現世では底辺配信者の僕が『バズる才能視（ビジョン）』で異世界の美少女をプロデュースしました

第３９話 駆けつけた男

「ブ、ブレイズさん……！」

「ブレイズ！　お主、試合を見ておったのか！」

《この大大大ピンチに、ブレイズキターーーーー！》

《やべぇ、こんなときになんだけど、めっちゃテンション上がるwwww》

《ブレイズさん……アカリちゃんのこと、ちゃんと見守ってくれてたんだね……》

「このぉおぉお！　ま、待ちなさい！　くっ、こ、この男、なんという力だ……！」

　複数人のスタッフを力ずくで引きずりながら、ズンズンと近づいてくるブレイズ。よろめきながらも剣を構えようとするアカリに、力強く声を飛ばした。

「アカリ！　いいか、耳の穴かっぽじってよく聞け！」

「……ブレイズ……さん？」

「剣は腕も重要だが、結局、大事なことはただ一つだ！」

　謎の男の乱入に、主審が退場を指示する。

「ちょっとそこ！　試合中のアドバイスは禁止ですよ！」

「うるせぇ！　すぐ終わるから黙ってやがれ！　いいか、大事なことはただ一つ！」

　アカリを真っすぐに射抜く光のように、ブレイズは言った。

「その剣はなにかを傷つけるためではなく、大切なものを守るためにある！　自らの大切なものを守るために、その剣を振るえ！」

「わたしの……大切なもの……」

　大会のルールを破り、大勢のスタッフに担ぎ出されていくブレイズ。

「わかったわかった！　もう用は済んだからおとなしく追い出されてやるよ！　おいドベ！　ジイさん！　あとは任せたぞ！」

「へ？　ド、ドベ？」

《ドベwwww》

《意図的に間違ってるだろ絶対wwww》

「わはは。まったく、相変わらず口の悪い男じゃ。それが師匠に対する口の聞き方か。まあ、それだけ裏表のない男とも言えるが」
　
　ブレイズが駆けつけてきたとき、そしてスタッフに担ぎ出されていったとき、会場で一際大きなリアクションを取る人物が目に入った。

　人目につかないよう帽子を目深に被ってはいるが、僕にはその人物に心当たりがあった。
　
　あれは……ミモザさん……？

　約束どおり、来てくれていたのか……！

　ミモザさんは約束を守ってくれた……。これであとは、僕も自分の『役目』を果たすだけだ。
　
　嵐のような男が去っていったあと、アカリは自身の剣を見つめながら、なにか新しい発見をしたかのようにつぶやいた。

「この剣は……大切なものを守るための剣……」

　突然の大騒動のほうに全員意識が行っていたが、主審がハッと気づいたように、なおも戻らない僕に注意を促す。

「さあ、あなたもチームエリアに戻って！　戻らなければ二度目の警告ですよ！」

　僕はアカリの目を見て、その瞳に強い光が戻っていることを確認すると、おとなしくチームエリアに戻った。ブレイズのアドバイスによって、なにかが変わってくれることを期待して。しかし、なにも変化がないようであれば、すぐにでも試合を止める。

「それでは改めまして、試合再開です！」

《ああ～！　始まっちゃった～！》

《またあの妙な技で攻撃されたら……》

《ブレイズのアドバイスはいいけど、それでなんか変わるのかよ……！》

　騒動の間に冷静さを取り戻したハラキリが、冷たい氷のような声で言い放った。

「南無阿弥陀仏。愚かなる者達よ。死ぬのが多少延びたところで、運命は何も変わらぬ。この剣を見切れぬ限り、貴様らに未来など存在せぬことを教えてやろう」

　剣を天に掲げると、ハラキリは左手で片合掌をしながら、また刃気を溜め始めた！

「コォオオォオォォオオォオッッッッッッッ！」

《ま、また始まっちゃったよ～！》

《ずるいぞその技～！》

《きたねぇぞハラキリ～！》

　ハラキリの動きを察知したアカリは、なぜか僕を背にする位置に移動すると、同じように剣を天に掲げた！

「はぁあぁああぁぁああぁあッッッッッッッ！」