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第四章 オヤマー領 レイシア11歳
45話 お家に帰ろう!(第四章完)
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ターナー領へ帰るまであと7日。
お祖父様もお祖母様も、レイシアをいたく気に入ってしまった。自分が育てたいくらいに。
お祖父様は、自分の後継者として。できるなら、内孫の一人と結婚させて、頼りない息子や孫のサポート、あるいはそれ以上の仕事をして欲しい。そのために今から仕事を覚えさせたい、と思ってしまうくらいに気に入っていた。
お祖母様は、愛する娘アリシアの影をレイシアに投影し、駆け落ちする前の素直でかわいいアリシアを取り戻したい、そのために私が教育をきちんとしなくては、と思うくらいに……。
二人は、全く正反対の願いのもと、出てくる言葉は同じになった。
「「あんな男と暮らすより、私達と暮らさないか、レイシア」」
そんな言葉を、ことあるたびにレイシアに投げかけた。
「あんな男と……」
「あんな男と!」
「あんな男」
「あの男のせいで……」
「あの男が、」
「あいつが」
「あれさえいなければ」
「あんな男いなくなれば」
「……………………」
「……………………」
ありとあらゆる会話に父親の悪口がはいる。悪口のあと、甘い口調でレイシアを誘う。
「「私達と暮らさないかレイシア」」
気持ち悪い……。
気持ち悪い……。
気持ち悪い……。
◇
あと3日。あと3日我慢すれば……。
そう思いながらも、呪いの言葉を聞かされながらのディナー。味の分からない料理。ただ口に運ばれるだけ。
「「あんな男より、私たちと暮らそう。何でもしてあげるよ」」
レイシアは、両手でバタン!とテーブルを叩き、勢い良く立ち上がった!
「もう嫌です! お祖父様もお祖母様も大嫌いです! 貴族の付き合いなんて大嫌いです! 私はレイシアです、お母様ではないです! お父様とクリシュの所へ帰ります! お世話になりました。ご迷惑をおかけしました。もう居られません! おかしくなります! 出ていきます! ごめんなさい。 無理です! ここに居るの無理。嫌。むり……」
そう言って、泣き崩れてしまった。メイドのノエルとポエムがなだめながら、レイシアを部屋に連れて行った。
◇
それからレイシアは部屋から出なくなった。
機嫌を取ろうとお祖父様とお祖母様は何度となく声をかけたが逆効果。悪気はないんだろうが、どうしても上手くいかない。やがてお別れの日となった。
◇
「お世話になりました。ごめんなさい」
「ああ、またおいで」
「……」
「いつでも来ていいのよ。アリシアちゃん」
「……さようなら。お祖母様、お祖父様」
それだけを言うと、さっさと馬車に乗り込んだ。
遠ざかる馬車を、肩を落として見送るお祖父様とお祖母様。何がいけなかったのか……理解することはなかった。
◇◇◇
もうじきターナー領に着く。レイシアはため息をついてボソッと言った。
「温泉入りたい……」
それを聞いてノエルが言った。
「まあ、アリシア様と同じことを……」
「お母様と?」
「ええ、アリシア様が出産を終えて帰られた時も同じことをおっしゃっていました。同じようにため息をついて」
レイシアは、「お母様お帰りなさいパーティー」の時の事を思い出した。涙があふれてきた。お母様も同じだったのだろうか。あの家から帰る時……。
「あらあら、では温泉に寄りましょうか」
「そうですわ。アリシア様も温泉でデトックスしていましたもの」
ポエムが言うと、馬車は温泉を目指し走った。
◇
温泉でゆっくり毒抜きを終えたレイシア。
「あの時は、何ですぐに来てくれないのだろうと思っていたけど、こういう事だったのね」
「そうだと思いますよ」
「きっとそうです」
「さあ、帰ろう。お父様とクリシュのもとへ。すてきなわが家へ。元気な顔を見せなくては、ね」
