上 下
45 / 61

第45話 真相

しおりを挟む
 優勝者インタビューのさなか、僕の放った思いもよらぬ『告発』に、会場全体がざわめく。

「裏……だって……?」

「この町一番のテンペン道場が、一体なにをしたっていうんだ?」

「でも、あの純真無垢なアカリちゃんを育ててる人が、変なウソつくとも思えないよね」

 僕の言葉を聞き、テンペンが顔を真っ赤に染め、激昂して叫んだ。

「なんだと貴様……? 一体なんの根拠があってそのようなことを申しておる! これは立派な名誉毀損だぞ!」

 テンペンの怒りはまったく意に介さず、説明を続ける僕。

「みなさん! テンペン道場は武道会で好成績を出し続けるため、いくつもの不正をしていました! 有力な出場者への脅迫! 禁止されている武器の使用! さきほど戦っていたハラキリ選手も、本来はテンペン道場の選手などではなく、大金で雇われた刺客です!」

 自身の不正行為を明るみに出され、怒りが頂点に達し、わなわなと震えだすテンペン。

「貴様……! みなさん、こやつの発言はすべてデタラメ! 捏造です! そこまで言うのであれば『証拠』を見せてみろ! まあ、そもそもがデタラメなのだから、そんなもの存在するはずがないが!」

 証拠など出るはずもないと高をくくり、不敵に笑うテンペン。

 しかし、ウォルカさんの存在を思い出すと、露骨に表情が曇った。

「ウォルカ……! ま、まさか貴様……!」

 無言で頷くと、僕にすべての『証拠』を渡すウォルカさん。

 すべての罪を白日の下にさらす前に、僕は今回自分が立てた『作戦』を振り返った。

 それは、ミモザさん発見時のこと。

 ミモザさんとの通話を終え、テンペンの不正を確信した僕は、まず師範代のウォルカさんに会いにいった。

 稽古の件でテンペンへの不満を募らせていたウォルカさんであれば、その線から崩せるのではないかと考えたのだ。

 はじめは躊躇していたウォルカさんだったが、直に膝を突き合わせて話していくうちに、徐々に本心を語ってくれるようになった。

 自分は不正の直接の証拠は握っていないのだが、テンペンの行動を不審に感じたことは何度もあると。僕の話に説得力を感じたウォルカさんは、不正の証拠をつかむため裏で動いてくれることを約束してくれた。

 そして、この作戦の肝心なところはここからだ。

 なにしろ不正の証拠だ、テンペンはそれを厳重に管理し、簡単には尻尾をつかませないようにしているだろう。

 その証拠をつかむためには、テンペンが『確実に道場にいない日』を狙うしかない。

 そう、テンペンが確実に道場にいない日とは、他ならぬ

 今日テンペンが会場に訪れる、まさにこの日を狙って、僕はウォルカさんにをしてもらっていたのだ。

 僕は証拠を大事に大事に受け取ると、ウォルカさんに深く頭を下げた。

 ウォルカさん、非常に難しいミッションを、本当にありがとうございました。あなたのおかげでテンペンの罪を、すべて白日の下にさらせます。

 僕は会場全体の人々、いや、この配信を観ているすべての人々に伝わるように、不正の証拠をさらしていった!

「これが脅迫状に使われた文字の切り抜き! 武器を不正に改造した支払いの記録! そしてこれが刺客としてハラキリと結んだ契約書! すべてテンペンの自室に隠してあったものです!」

 確固たる不正の証拠を出され、発狂せんばかりにテンペンがわめく。

「ぐ、ぐぬぅううぅうぅうぅッッッッ! 貴様らぁああぁあぁあぁああッッッッ!」

「武道会で好成績を納め、町で人気の道場となるため、テンペンは数々の不正に手を染めてきました。そしてその犠牲者となった方々は数多く存在します。このブレイズさんの婚約者、ミモザさんもその一人です!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。 ☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

処理中です...