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序章:プロローグ

1話 重度な童貞患者と女神ヘラの出会い

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 気つけば、上下左右どこを見回しても、真っ白な空間に、俺はいた。


 (えーっと……多分、死んだんだよな?)

 
 ここがどこで、自分が誰だったのか、頭にモヤが掛かっているような感覚で、はっきりと思い出せないが、なぜか死んでいる事だけは、分かった。


 そんなことを考えていると、急に目の前が光り、輝きだした。


 光が収まっていくと同時に、徐々に鮮明になってくる目の前の光景に、自分の身体が緊張し硬直していくのが分かる。


 理由は、明白。


 長年追い求めていた、映像ではないリアルな乳が二つ、そこにあったからだった。

 
 そう。目の前には、"絶世の美女"が立っていたのだ。
 それも、形の整った、綺麗で大きい両乳を丸出しにしながらだ。

 顔も美人、スタイルも良い。
 ハッキリ言って、全てにおいてド・タイプである。


 しかし、彼女は特に自分の姿を気にした様子もなく、ニコリと笑いながら俺に話しかけてきた。


 「はじめまして、私は女神ヘラ。私があなたをここに呼んだんです。」
 「え…ちょっと…あっ…いや……なんか…えーっと……すいません……」

 
 彼女が、話しながら歩くもんだから、彼女の柔らかそうな胸がプルンプルンと揺れている。
 俺は、緊張と恥ずかしさで頭の中が真っ白になっている。


 記憶はないが、きっと童貞だったんだろう。それも重度の。


 「なぜ、謝るのです……?」


 女神様と自称するヘラさんは、頭を傾げながら暫く考えると「あぁ!」と納得したように頷き、手を叩く。


 すると、どこからともなく布が出てきて、自然に彼女の上半身を包み込んだ。


 俺は、残念な気持ちと助かったという気持ちで複雑だ……いや。
 よく見たら、布はシースルー。
 ピンク色の突起が二つ、透けて見えてしまっている。


 逆にエロいわ、バカやろう。
 心でツッコミを入れながら、目線を外す。


 リアルなものを見れたら見れたで、恥ずかしくて見てられないわっ!


 「人間ってのは難しいですね。まぁ良いです。時間もないですし。あなた、記憶はありますか?」
 「……いえ、無くなってます。教えてくれますか?あ、死んだのは分かります。」

 
 ピリッとした空気が流れる。
 俺の生前を教えてくれる。すごく気になる部分だ。


 俺も突起に目をやらず、真剣になって聞いた。

 
 そこから、女神ヘラさんの説明が始まった。
 だが、残念ながら、俺の人生はあまり自慢できるものではなかったようだ……。


◆◇


 17歳の日本の高校生で名前は"坂東紅留(あかる)"。
 親は既に亡くなり、保険金で生活。兄弟はいない。

 太っている事で虐められ、不登校になり、趣味のゲームと自慰で日々を過ごしている130kgのデブ。

 好きな子は同級生の"白石さくら"。日本で活躍中のアイドルだ。

 ある日、先生から呼び出され、久々に登校した際に、"白石さくら"の過激なファンが校内に侵入し、"白石さくら"に長包丁を突きつけ、一緒に死ぬと叫んでいるのを発見。

 "白石さくら"を助けるために飛びかかるも、長年の引きこもり生活により、130kgの体重をうまく扱えず、自ら包丁に刺さり死亡。

 そして、130kgが倒れかかり、下敷きになった"白石さくら"と犯人の"佐々木四郎"も圧死したとのこと。

◇◆

 俺は、その話を聞きながら、徐々に生前の人生を思い出した。
 
 今思えば、恥ずかしい人生だった。
 忘れていたままの方が良かったかもしれない。

 しかしそうなると、怖いが気になる懸案事項がある。


 確かめなければ……


 俺は恐る恐る、ヘラさんに質問をした。


 「そ、それで、俺が死んだ後、どうなったんですか?ニュースとか。」


 俺が気になっているのは、自分の部屋のことだ。バレたくない品々が沢山あるのだ。いや、別に"法"は犯していない。"法"は。

 
 「今、日本では、そのニュースが連日報道されていて、"坂東紅留"の部屋から出てきた大量の"白石さくら"グッズと、その全てに大量の精液が掛けられていた事から、犯人との共謀だったのではないか、と疑われてますね。坂東容疑者と呼ばれてます。」


 はい、終わりましたー。まぁもう死んでるから終わってるだけどね、ははー。名誉がね、ズタズタですよ。はなから、名誉なんてなかったに等しいけどな。


 「それで?俺は地獄に行くんですか?」


 もうどうにでもなれ。地獄でもなんでも行くから、来世では楽しい人生を歩ませて欲しい。


 俺は、半ば諦めながら、ヘラさんへ質問をした。


 しばらく沈黙が続く。
 ヘラさんが少し言いづらそうにしているのが印象的だった。


 その間に、俺の決意は固まっていく。
 (どんな事を言われても男らしく、はい、と言おう。もう恥ずかしい人生は歩まない。やり直すならここからだ。)と。

 
 しばらくすると、ヘラさんが口を開く。


 「そこで、あなたに提案です。私の管理する世界に転生してみませんか?」
 「はいっ!……って、ぇぇぇえ!?」
 「交渉成立ですねっ!では、また連絡しますね。次は楽しい人生を~。」


 俺は、勢いにのせられ、訳の分からないまま、極度の眠気に襲われ、意識を手放した。


 最後に目に映ったのは、微笑んだヘラさんの笑顔と、シースルーに透けたピンク色の突起だった。
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