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第28話 いざ、武道会へ!
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四日後、武道会当日の朝。
僕たち三人は道場に集まって、武道会前最後のミーティングを開いていた。
「よくぞ……よくぞここまで過酷な修行に耐え抜いてきたな。いまのお主の剣なら、武道会の猛者たちとも互角以上に渡り合えるであろう」
「ゼインさんに教えていただいたすべてを、武道会にぶつけますっ! 二週間、ほんとうにありがとうございましたっ!」
この二週間で、ゼインさんとのすべての基礎修行をクリアしたアカリのBPは、4万5212まで上昇していた。
「ゼインさん、僕からもお礼を言わせてください。アカリをここまで育てていただき、本当にありがとうございました」
「ははは、二人とも、礼を言うのはまだ早いぞ。目的はあくまで優勝することじゃ。礼はそのときに取っておきなさい」
《アカリちゃん、ほんとよくがんばったね!》
《ダメだ、武道会もまだ始まってないのに、俺もう感動しちゃって……。これ少ないけど、気持ちだから取っといて》
《ナイスロっ!》
《感謝のナイススローだよっ!》
「視聴者のみなさんも本当にありがとうございます! チームゼイン、みなさんとずっと見守ってきた修行の成果を、すべて武道会にぶつけてきます!」
「いざ出陣じゃ!」
「おーっ!」
《チームゼインがんばれ~!》
《ファイトだ~! 絶対気持ちで負けるな~!》
視聴者さんたちの熱い応援に背中を押されながら、僕たちは道場を後にした。
町の大通りを抜けて武道会の会場に着くと、受付はすでに多くの出場者でごった返していた。
「まずは受付でエントリーですね。行きましょう」
行列の最後尾に並び順番を待つ。受付の手際が良かったのか、それほど待たされることもなく、僕たちは受付の女性にエントリーシートを渡した。
「はい、確認できました。チームゼインさんは剣術の部。そして代表がアカリ選手ですね。それでは二番通路から、選手用控え室にお進みください」
《いよいよだね~》
《やべぇ、なんか緊張してきたww》
《なんで見てるだけの視聴者がドキドキしてるんだwww》
《だっていくら必死に修行したとはいえ、他にどんな強いやつがいるかわからないんだもん……》
《どんなに才能があるっていっても、たった二週間だもんな……。アカリちゃんが一体どれくらいやれるか……》
選手用控え室に入ると、室内は見るからに屈強でむさ苦しい男の群れでひしめきあっていた。アカリのように華奢でひ弱そうな女の子など一人も存在せず、僕たちは唯一残された部屋の隅で小さく縮こまるしかなかった。
《いや、全員もれなく強そうでワロタwww》
《こんなやつらが相手なのか……。アカリちゃん大丈夫かな……》
「な、なんだか不安になってきました……。ほ、ほんとうにわたしなんかで大丈夫なのでしょうか……」
「なに、案ずることはない。お主の実力はワシが保証する」
「アカリがこれまで頑張ってきたことを出せれば、絶対大丈夫だよ! 自信持って!」
《そうだよ! 俺たちもずっと傍でアカリちゃんのがんばりを見てきたんだからね!》
《アカリちゃんが今日のために、どれほど想いをこめて頑張ってきたかは、視聴者みんな知ってるよ》
みんなの声援を受け、アカリはしばらく目を閉じると、やがて決意を固めたように、凛とした真っすぐな眼差しで頷いた。
控え室に備え付けられたスピーカーから、アナウンスが流れる。
「ただいまより、ブシドータウン武道会、剣術の部一回戦を行います。代表選手はバトルステージにお集まりください」
「よいか、迷ったときはまず基本じゃぞ! 常に相手との間合いを意識しろ!」
《アカリちゃん大丈夫だ~!》
《俺たち視聴者がついてるぞ~!》
《こんなに小さな女の子が武道会のステージに立つなんて、同じ女性として尊敬しかないです……》
人それぞれいろんな表現はあるけれど、みんなアカリに言いたいことは、つまるところ『たった一つ』だ。
僕は、みんなの気持ちを代表するように叫んだ。
「がんばれアカリ!」
