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第4話

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犯人と共に中に入ると、室内は外観から想像できる以上にボロボロで、荒れ果てた様相を呈していた。

雨の日は雨漏りし放題であろう天井には穴が空いており、障子は破れ畳は変色し、夏は蒸し暑く冬は寒風吹きすさぶ過酷な環境であろうことが、容易に想像できた。

更に、ただ単に古いだけではなく、室内にはゴミがそこら中に散乱し、どこに身体を置けば良いか熟知している家主以外には、足の踏み場もないような有様である。

変色した畳の上、万年床のように敷かれた汚い布団の上に、どっかりと腰を据える犯人。

まずは、何はともあれ今夜の『成果』を確認したかったようで、私たちは鞄から出されて一人一人汚い布団の上に並べられると、その数を数えられていった。

金額をひとしきり確認するとどうやら満足したようで、私たちはひとまとめにされて犯人の財布の中に突っ込まれた。

犯罪の事後処理が終わると、急に犯人が立ち上がり、部屋を出ていく。

部屋にお金を置いたままどこに行くのかと思うと、すぐに戻ってきて冷えたビールとツマミを持ってきた。

自身の犯罪行為もひとまずは成功に終わり、どうやらそれを祝して軽く祝杯するらしい。

無論、成功といっても、いずれ防犯カメラの映像から犯人に足がつくのは時間の問題であるが、この犯人は逮捕されるのを全く怖がっていないフシもあり、むしろこのような悲惨な生活環境では『刑務所に入った方がまだマシ』という感もあった。

別に完全犯罪を目論んでいる訳でもなく、強盗した金で放蕩するまでの時間を稼げればそれで御の字というもので、本人もその後は刑務所で年を越した方が良いとでも考えているのだろう。ある意味では合理的な考え方であると言えなくもない。

これまではその文明の進歩に驚かされることばかりだったが、この国は一見、表面上は皆が幸福で豊かな国に見せかけてはあるものの、その裏ではこうした腐敗や荒廃した国民を多々生み出してしまっている、貧しい国に陥ってしまっているのかもしれない。

かつて私が目指していた『美しい国日本』の姿は、一体どこに行ってしまったのか。

きらびやかな『光』の裏には、それと相反して必ず漆黒の『影』が生まれるのが、この世界の理である。

表面上の隆盛や華やかさの裏には、一体どれほどの『犠牲』や『影』が生み出されてきたのか、私には想像もつかない。

かつて私が生きていた時代よりも、日本は確実に栄えているにも関わらず、それと比例して人々も幸せになっているとは、私には到底思えなかった。

国が如何にも富んでいるかのように見せかけるその裏で、人々の心は傷付き、貧しくなってしまっているのではないか。

私がそんなことを憂いている横で、ビールを飲みながら犯人がテレビを点けると、テレビでは銀行に強盗が入ったというニュースが流れていた。

コンビニに強盗に入ったこの犯人と同様、世の中には銀行に強盗に入る輩も存在するらしい。

銀行といえば『私』が多数存在する場所だが、テレビから流れてくる情報によると犯人は未だ捕まっておらず、逃亡を続けているようだ。

「遅ぇなあいつ……」

私に盗み聴きされているとも知らず、ボソリと呟く犯人。

遅いということは、誰かと約束でもしているのか?

そこから犯人がビールとツマミを食べ終え、テレビのニュースが終わるかどうかというところで、外から戸口を叩く音が聴こえた。

その外観からも分かる通り、どうやらこのあばら家に呼び鈴などという便利なものは存在していないらしい。

戸口に向かう前に、私たちの入った財布をズボンのポケットに入れる犯人。

万が一にも戸口の向こうの人物に奪われないように、警戒しているのだろうか。

私たちを従えて犯人が戸口を開けると、そこにいたのはあまりにも意外すぎる人物だった。
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