ギゼル

覗見ユニシア

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Soul 0 ギゼル

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 これから話すのは天使と悪魔と霊感少女の物語。

 そして過ちとまちがいを繰り返した悲恋の話でもある。




 夏。セミの声が森に響き渡る。森の中にある神社に小さな女の子がいた。隣には縁側に腰掛けた母親がいる。女の子は母親が隣にいる事が嬉しいらしく、いつもは無表情な顔がにやけてしまっている。母親も優しい視線で見つめた。

「あなたは、皆と遊ばないの」

 母親が女の子から視線をはずして庭を眺めた。庭には、女の子と同い年位の子供達が楽しく遊んでいる。女の子は母親の視線が他に向いてしまったので、悲しくなった。だからわざと機嫌が悪くなったのが判る様に拗ねて見せた。

「あの子達の遊び、天使が悪魔をやっつける話。悪魔ばかり悪役でかわいそう」
「そうね。でも悪魔は霊魂を地獄に連れて行って、いっぱいつらい仕事をさせるのよ」
「でもそれは生きている間や霊になった時、悪さをした人や、人を傷つけた人間だけ。悪い事をしたのに、お仕置きされて何がいけないの」

 母親は息を飲んだ。この子の言っている事はもっともだ。だけど・・・。

「この神社では悪魔が悪役なのは当り前のことで、ご先祖様もそうやって多くの人と霊を守ってきたの。だから納得して」
「でも悪魔は悪くない」

 叫びだしそうになる女の子を力強く抱きしめた。女の子は母親の身体が震えているのに気づいて、恐る恐る身体を抱きしめ返した。

「あなたの意見はまちがってはいないわ。でもその考えはここ(神社)では許されない事なの。だけど・・・」

 そこで母親はいったん言葉を切り懐かしいそうに女の子を見つめた。

「私もあなたの意見に賛成よ。悪魔だから邪険な者ばかりではないわ。・・・むしろ人を命がけで助けてくれる者もいるわ」
「!」
「私は悪魔に辛い目に遭わされた。でも悪魔のおかげであの人と結婚できたし、あなた達を産む事も出来た」

母親は女の子を胸に押し付けた。

 ドクン。ドクン。

 規則正しく心臓の音が聞こえる。母親が生きている証だ。


「彼(悪魔)はここにいるわ」


 母親が呟いた言葉の意味が判らなかった。

 神社は結界が張られており、悪魔が入って来る事などできなかったから。


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