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第34説

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サルバトルとの、涙涙の別れを済ませた僕。

ふと空に目をやると、もう夕暮れ時になっていて、僕はそろそろ町の散策も終わっているだろうと思い、タロピンを迎えに行った。

約束していた町の入口付近に行くと、タロピンはまだ着いていなかった。

「う~ん、困ったやつだなぁ。まだ町を見て回ってるのか」

サルバトルとの対話がどれぐらいになるか分からなかったから、約束の時間をキッチリ設定しなかった僕も悪いのだけど、だからと言ってただタロピンの帰りを漫然と待って、貴重な時間を無駄にする訳にはいかない。

僕は宙ぶらりんになってしまった時間を利用して、まずは町に着いて不要になった鉄の防具一式を売却した。

どのみち新しい仲間を見つけるまでは戦闘には出ないのだし、ここでお金に替えて少しでも身軽になっておいた方が良い。(そうして、必要になったらこの町のより高性能の防具に替えればいいのだから)

その後はお小遣い稼ぎの感覚でクエストを少しだけこなしながら、しばらく町の人々に聞き込みをするなどして時間を潰した。

「おや、見ない顔だね。旅の冒険者さんかい?」

「はい。サリドの洞窟を通ってやってきたんですが」

僕がそう口にした瞬間、町民は目をひんむいて、尻もちをついて驚いた。(それほど!?)

「なんだって!?たまげたなぁ、あの洞窟を抜けてきた!?」

「ええ、まあ……」

聞くところによると、この町に着くのは9割9分アリュール街道をそのまま通ってきた冒険者らしく、どうやら僕たちのようなケースはかなりの『激レア』さんだったらしい。

「あの洞窟を抜けてきたなんて信じられない……。キミ、見かけは子供みたいだけど強いんだね。本当に凄いよ」

う~ん、人よりも童顔なのは自覚はしてるんだけど、言い方的に褒められてるのか何なのか正直微妙……。喜んでいいんだよね?

「まあ、仲間が強かっただけで、僕はほとんど戦ってないみたいなもんなんですけどね。実は僕って勇者なんですけど、戦わなくても道を切り開いてくれた、信頼できる仲間に感謝しかないですよ」

「ふ~ん、ちょっと何言ってるか分からないけど」

そりゃそうだ。勇者界の常識に照らし合わせたら、自分でもちょっと何言ってるか分からないんだもの。戦わない勇者がどうたらこうたらなんて、一般の人(?)に言ったって理解できないに決まっている。

「あっ、でもね……」

町民は何かを思い出したかのように、ここだけの話と前置きすると、

「実はね。キミのだいぶ前にも『たった一人』だけね、その洞窟を通ってきたという者がいたんだよ」

「ええっ!?僕たちの他にも!?」

しかし、僕たちの前にもサリドの洞窟を通った者がいたのであれば、ギミィやダリヒー、ネイズミーたちが倒されずに、全て健在だったのはどういうことなのだろうか……?

あの洞窟の出口はネイズミーが管理していたため、ネイズミーを倒さなければ洞窟を抜けられなかったはずだが……。

僕がそんな率直な疑問をぶつけると、

「ああ。確かに、中に連携技を使うやつや、ネズミのバケモンみたいなのがいたって言ってたなぁ。でも、あまりにも弱すぎてトドメを刺すのも不憫に思い、一人で軽くあしらってきたと言ってたよ。ネズミのバケモノはその冒険者を恐れて震えながら、出口を通っていくのに何も手出しできなかったと」

「なん……だって……?」

僕たちがあんなに苦労した、ギミィやダリヒー、ネイズミーを軽くあしらってきた……?

「そ、そういえば明かりは?あの洞窟の前半部分は、松明がなければとても先に進めないほど暗かったんです」

「いや~、別にそんな大変だったという話はしてなかったよ。その冒険者は視界を遮られても、物質の『気配』を感じられる特別な能力を持っていたみたいでね。ほんと凄いよね、『心眼』というか『心の目』というかさ。『武闘家』も極めればそこまでの境地に達することができるんだなと思った。何か一つの道を極めた冒険者って、全身からオーラが漂ってるというか、本当に格好いいよね」

「武闘家だったんですかその人!?」

「うん。僕も冒険者が集まるこの町で、これまで数え切れないほどの冒険者を見てきたけど、全身からあれほどの闘気を放っている男は、まあいなかったね。あの男は強かったよ、間違いなく」

……信じられない……。

その武闘家は、あんな暗闇の中を『心眼』のようなもので明かりなしで簡単に踏破し、その上僕たちがあんなに苦労したギミィやダリヒー、ネイズミーを軽くひねって、難なく洞窟を越えてきたというのか……。

あのウルフの群れを簡単に一掃した冒険者の時にも感じた、『最強』の匂い……。

そして今度は『武闘家』……。

僕の考える理想のパーティーには絶対に欠かせない、『最強の近接担当』発見の機運が、にわかに高まってくる……。

今度こそ逃してはならない、二度と逃してたまるものかと、僕は焦りすぎて町民に掴み掛かるように尋ねた。

「そ、その人にはどこに行けば会えるんですか!?何か手掛かりは!?」

「わわわっ!!急にどうしたっていうんだ!?その人はねぇ、もうこの町にはいないはずだ。僕も詳しく知っている訳じゃないけど、少なくとも最近は全く見かけないし、それにどこかに定住するようなタイプには全然見えなかったよ。ああ、そうそう、その人は自分に武道を教えてくれた『師匠を探している』とも言っていた。だから今はもうその師匠を探しに、どこか別の町に行ってると思うよ」

僕はその返答を聞いて全身から力が抜けて、思わずその場にヘナヘナと座り込んでしまった。

「なんだいキミ……?そんなにショックだったのかい……?」

……ショックもショック……大大大大大ショックですよ……。

僕たちがもっと早くあの洞窟に着いてたら、ひょっとしたら中でその人に会えてたかもしれないっていうのか……。

またか……。

また『最強の仲間』への手掛かりは、ここで潰えてしまうのか……。

消沈する僕の脳裏に。

次の瞬間、稲妻のように天啓が走った。

そうだ!!

タロピン!!

ブラックネズミ団のタロピンは、僕たちとは違いずっとあの洞窟にいたんじゃないか!!
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