11 / 61
第11話 成長配信
しおりを挟む
ナギサタウンに逃げのびた僕たちは、シンジュの宿に戻り態勢を立て直すことにした。
自室でアカリともう一度作戦会議をする。
「起きてしまったことはしょうがない。大事なのは『これから』をどうしていくかだ。現状を認め、それを改善していくためにはどうすればいいのか、二人で考えていこう」
「はいっ、トベさんっ!」
まず、現状の一番の問題点はどこだったのかというと、いまのアカリにはモンスターと戦えるだけの力がまったくなかったという点だろう。これを改善していくには、『アカリに剣術を教える』というのがもっとも有効な解決策となる。
そのBPが示すとおり、アカリの持っている才能、将来性は破格中の破格、剣術を知らなかったから苦戦してしまっただけで、教育すればメキメキと腕を上げてくれるものと思う。
「このチャンネルの成否はアカリの剣にかかってるからね。大変な修行になると思うけど、大丈夫?」
「わ、わたしはトベさんのプロデュースどおりにがんばるだけですので。大丈夫です、オーディションに参加したあの日から、覚悟はできています」
そう言って、アカリは唇にキュッと力をこめた。
ここまでの覚悟を持って僕についてきてくれているんだ。僕はプロデューサーとして、絶対にこの子を成功させなければならない。
剣術の修行を受けに行くという基本線は決まったものの、実はいま、僕の中には『更なるアイディア』があった。
たしかに、初配信で視聴者に醜態をさらしてしまったことは間違いないが、今度はそれを『逆手にとる』というのはどうだろう?
つまり、いまの自分たちの弱さを認め、逆に視聴者に『どん底からアカリが強くなっていく姿』を配信していくのだ。
そのコンセプトは一人の少女の『成長配信』というもので、初配信での惨敗があればあるほど、そこから努力を積み重ね、成長して強くなっていく姿は、これは相当視聴者が食いつきそうなドラマ性があると、僕はプロデューサーとして感じた。
初めからなにもかも完璧である必要はない。それよりもいけないのは、ダメな部分を隠そうとして『視聴者を欺く』ことだ。初めは未熟なチャンネルでも、ダメで恥ずかしいところも隠さず誠意を持って公開することで、『視聴者と共に成長していくチャンネル』にしていけばいいじゃないか。
これが僕が現世での失敗から得た教訓、『転んでもただでは起きない』というもので、あれほど絶望していた現世での苦闘の日々が、いま糧となって自分を助けているというのは、人生というのは本当になにが起こるかわからないし、生きることをあきらめてはいけないと感じた。
翌朝。今後の方針を決めた僕たちは、宿を出るとキングラを起動し、配信をスタートさせた。
視聴者さんがある程度集まるのを待って、言葉を紡ぐ。
「みなさん、昨日は未熟な配信を見せてしまい、本当に申し訳ありませんでした。僕たちはこれから剣術を学ぶため、隣町の道場に向かいます。自分たちの弱さを克服するために」
「わ、わたしいっぱい修行して、必ずみなさんのご期待にそう剣士になりますので、よろしくお願いしますっ!」
配信画面に視聴者からのコメントが並んでいく。
《おっ、初の敗北からまさかの修行編スタートww》
《なるほど、現時点での弱さをキチンと認めたってことね。そしてそれを視聴者と共に克服していこうと。そういう真摯な姿勢は嫌いじゃないよ》
《トベはウザいけどアカリちゃんが頑張るなら応援する!》
《しょうがねえからまた見てやるかwwただし、また無様なとこあったらすぐ登録解除するからなwww》
視聴者さんたちからの少し強めの叱咤激励を受け、僕たちは配信しながらナギサタウンを出た。
さあ、ここからの問題は、剣術を教えてくれる道場がナギサタウンにはなく、『隣町』にしかないという点だ。
隣町の『ブシドータウン』は、ここからおよそ10キロほど離れた場所にあり、低級ではあるがモンスターの出没する道のりを歩いていかなければならない。
そして、昨日の敗走からもわかるとおり、いまの僕たちにモンスターにあらがう術はなく、戦えば必ず『詰み』の状態が待っている。
《でも、昨日あんなに無様にやられたのに、隣町までにモンスターに遭遇したら、一体どうするつもりなんだろうなwww》
《それなwww》
《遭遇した瞬間のトベのパニックぶりが楽しみwww》
フィールドに出て、画面の反応を見ながら恐る恐る進んでいた僕たちの前に、今度はBP『1』と『2』のスライムが3匹現れた!
