上 下
11 / 23

タニの能力

しおりを挟む
「物理的な破壊が不可能な以上、目的を達成しなければならない。何か心当たりはないか?」
「ギルドマスターがギルド職員になって借金を返済しろって言っていた気がする」  
「それだ!借金を返済すればいい!」
「ギルド職員の給料って低賃金で返済するの時間がかりすぎなんだよ。一気に金を稼ぐ方法ってねーのか?」
「んー。ギャンブルは損した時に借金が増えるリスクがあるからオススメしない。無難に冒険者としてギルドからクエストを受けてこなした方がいいだろうな。なんなら勇者とギルドを組めばいい。チートキャラだから強いモンスター退治ミッションも楽にこなせるぞ」

「ギルド職員より冒険者の方が金になるってぜってー嘘だ!だって俺回復薬が足りなすぎて課金しちまったんだもん」

「時間経過と共にオート回復機能もあるし自室で寝ると全回復するから基本的にこのゲームでは回復には困らないはずなんだけどな」

「いやボス討伐戦だと百人とか余裕でプレイヤーが集まるだろう。百人分のプレイヤーの回復をしていたら一回で百個回復アイテムが消費されるのなんて日常茶飯事だぜ」
「一度に百人も回復させられるのか!それはある意味すごいな」

「すごくなんかないぜ。回復特化型だから攻撃技取得してないし、回復薬がなくなったら、肉の壁か囮にしか使えないしさ」

「君不憫すぎるよ。せめて回復魔法を覚えればよかったのに!そしたら回復アイテムの消費が減らせたよ!」
「何を言っているんだ?魔力はパーティーメンバーに譲るものだろう?」
「君もしかしてほとんどのプレイヤーが取得しない魔力譲歩の特殊スキルまでもってんの?」
「体力譲歩も持ってんぞ」
「あきれた。ここまで他人に尽くしてどうするの?」


あの頃の自分は誰かに必要とされたかった。
だから他人が一番喜ぶ選択をしたはずだった。
けれど実際は都合よく使い捨てされ、借金をしてしまい両親にも迷惑をかけてしまった。

悔やんでも悔やみきれない。


「ところで金谷君は現実では童貞?処女?」
「童貞で悪いかよ!」

嫌みか!
どうせ彼女いない歴イコール年齢の男ですよーだ。 
あんたは大人の魅力があってモテそうだよな。

不貞腐れているのを察知したのだろうか。なだめるような声音で解説される。
  
「これは大事な質問なんだよ。現実世界とゲームの世界の中で身体的な変化が大きすぎると現実との誤差が発生し、元に戻れなくなる可能があるんだよ」

「えっ!それってやべーじゃん」

「そう、ヤバい状態なんだ。だから❰ワンダーギルド❱内での童貞卒業又は処女喪失は禁止だ」 

「まじかーーー!」


 どうやらゲームの世界でもセックスはできないそうです。
しくしく。 


「とにかく現状を君に報告したくて勇者にここまで連れてくるように命じた。状況は理解して貰えただろうか?」

「理解しがたい事態だが、辻褄もあっているしあんたが俺に嘘をつくメリットが一つもないから信じるよ」

「ありがとう。極力勇者を通して支援するよ」


支援?借金増殖の間違いじゃねーの?
先行きが心配すぎる。
しおりを挟む

処理中です...