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第42話 決着

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 アカリとハラキリ、刃気を溜めながら睨みあう両者。

「はぁあぁああぁぁああぁあッッッッッッッ!」

「コォオオォオォォオオォオッッッッッッッ!」

《あぁあぁあぁぁあっ! ついに勝敗が決まっちまうっ!》

《アカリちゃあぁあぁあん! がんばれ! がんばれ!》

 互いに気を溜め終えると、その身体に旋風をまといながら、両者は激突した!

「アカリぃいぃいぃぃいッッッッ!」

「ぬぉおぉおぉおおッッ! アカリ殿ぉおぉおぉおッッ!」

 放たれる閃光。凄まじい衝撃波が会場全体を揺るがす。もくもくと立ち込める土煙が視界を遮り、外部から二人の様子を窺い知ることはできない。

《ど、どっちが勝ったんだ?》

《頼む! アカリちゃんであってくれぇえぇぇええ!》

 煙が晴れるそのときを、会場全体が固唾を飲んで見守る……。

 徐々に視界が晴れていき、土煙の向こうに誰かのシルエットが見えた。
 
「あ、あれは……!」

 そのシルエットを目にした瞬間、僕の心の中を、現世で感じたものと同じ絶望が覆っていった……。

 現れたシルエットは、紛れもなく姿を映し出していた……。

「そ、そんな……! アカリ! アカリぃいぃいぃぃいッッッッ!」

 その場に崩れ落ちると、僕は人目もはばからず号泣した。

 終わった……。

 なにもかも……。

 ブレイズとミモザさんの夢を取り戻すことも、この世界の配信でトップになることも、アカリがいなきゃ叶えられやしない……。

 プロデューサーなんて格好つけてるけど、所詮は僕なんか、アカリがいてくれなきゃなんにもできない人間なんだ……。

「い、いや……! あれを見よ!」

 ゼインさんの呼びかけに、涙のフィルターを通して映った光景。

 土煙の中、ハラキリのシルエットが崩れ落ちる。

 代わりに現れたのは、この大会に出ている、誰よりも小さな女の子のシルエット。

「ア、アカ……」

 すべての煙が晴れ、そこに立っていたのは、この大会に出ている誰よりも小さな、だけど、その剣も心も、誰よりも大きな女の子だった。

「アカリぃいぃいぃぃいッッッッ!」

「ハラキリ選手、戦闘不能! アカリ選手、第21回ブシドータウン武道大会、優勝ォオオォオォォオオォオッッッッ!」

 主審のコールと同時に、観客の凄まじい歓声が会場全体を揺るがした。

《うぉおぉおおおぉおおぉおおぉおおおッッッッッッッ! アカリちゃん優勝! アカリちゃん優勝ぉおおおぉおおぉおおおッッッッッ!》

《やべぇ! 涙腺が! 涙腺がぁぁああぁあああッッッッ!》

《マジでなんだぁ! なんなんだこのチャンネルはぁあああぁあぁああッッッッ!》

《このチャンネルのファンになってよかった……》

「なんだこれはーーーーー! 信じられない! サバランさん、今大会でもっとも小柄で初心者の女の子が、ついにハラキリ選手を破り優勝しちゃいましたよーーーーー!」

「なんと……なんという女の子だ……! 決めましたよ私は……!」

「と、言いますと?」

「みなさん! 私サバランは、ブシドー専門チャンネルでアカリ選手を独占密着することをお約束します! 新しい時代は、もうすぐそこまで来ているのかもしれない!」

 会場全体がスタンディングオベーションで、アカリの素晴らしい試合を讃えている。

 僕はステージに駆け上がると、どちらが大人なのかわからないほど泣きじゃくりながら、アカリを力いっぱい抱きかかえた。

「アカリぃ、アカリぃ! よくやった、本当に、よくやったな……!」

「ト、トベさん……! はいっ! あ、あの、すこしだけお力が強いかと……」

「あっ、ご、ごめん! ついテンションが上がっちゃって!」

 勢いあまって大変な越権行為(?)をしてしまっていることに気づき、慌てて離れる僕。

「ふふふっ。いえ、わたしが勝利をつかめたのも、トベさんのおかげです。本当に、ありがとうございました」

 なんだろう……。アカリ……この試合を通じて、前よりずっと大人になったような……。

 会場全体から雨のように降り注ぐ拍手に、僕とアカリが応えていたそのときだった。

 配信画面にある『異変』が起きたのは。

「こ、これは……!」
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