歩いて行った。
ロティーラは泣き出したいのを我慢しながら、エコシェニザーを背負って歩き出した。
村を出た後、親分の馬車へ乗り込んだ。
トタプの合図で、馬車が動き出す。
「おれが、海賊だったことは、知っているよな。
おれは、海賊時代。助け出したラルセという女性と恋に落ちて結婚した。
トタプが生まれて、幸せな暮らしをしていた。
ところがある晩。
大きな嵐に船が飲み込まれてしまった。
船の周りは大波が叩きつけてきて、甲板にも水が入ってくる状態だった。
荒れた波のせいで、船は大きく揺れた。
空は闇に覆い尽くされてしまって、真っ暗で、激しい風と雨が吹き荒れていた。
その時、闇の中から明かりが見えた。
おれ達は、船かと思って大声を出した。
だんだん明かりが多くなってきて、あまりの多さに不自然さを感じた。
俺達が、不安を感じ始めた頃、明かりがものすごい速さで、船にあたった。
明かりがぶつかった瞬間、船から炎は上がった。
甲板はあっと言う間に、火の海と化した。
火の海に巻き込まれて仲間達が、次々と焼け死んだ。
おれが助けに行こうとしたら、ラルセに引き止められた。
『今から助けに行っても、あなたが死ぬだけです。
あなたは、生きているわたし達の子供を死なせないでください』
ラルセは、赤ん坊であるトタプを抱きしめていた。
生き残った海賊仲間は、謎の炎と戦っていた。
『駄目だ。おれも仲間と共に戦ってくる。
ラルセはトタプを連れてここから離れろ。危険すぎる』
『この戦いは、わたしたちが負けます。
どうか生き残って、今度会った時こそ、倒して下さい。
わたしたちの無念を晴らせるのは、あなたとトタプだけです。
行ってください』
『まだ、終わったわけじゃないだろう!』
船は、三分の二以上燃え上がっており、無事なのは、おれ達がいる場所だけだった。
「近くに村があるはずですわ。少し休んでいきましょう」
エコシェニザーの馬車に同行していたロティーラは外を眺めた。
「村?」
外の様子を見て、ロティーラは訝しんだ。
近くによると、村は焼けた土地と化していた。
村人の気配を感じられない。
ロティーラ達は馬車を止めた。
「探索してくるから、待っていろ」
「わたしも行く」
ガベルの後にロティーラも続く。
「私も行きます」
「姫様危険です」
「大丈夫。ロティーラ達が守ってくれますわ」
お転婆なエコシェニザーもロティーラの後を追って村へと行ってしまった。
残された人達は仕方がなく留守番することにした。
村の中は、煙の臭いが漂っていた。
「あまり時間が立っていないようだな」
ガベルが調べている最中、エコシェニザーは村の悲惨さを目のあたりにして、強張った表情を浮かべていた。
「あれ、何だろう?ほら、ひらひらしているの?」
近くで見ると、どこかの国の紋章だった。
力強い火が闇に溶け込んでいるような、不安をあおる紋章だ。
「火の国の紋章だ。なぜここに」
エコシェニザーは、顔を抑えて泣き出してしまった。
「私の国が治めている村が、火の国に襲われてしまった」
「わたし。火の国に謝ってもらってくる。村を焼き払うなんてひどすぎるよ」
ロティーラは、盗賊だけれども、人殺しだけはしたことがなかった。
「駄目だ。今から追いかけても、奴らにはたどり着けない」
「どうしてよ。まだ煙が残って居るのに!」
「駄目だ。やつらは、闇に溶け込めるんだ」
「……どうして親分は、火の国の事にくわしいの?」
「馬車に帰ったら話す」
それだけ告げるとガベルは馬車のある方へと歩いて行った。
ロティーラは泣き出したいのを我慢しながら、エコシェニザーを背負って歩き出した。
村を出た後、親分の馬車へ乗り込んだ。
トタプの合図で、馬車が動き出す。
「おれが、海賊だったことは、知っているよな。
おれは、海賊時代。助け出したラルセという女性と恋に落ちて結婚した。
トタプが生まれて、幸せな暮らしをしていた。
ところがある晩。
大きな嵐に船が飲み込まれてしまった。
船の周りは大波が叩きつけてきて、甲板にも水が入ってくる状態だった。
荒れた波のせいで、船は大きく揺れた。
空は闇に覆い尽くされてしまって、真っ暗で、激しい風と雨が吹き荒れていた。
その時、闇の中から明かりが見えた。
おれ達は、船かと思って大声を出した。
だんだん明かりが多くなってきて、あまりの多さに不自然さを感じた。
俺達が、不安を感じ始めた頃、明かりがものすごい速さで、船にあたった。
明かりがぶつかった瞬間、船から炎は上がった。
甲板はあっと言う間に、火の海と化した。
火の海に巻き込まれて仲間達が、次々と焼け死んだ。
おれが助けに行こうとしたら、ラルセに引き止められた。
『今から助けに行っても、あなたが死ぬだけです。
あなたは、生きているわたし達の子供を死なせないでください』
ラルセは、赤ん坊であるトタプを抱きしめていた。
生き残った海賊仲間は、謎の炎と戦っていた。
『駄目だ。おれも仲間と共に戦ってくる。
ラルセはトタプを連れてここから離れろ。危険すぎる』
『この戦いは、わたしたちが負けます。
どうか生き残って、今度会った時こそ、倒して下さい。
わたしたちの無念を晴らせるのは、あなたとトタプだけです。
行ってください』
『まだ、終わったわけじゃないだろう!』
船は、三分の二以上燃え上がっており、無事なのは、おれ達がいる場所だけだった。
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