帰ったらクリシュを満喫しよう。そう思い立ち上がるレイシアだった。
第四章 完
お祖父様もお祖母様も、レイシアをいたく気に入ってしまった。自分が育てたいくらいに。
お祖父様は、自分の後継者として。できるなら、内孫の一人と結婚させて、頼りない息子や孫のサポート、あるいはそれ以上の仕事をして欲しい。そのために今から仕事を覚えさせたい、と思ってしまうくらいに気に入っていた。
お祖母様は、愛する娘アリシアの影をレイシアに投影し、駆け落ちする前の素直でかわいいアリシアを取り戻したい、そのために私が教育をきちんとしなくては、と思うくらいに……。
二人は、全く正反対の願いのもと、出てくる言葉は同じになった。
「「あんな男と暮らすより、私達と暮らさないか、レイシア」」
そんな言葉を、ことあるたびにレイシアに投げかけた。
「あんな男と……」
「あんな男と!」
「あんな男」
「あの男のせいで……」
「あの男が、」
「あいつが」
「あれさえいなければ」
「あんな男いなくなれば」
「……………………」
「……………………」
ありとあらゆる会話に父親の悪口がはいる。悪口のあと、甘い口調でレイシアを誘う。
「「私達と暮らさないかレイシア」」
気持ち悪い……。
気持ち悪い……。
気持ち悪い……。
◇
あと3日。あと3日我慢すれば……。
そう思いながらも、呪いの言葉を聞かされながらのディナー。味の分からない料理。ただ口に運ばれるだけ。
「「あんな男より、私たちと暮らそう。何でもしてあげるよ」」
レイシアは、両手でバタン!とテーブルを叩き、勢い良く立ち上がった!
「もう嫌です! お祖父様もお祖母様も大嫌いです! 貴族の付き合いなんて大嫌いです! 私はレイシアです、お母様ではないです! お父様とクリシュの所へ帰ります! お世話になりました。ご迷惑をおかけしました。もう居られません! おかしくなります! 出ていきます! ごめんなさい。 無理です! ここに居るの無理。嫌。むり……」
そう言って、泣き崩れてしまった。メイドのノエルとポエムがなだめながら、レイシアを部屋に連れて行った。
◇
それからレイシアは部屋から出なくなった。
機嫌を取ろうとお祖父様とお祖母様は何度となく声をかけたが逆効果。悪気はないんだろうが、どうしても上手くいかない。やがてお別れの日となった。
◇
「お世話になりました。ごめんなさい」
「ああ、またおいで」
「……」
「いつでも来ていいのよ。アリシアちゃん」
「……さようなら。お祖母様、お祖父様」
それだけを言うと、さっさと馬車に乗り込んだ。
遠ざかる馬車を、肩を落として見送るお祖父様とお祖母様。何がいけなかったのか……理解することはなかった。
◇◇◇
もうじきターナー領に着く。レイシアはため息をついてボソッと言った。
「温泉入りたい……」
それを聞いてノエルが言った。
「まあ、アリシア様と同じことを……」
「お母様と?」
「ええ、アリシア様が出産を終えて帰られた時も同じことをおっしゃっていました。同じようにため息をついて」
レイシアは、「お母様お帰りなさいパーティー」の時の事を思い出した。涙があふれてきた。お母様も同じだったのだろうか。あの家から帰る時……。
「あらあら、では温泉に寄りましょうか」
「そうですわ。アリシア様も温泉でデトックスしていましたもの」
ポエムが言うと、馬車は温泉を目指し走った。
◇
温泉でゆっくり毒抜きを終えたレイシア。
「あの時は、何ですぐに来てくれないのだろうと思っていたけど、こういう事だったのね」
「そうだと思いますよ」
「きっとそうです」
「さあ、帰ろう。お父様とクリシュのもとへ。すてきなわが家へ。元気な顔を見せなくては、ね」
帰ったらクリシュを満喫しよう。そう思い立ち上がるレイシアだった。
第四章 完
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