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盗賊編 第三章 武器を持ち込めない町。ビテーイ

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 ロティーラ達は、五日近く、砂漠の中を馬車で移動していた。

「いつになったら、次の町へとだ取りつくのだ」

 セイハがしびれを切らして、馬車から身を乗り出した。
 外を見ると、遠目に高い塀に囲まれた地域が見える。

「近くに町があるのかもしれない」

 セイハの大声に促されて、ラクダの速度を上げた。
 近づくと、土で固められた壁だった。
 叩いても壊れないくらい頑丈だ。

「そこで何をしている?」

 見張り兵と思われる男性が話しかけて来た。

「すまないが、この近くに町はないか?」
「町なら、この塀の向こうだ。武器を置いて中に入りたまえ」
「どうして、武器を持ち込めないのですか?」
「この町は平和主義で、武器の持ち込みは禁じられている。

 心配せずとも、町を出て行くときには、取り上げた武器は返却する」
 ガベル達の馬車は、門へと案内された。
 門番の内の一人が、武器を取り上げ、もう一人は、見張りを続けていた。
 武器を門番に預けて、許可のとれたガベル達は、町へと入る。
 目の前には、大きな城が立っている。
 今回の狙いは、城の宝に決定だ。
 だが、城以外の建物は、廃墟のような、朽ち果てた建物ばかりだ。
 ラクダが突然立ち止まったので、怪しむと、馬車を止めるように、豪華な服装の男性が道を塞いでいた。

「旅の御方ですな?どうぞ、城へと招待させてください」
「いいだろう」

 豪華な服装の小太りな男性を馬車に乗せたガベル達は城を目指した。

「親分。探索して着てもいいですか?」
「おう、行ってこい」
「わたしも行く」

 セイハの提案に乗ったロティーラも馬車を降りた。
 ガベル達を乗せた馬車が走り去ったのを見送った後、ロティーラ達は、廃墟の方へと足を向けた。
 しばらく、廃墟を探索していると、ボロ布を纏った貧しそうな男の子とすれ違った。
 男の子は、すれ違いざまに、腰に下げた袋を盗んでいった。

「袋を盗まれた!」

 セイハとロティーラは、逃げ去った男の子を追いかけた。
 ロティーラ達はすぐに、男の子に追いつき、盗まれた袋を取り戻した。
 袋を取られて男の子は泣きそうな顔をしている。
 廃墟の影から、男の子の仲間であろう、同じような服装をした子供達が姿を現した。

「男の子を解放して、金目の物を置いて行け。でないと痛い目見るぞ」

 男の子の仲間は、ロティーラ達に刃物を突きつけた。
 セイハは、取り戻した袋の中から、短剣を取り出した。

「な、なぜ、武器を持っているんだ」

 刃物を構えたまま、男の子の仲間達は動揺した。

「ただ、申請し忘れただけだよ」

 剣呑な雰囲気になるセイハ達。
 ロティーラは、捕えていた男の子の手を離した。

「え?」

 拍子抜けした表情を浮かべる男の子。

「袋は取り戻せたのだから、いいじゃない。

 それに、盗賊のわたし達に、彼らを責める資格はないわ」
 ロティーラの言葉で冷静さを取り戻したセイハは、短剣を収めた。

「……おまえ達。盗賊なのか?」
「そうよ」

 未だ泣き出しそうな顔をしている男の子が、ロティーラの服の裾を掴んで見上げた。

「お願い。手伝ってほしいことがあるんだ!」
「おい!」

 男の子の仲間達に動揺が走る。

「なにか、訳有の様ね。いいわ。わたし達に出来る事ならやりましょう」
「おい、ロティーラ。安請け合いするなよ」
「いいじゃない。どうせ、暇を持て余していたんだから」
「それは、そうだけれども」

 セイハは、仕方がないなとあきれた。
 ロティーラ達は、何とか屋根はあるけれどもとても家とは呼べないような場所へと連れてこられた。

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