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第53話 絶対領域

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 道場を出ると、ブレイズは僕たちを夜のフィールドへと連れ出した。

 頼りになる明かりはといえば、キングライブスの撮影用のライトだけで、辺りは漆黒の闇に包まれている。

 夜は日中より危険なモンスターが出没するため、いままで外には出ないようにしていたのだけど、まさかこんなタイミングで出ることになるとは……。

 こんな夜中に外に出て一体なにをしようというのか、僕はブレイズに疑問をぶつけた。

「あの、ブレイズさん。ここで一体なにを?」

「属性についてのお勉強の次は、実践練習ってやつだ。いいか、いまから見せるのが俺の最強の剣技、『絶対領域』。手取り足取り教える気はねぇ、実際に見て覚えろ」

 絶対領域……それがブレイズの最強の剣技……。

《なんかめちゃくちゃ強そうな技だwwww》

《アカリちゃん大丈夫かな? 覚えられるかな?》

 撮影用のライトに照らされる中、ブレイズが集中して刃気を溜め始めると、その周囲を丸い大きな半円状のオーラが覆っていく!

「そこにいるんだろお相手さん! ビビってねぇでさっさと出てきやがれッッッ!」

 ブレイズが叫ぶと、闇の中からうなり声をあげながら、モンスターの群れが現れた!
 
 あれは……ナイトウルフ……! 夜になり昼間とは比べものにならないほど、獰猛で狂暴になったモンスターだ! そのBPは昼間のおよそ十倍と、戦闘能力が飛躍的に上昇している。

 闇に紛れたナイトウルフに、僕とアカリはまったく気づけなかったのに、ブレイズは気づいていたのか……!

 ざっと三十匹はいようかというその数、つい先日チート級の強さを見せつけたアカリといえども、すべてを一撃で倒すことは不可能だろう。

 僕とアカリが急いでブレイズの後ろに回ると、その動きを追うようにして、ナイトウルフの群れが一気にブレイズに襲いかかってきた!

《うわぁあぁあああぁ! どうすんだブレイズ~!》

《死んだ! 絶対死んだぁああぁあぁああぁああ!》

《いくらブレイズさんでも、これだけの数をいっぺんにはぁああぁああぁあ!》

 阿鼻叫喚と化すコメントとは裏腹に、落ち着き払った様子でブレイズは剣を構えた。薄闇の中、その眼光がひときわ鋭く光る!

「この不可侵の『領域』に足を踏み入れることは、何人たりとも不可能ッッッ! 入れるもんなら入ってみやがれモンスターァアァアアッッッッ!」

 ナイトウルフの群れがブレイズの半円状のオーラに触れた瞬間、まるで聖域への侵入者を拒むかのように、強烈な斬撃を浴びてすべて弾き飛ばされた!

「グォオオオォオオオォオオオッッッッッッ!」

 それも一方向ではなく、ブレイズの絶対領域はオーラに触れたを弾き、同時に致命的なダメージを与え、あれほどいたナイトウルフの群れは一瞬にして壊滅してしまった!

《な、なんじゃこりゃああぁあぁあぁああッッッ!》

《ブレイズヤバすぎワロタwwww》

《要するに、あの半円状のオーラに触れた敵は、すべて返しの斬撃を浴びて弾き飛ばされるわけか!》

《いや、それって控えめに言って『無敵状態』ってことじゃね?wwww》

《すべての攻撃を受け付けない無敵状態草》

《こんなんどうやって攻略すればいいのよwwww》

 ブレイズのあまりの強さに驚愕し、言葉を失う僕たち。

「いまのが俺の最強の剣技、絶対領域だ。ジイサンも修行のとき、敵との『間合い』が一番大事だとしつこいほど言ってたろ? ありゃジイサンの口癖みたいなもんだが、あながち間違っちゃいねぇ。なぜなら、その間合いを極めた技こそが、俺のこの絶対領域だからだ」

 間合いを極めた……。なるほど、この領域により敵がそれ以上近づけないからこそ、ブレイズは常に敵との間合いを保って、戦闘を有利に進めていけるのか……!

 モンスターとの戦闘が終わり、剣を納めるのかと思いきや、剣を握ったままブレイズは言った。

「さあアカリ、?」
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