光の差し込む武道会のステージに向かうアカリの後ろ姿を、僕はプロデューサーとしてではなく、ただの一人のファンとして見つめていた。
僕たち三人は道場に集まって、武道会前最後のミーティングを開いていた。
「よくぞ……よくぞここまで過酷な修行に耐え抜いてきたな。いまのお主の剣なら、武道会の猛者たちとも互角以上に渡り合えるであろう」
「ゼインさんに教えていただいたすべてを、武道会にぶつけますっ! 二週間、ほんとうにありがとうございましたっ!」
この二週間で、ゼインさんとのすべての基礎修行をクリアしたアカリのBPは、4万5212まで上昇していた。
「ゼインさん、僕からもお礼を言わせてください。アカリをここまで育てていただき、本当にありがとうございました」
「ははは、二人とも、礼を言うのはまだ早いぞ。目的はあくまで優勝することじゃ。礼はそのときに取っておきなさい」
《アカリちゃん、ほんとよくがんばったね!》
《ダメだ、武道会もまだ始まってないのに、俺もう感動しちゃって……。これ少ないけど、気持ちだから取っといて》
《ナイスロっ!》
《感謝のナイススローだよっ!》
「視聴者のみなさんも本当にありがとうございます! チームゼイン、みなさんとずっと見守ってきた修行の成果を、すべて武道会にぶつけてきます!」
「いざ出陣じゃ!」
「おーっ!」
《チームゼインがんばれ~!》
《ファイトだ~! 絶対気持ちで負けるな~!》
視聴者さんたちの熱い応援に背中を押されながら、僕たちは道場を後にした。
町の大通りを抜けて武道会の会場に着くと、受付はすでに多くの出場者でごった返していた。
「まずは受付でエントリーですね。行きましょう」
行列の最後尾に並び順番を待つ。受付の手際が良かったのか、それほど待たされることもなく、僕たちは受付の女性にエントリーシートを渡した。
「はい、確認できました。チームゼインさんは剣術の部。そして代表がアカリ選手ですね。それでは二番通路から、選手用控え室にお進みください」
《いよいよだね~》
《やべぇ、なんか緊張してきたww》
《なんで見てるだけの視聴者がドキドキしてるんだwww》
《だっていくら必死に修行したとはいえ、他にどんな強いやつがいるかわからないんだもん……》
《どんなに才能があるっていっても、たった二週間だもんな……。アカリちゃんが一体どれくらいやれるか……》
選手用控え室に入ると、室内は見るからに屈強でむさ苦しい男の群れでひしめきあっていた。アカリのように華奢でひ弱そうな女の子など一人も存在せず、僕たちは唯一残された部屋の隅で小さく縮こまるしかなかった。
《いや、全員もれなく強そうでワロタwww》
《こんなやつらが相手なのか……。アカリちゃん大丈夫かな……》
「な、なんだか不安になってきました……。ほ、ほんとうにわたしなんかで大丈夫なのでしょうか……」
「なに、案ずることはない。お主の実力はワシが保証する」
「アカリがこれまで頑張ってきたことを出せれば、絶対大丈夫だよ! 自信持って!」
《そうだよ! 俺たちもずっと傍でアカリちゃんのがんばりを見てきたんだからね!》
《アカリちゃんが今日のために、どれほど想いをこめて頑張ってきたかは、視聴者みんな知ってるよ》
みんなの声援を受け、アカリはしばらく目を閉じると、やがて決意を固めたように、凛とした真っすぐな眼差しで頷いた。
控え室に備え付けられたスピーカーから、アナウンスが流れる。
「ただいまより、ブシドータウン武道会、剣術の部一回戦を行います。代表選手はバトルステージにお集まりください」
「よいか、迷ったときはまず基本じゃぞ! 常に相手との間合いを意識しろ!」
《アカリちゃん大丈夫だ~!》
《俺たち視聴者がついてるぞ~!》
《こんなに小さな女の子が武道会のステージに立つなんて、同じ女性として尊敬しかないです……》
人それぞれいろんな表現はあるけれど、みんなアカリに言いたいことは、つまるところ『たった一つ』だ。
僕は、みんなの気持ちを代表するように叫んだ。
「がんばれアカリ!」
光の差し込む武道会のステージに向かうアカリの後ろ姿を、僕はプロデューサーとしてではなく、ただの一人のファンとして見つめていた。
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