魔宝石 

覗見ユニシア

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≪ホーリーの鏡≫編

✡魔法世界再び✡

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「いて」

 検事が、大声を出した。

「誰かいるのか?」

 わたし達の目の前には、ハヤセの家があった。
 玄関ドアが開かれる。

「ミト?」

 ハヤセが驚いた表情をしていた。

「ここは、魔法世界?」
「そうだけど、なんで来たんだ?」

 ハヤセの表情が硬い。
 それもそうだろう。ハヤセは、わたしを好きなふりをしてまで、わたしを人間世界に帰してくれたのに、わたしは、ハヤセの努力を無断してしまったのだから。

「わたしは、友達を助けに来たの」
「友達?そいつらも」
「そうだよ」

 ハヤセは、わたしの後ろにいる二人を凝視した。

「とりあえず、家に入れよ。立ち話もなんだし」

 ハヤセに促されて、わたし達は家におじゃました。

「あのさ?」

 検事がわたしの肩を叩いた。

「知り合いか?」
「うん。いちおうね」
「なんて、言っているのだ?」

 隆の疑問に、わたしは、重大な事を思い出した。
 この魔法世界と人間世界は、言語が異なるのだ。
 わたしは、ハヤセからもらったルビーのペンダントのお蔭で、話が通じるが、他の二人は違う。
 これは、大きな誤算だった。
 とりあえず、わたしは、ハヤセにいままでの事情を説明した。

「おそらく、舞とか言う女の子を攫ったやつは、魔界のやつだな」
「どうして、わかるの?」
「感だな」
(感って)

 わたしが呆れていると、家のチャイムが鳴った。

「あ、来た。来た」
「ねえ、まさかレインじゃないわよね」

 レインとは、ハヤセの恋人?である。

「違うって」

 開いた玄関口に居たのは、セールだった。

「ひさしぶり。ハヤセ。ミト。この人達は」
「実は」

 セールにも、ハヤセと同様の説明をした。

「なるほど、そういうことか」
「とりあえず、その服だと、目立つから、適当に着替えてくれ」

 ハヤセは、わたしが、セールに事情を説明している間に服を用意して置いてくれた。
 わたしは、言葉の通じない二人にも、服を着替えるようにうながした。

「あれ、シャイワーブズイは?」
「外で寝ているよ」
「そうなんだ」
「ミト。ロイコーンイより託された笛は持っているか?」
「う、うん」

 わたしは、お守り袋の中から、笛を取り出した。
 セールが、笛に手をかざし、何やら呪文を唱えた。

「笛を吹いてごらん」
「え?」
「いいから」

 セールに促されて、わたしは、笛を吹いた。
 辺り一面に音が響き渡る。
 セールが、玄関の扉を開けて、空を見上げた。

「来たね」

 わたしも上空を見上げるとそこには……。

「ローイ!」

 なんと、ローイが、空を駆け抜けていた。
 黄金色のたてがみが、風に揺れている。

「ローイ!」

 わたしは、玄関から外へと飛び出した。
 もう二度と会えないと思っていたローイの姿が目の前にある。
 わたしは、感激して、ローイの方へと叫んでいた。
 ローイがわたしの声に気付いて微笑む。
 わたしの方に降りてきたローイを力強く抱きしめた。
 ふわふわ。さらさらの毛並。
 なつかしい体温。
 全てが愛おしくて、心がいっぱいになった。

「ローイ」
「ミト」

 ローイもわたしに甘えて頬ずりした。

「ローイ。会いたかったよ」
「わたしも。ミト」

 わたし達は、しばらくの間、再会の抱擁を交わしていた。

「ローイ死んだのではなかったの?」
「ミト。心配をかけてごめんなさい。わたしは、確かに一度死んだわ。でも、セールの魔法のお蔭で、再度自分を具現化できるようになったの」

 セールを見ると、生温かい眼差しをわたし達に向けていた。

「セール。ありがとう」

「いや。もともと、シャブイの為に開発した魔法だったのだけど、役に立ったみたいでよかったよ」 

 シャブイとは、シャイワーブズイの愛称だろう。
 わたしにとっての存在が、ローイの様に、セールにとっての存在が、シャブイなのだろう。

「さあ、ルンデ城へ行こう」

 わたしと隆が、ローイに乗って、セールと検事がシャイワーブズイに乗ることになった。

「気負付けろよ」

 ハヤセの見送りの言葉を背にして、わたし達は旅たった。
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