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しおりを挟む幼い日。
連れて来られたのは、薔薇の庭園が綺麗なお屋敷だった。
「今日からここでわしと一緒に庭師として仕えるのじや」
お爺さんに庭師として鍛えて貰う日々。
沢山の薔薇花に囲まれて、まるで童話のお姫様になった気分だった。
あの子の存在を知るまでは……
薔薇庭園に面した窓に3時のおやつの時間帯。
金色の髪をした白いワンピースの少女が、必ず通りかかる。
土いじりで汚した私を見向きもせずに、背筋を伸ばして優雅に歩き去る。
どんなに季節がめぐっても、お嬢様と私との接点は交わらない。
私は3時のおやつの時間のお嬢様しか知らなかったし、お嬢様は私の存在すら気に止めなかっただろう。
何年も何年も季節が巡って、やがて成長したお嬢様は私の前に姿を表さなくなった。
お嬢様が居なくなって、私がお姫様になれると思ったのに、主を失った屋敷は、寂しくて寂しくて、気が付けば、師匠のお爺さんもこの地を去っており、私だけが薔薇庭園に取り残されていた。
寂しさを紛らわす為に、新しいお嬢様を雇った。
だけど、どのお嬢様も私の理想ではなくて、何人解雇したかわからない。
今回は一番理想に近いと思ったのに、私のことを気にかけたりしなければ、もう少し雇ってあげても良かったのに、ああ、私は彼女をいや彼を気に入っていたのかも知れない。
私に何度も話しかけてくれた彼。
汚れた私に触れてくれた彼。
待って!
彼はお嬢様じゃない!
だから彼を殺さないで下さい!
今まで私が愛情を込めて育てた薔薇は私の願いならば何でもかなえてくれた。
だから今回もきっとかなえてくれる。
きっと!
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