自室でアカリともう一度作戦会議をする。
「起きてしまったことはしょうがない。大事なのは『これから』をどうしていくかだ。現状を認め、それを改善していくためにはどうすればいいのか、二人で考えていこう」
「はいっ、トベさんっ!」
まず、現状の一番の問題点はどこだったのかというと、いまのアカリにはモンスターと戦えるだけの力がまったくなかったという点だろう。これを改善していくには、『アカリに剣術を教える』というのがもっとも有効な解決策となる。
そのBPが示すとおり、アカリの持っている才能、将来性は破格中の破格、剣術を知らなかったから苦戦してしまっただけで、教育すればメキメキと腕を上げてくれるものと思う。
「このチャンネルの成否はアカリの剣にかかってるからね。大変な修行になると思うけど、大丈夫?」
「わ、わたしはトベさんのプロデュースどおりにがんばるだけですので。大丈夫です、オーディションに参加したあの日から、覚悟はできています」
そう言って、アカリは唇にキュッと力をこめた。
ここまでの覚悟を持って僕についてきてくれているんだ。僕はプロデューサーとして、絶対にこの子を成功させなければならない。
剣術の修行を受けに行くという基本線は決まったものの、実はいま、僕の中には『更なるアイディア』があった。
たしかに、初配信で視聴者に醜態をさらしてしまったことは間違いないが、今度はそれを『逆手にとる』というのはどうだろう?
つまり、いまの自分たちの弱さを認め、逆に視聴者に『どん底からアカリが強くなっていく姿』を配信していくのだ。
そのコンセプトは一人の少女の『成長配信』というもので、初配信での惨敗があればあるほど、そこから努力を積み重ね、成長して強くなっていく姿は、これは相当視聴者が食いつきそうなドラマ性があると、僕はプロデューサーとして感じた。
初めからなにもかも完璧である必要はない。それよりもいけないのは、ダメな部分を隠そうとして『視聴者を欺く』ことだ。初めは未熟なチャンネルでも、ダメで恥ずかしいところも隠さず誠意を持って公開することで、『視聴者と共に成長していくチャンネル』にしていけばいいじゃないか。
これが僕が現世での失敗から得た教訓、『転んでもただでは起きない』というもので、あれほど絶望していた現世での苦闘の日々が、いま糧となって自分を助けているというのは、人生というのは本当になにが起こるかわからないし、生きることをあきらめてはいけないと感じた。
翌朝。今後の方針を決めた僕たちは、宿を出るとキングラを起動し、配信をスタートさせた。
視聴者さんがある程度集まるのを待って、言葉を紡ぐ。
「みなさん、昨日は未熟な配信を見せてしまい、本当に申し訳ありませんでした。僕たちはこれから剣術を学ぶため、隣町の道場に向かいます。自分たちの弱さを克服するために」
「わ、わたしいっぱい修行して、必ずみなさんのご期待にそう剣士になりますので、よろしくお願いしますっ!」
配信画面に視聴者からのコメントが並んでいく。
《おっ、初の敗北からまさかの修行編スタートww》
《なるほど、現時点での弱さをキチンと認めたってことね。そしてそれを視聴者と共に克服していこうと。そういう真摯な姿勢は嫌いじゃないよ》
《トベはウザいけどアカリちゃんが頑張るなら応援する!》
《しょうがねえからまた見てやるかwwただし、また無様なとこあったらすぐ登録解除するからなwww》
視聴者さんたちからの少し強めの叱咤激励を受け、僕たちは配信しながらナギサタウンを出た。
さあ、ここからの問題は、剣術を教えてくれる道場がナギサタウンにはなく、『隣町』にしかないという点だ。
隣町の『ブシドータウン』は、ここからおよそ10キロほど離れた場所にあり、低級ではあるがモンスターの出没する道のりを歩いていかなければならない。
そして、昨日の敗走からもわかるとおり、いまの僕たちにモンスターにあらがう術はなく、戦えば必ず『詰み』の状態が待っている。
《でも、昨日あんなに無様にやられたのに、隣町までにモンスターに遭遇したら、一体どうするつもりなんだろうなwww》
《それなwww》
《遭遇した瞬間のトベのパニックぶりが楽しみwww》
フィールドに出て、画面の反応を見ながら恐る恐る進んでいた僕たちの前に、今度はBP『1』と『2』のスライムが3匹現れた!
0
お気に入りに追加
6
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる