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第59話 結婚記念日
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とても照れくさそうに、しかし嬉しそうに、ブレイズは話した。
「実は今度の祝日、ミモザとやれてなかった『結婚式』ってやつをやることになってな。まあ俺も柄じゃねえとは思ったんだが、こいつがどうしてもって言うもんで」
「まあ! 二人で決めたことでしょ? ブレイズって昔からそういうとこあるわよね~」
「ちょちょ、抑えて抑えて! 式の前に喧嘩とかなったらシャレになりませんよ!」
「うふふっ。冗談よ冗談、ありがとうトベさん。式は身内だけで、できるだけ簡素なものにしようと思ってるの。トベさんとアカリちゃんも来てくれるわよね?」
「もちろんですよ! あ、その式、僕たちのチャンネルで配信させていただいてもいいですかね? 視聴者さんたちにもこの件ではいろいろとご心配いただいて、なにかとご協力いただきましたので」
「はい。トベさんと繋がることができたのも、特定班のみなさまのおかげです。ぜひチャンネルの視聴者さんたちもご一緒に、良い式にしていけたら」
《お~い、特定班のみんな~! 呼ばれてるぞ~!》
《いいよいいよ、俺たち別に見返りを期待してやったわけじゃねえから》
《二人が幸せならそれでいいよな》
《かっけぇwwww》
《すげぇ、ネット民の鑑だ……!》
「おふたりとも、ご結婚ほんとうにおめでとうございますっ! 式がとってもとっても楽しみですっ!」
「おう。アカリ、お前も早く良い相手見つけろよ」
「ブレイズ! そういうのがダメって言ってるの!」
「はわわっ! よ、よい相手……」
「こらこら! またプロデューサーの目を盗んで、アカリに変なこと吹き込んでるでしょ! アカリは配信者としてトップを目指してるんですから、そんな余裕はありません!」
「ははっ、おっかないプロデューサーさんが出てきたから、俺たちは退散するか」
「ブレイズ~? 元はといえばあなたが……!」
これから夫婦になる二人の心温まる掛け合いを、僕たちは微笑ましく見守った。
今度の祝日っていうと五日後か。楽しみだな~。ブレイズとミモザさんが結婚なんて、本当にめでたい日になりそうだ。
そうして五日後、結婚式の日。
僕たちは式場となった教会で配信をしながら、純白の華やかなタキシードとウエディングドレスに身を包んだ、ブレイズとミモザさんを見守っていた。
式場では他にゼインさん、ブレイズやミモザさんの身内の方々が、二人の新たな門出を見守っている。
《ううっ、ダメだ俺、こういうの泣けてきちゃって……》
《ブレイズとミモザさんが歩んできた、二十年分の苦労が詰まってるからな……》
《でも苦労してきた分、二人はきっと幸せになれると思うよ。だって会えなかった数だけ、相手が自分にとってどれほど大切な存在だったのか、二人は気づいてきたんだから》
ふと横を見ると、アカリは涙で床が海になってしまうんじゃないかというくらい号泣していた。
「ふぇぇええぇえん、ふぐっ。ミモザさん、ほんとにほんとにお綺麗ですね……!」
「うん。純白のウエディングドレスがとても似合ってる。ブレイズさんもいつもとは全然違って、なんだか今日は二人とも別人みたいだね」
牧師さんが誓いの言葉を投げかけると、二人は互いに顔を見合わせて、とても優しく、穏やかな表情で頷いた。
「今日が、俺とお前の結婚記念日だ。お前と二人でこの日を迎えられたことを、俺は生涯忘れることはない」
この二十年間の月日を思い出しているのか、ミモザさんは涙をこらえながら何度も頷いた。
「わたしも……。ありがとう……ブレイズ」
イーストエリアの竜とまで呼ばれた天才剣士が、今日だけは剣ではなく指輪を握っている。
誰よりも愛しあう二人が指輪を交換すると、まるでこれからの門出を祝福するように、指輪が光った。
それはこの世界のどんな絶景よりも感動を覚える、とても美しい光景だった。
そのときの僕には、思いもよらなかったんだ。
二人の門出を祝う、なによりも輝かしい日になるはずだった結婚記念日が、まさか花嫁の血に染まる日になるなんて……。
教会の扉が突然開くと、その向こうからなにかが放たれた!
それは弾丸のような速さで空中を疾走すると、そのまま幸福の絶頂にいた花嫁の腹部に突き刺さった!
純白のドレスは鮮血で真っ赤に染まり、花嫁はその場に力なく倒れた……。
「ミモザァアァアアァアァアアッッッッ!」
「実は今度の祝日、ミモザとやれてなかった『結婚式』ってやつをやることになってな。まあ俺も柄じゃねえとは思ったんだが、こいつがどうしてもって言うもんで」
「まあ! 二人で決めたことでしょ? ブレイズって昔からそういうとこあるわよね~」
「ちょちょ、抑えて抑えて! 式の前に喧嘩とかなったらシャレになりませんよ!」
「うふふっ。冗談よ冗談、ありがとうトベさん。式は身内だけで、できるだけ簡素なものにしようと思ってるの。トベさんとアカリちゃんも来てくれるわよね?」
「もちろんですよ! あ、その式、僕たちのチャンネルで配信させていただいてもいいですかね? 視聴者さんたちにもこの件ではいろいろとご心配いただいて、なにかとご協力いただきましたので」
「はい。トベさんと繋がることができたのも、特定班のみなさまのおかげです。ぜひチャンネルの視聴者さんたちもご一緒に、良い式にしていけたら」
《お~い、特定班のみんな~! 呼ばれてるぞ~!》
《いいよいいよ、俺たち別に見返りを期待してやったわけじゃねえから》
《二人が幸せならそれでいいよな》
《かっけぇwwww》
《すげぇ、ネット民の鑑だ……!》
「おふたりとも、ご結婚ほんとうにおめでとうございますっ! 式がとってもとっても楽しみですっ!」
「おう。アカリ、お前も早く良い相手見つけろよ」
「ブレイズ! そういうのがダメって言ってるの!」
「はわわっ! よ、よい相手……」
「こらこら! またプロデューサーの目を盗んで、アカリに変なこと吹き込んでるでしょ! アカリは配信者としてトップを目指してるんですから、そんな余裕はありません!」
「ははっ、おっかないプロデューサーさんが出てきたから、俺たちは退散するか」
「ブレイズ~? 元はといえばあなたが……!」
これから夫婦になる二人の心温まる掛け合いを、僕たちは微笑ましく見守った。
今度の祝日っていうと五日後か。楽しみだな~。ブレイズとミモザさんが結婚なんて、本当にめでたい日になりそうだ。
そうして五日後、結婚式の日。
僕たちは式場となった教会で配信をしながら、純白の華やかなタキシードとウエディングドレスに身を包んだ、ブレイズとミモザさんを見守っていた。
式場では他にゼインさん、ブレイズやミモザさんの身内の方々が、二人の新たな門出を見守っている。
《ううっ、ダメだ俺、こういうの泣けてきちゃって……》
《ブレイズとミモザさんが歩んできた、二十年分の苦労が詰まってるからな……》
《でも苦労してきた分、二人はきっと幸せになれると思うよ。だって会えなかった数だけ、相手が自分にとってどれほど大切な存在だったのか、二人は気づいてきたんだから》
ふと横を見ると、アカリは涙で床が海になってしまうんじゃないかというくらい号泣していた。
「ふぇぇええぇえん、ふぐっ。ミモザさん、ほんとにほんとにお綺麗ですね……!」
「うん。純白のウエディングドレスがとても似合ってる。ブレイズさんもいつもとは全然違って、なんだか今日は二人とも別人みたいだね」
牧師さんが誓いの言葉を投げかけると、二人は互いに顔を見合わせて、とても優しく、穏やかな表情で頷いた。
「今日が、俺とお前の結婚記念日だ。お前と二人でこの日を迎えられたことを、俺は生涯忘れることはない」
この二十年間の月日を思い出しているのか、ミモザさんは涙をこらえながら何度も頷いた。
「わたしも……。ありがとう……ブレイズ」
イーストエリアの竜とまで呼ばれた天才剣士が、今日だけは剣ではなく指輪を握っている。
誰よりも愛しあう二人が指輪を交換すると、まるでこれからの門出を祝福するように、指輪が光った。
それはこの世界のどんな絶景よりも感動を覚える、とても美しい光景だった。
そのときの僕には、思いもよらなかったんだ。
二人の門出を祝う、なによりも輝かしい日になるはずだった結婚記念日が、まさか花嫁の血に染まる日になるなんて……。
教会の扉が突然開くと、その向こうからなにかが放たれた!
それは弾丸のような速さで空中を疾走すると、そのまま幸福の絶頂にいた花嫁の腹部に突き刺さった!
純白のドレスは鮮血で真っ赤に染まり、花嫁はその場に力なく倒れた……。
「ミモザァアァアアァアァアアッッッッ!」
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