上 下
11 / 177
第一章 ステキなお姉様になるよ(レイシア5歳)

11話 閑話 孤児院の魅惑

しおりを挟む
 レイシア様は、孤児院での先生でもある私バリューから見ても、アリシア様が実家に帰られてから見違えるように変わられました。どうやら、[素敵なお姉さま計画]とやらを、サチと立てているようです。

 まあまだ勉強は始めたばかりです。楽しみながら孤児院ここの子供達と仲良く過ごす所から……って掃除、洗濯、裁縫、薪割り? お嬢様はそんな事などしなくても……えっそれが [素敵なお姉さま計画] なのですか? 何か間違っておりませんか?

「あたしが孤児院ここ流儀シゴトを仕込んでやるよ。レイはあたしの妹分だ。二週間しかないからスパルタだよ」

 レイシア様とサチは盛り上がったと言うか暴走したと言いますか……。まあ二週間だし見守りましょう、怪我だけはしないように。土日はちゃんとお家で休むのですよ。レイシア様。



「レイ。あたしがあんたに教える事は、もはや何も無い。あたしのスピリッツを継げるのはレイ、いえレイシアあなたよ」
「………リサ、次のリーダーはあなたよ。大丈夫、あんたになら出来るって。……泣くなよ」
「………ケイ、あんたはね………」

 サチの卒院の前日、ささやかなお別れ会を開きました。サチは一人ひとりに言葉を掛け、孤児院は温かい涙であふれていました。

「みんな、笑って見送ってくれ。みんなの笑顔を忘れないようにしたいんだよ。じゃ、これでお別れだ。元気でなー」

 そう言い残してサチは孤児院を卒業しました。みんなは、笑顔で見送りました。

………でもサチ、就職先そこの温泉ですから、毎日でも顔合わせますよね、みんなと。



 もちろんレイシア様は、サチと特訓してあそんでいただけではありません。きちんと読み書きの勉強もしておりました。と言いますか、素敵なお姉さまになると言うモチベーションは、わずか三ヶ月で、学園入学前に覚えておくべき内容まで終わらせてしまいました。

 もっと学びたいのですか? ならば学園で習う内容にも踏み込みますか?



 最近は、読書にもハマっておられます。
 この間、王都から来た商人が、売れ残りの小説をいくつか寄贈して下さいました。

 レイシア様はファンタジー小説ラノベを読んでいろいろ疑問を持たれたようです。良い傾向ですね。空想から科学に興味を持つ。それも勉強です。

「先生、ファンタジーってなんですか?」

「そうですね。空想、現実にはないけれど、こうであったらいいな、と言う事を書いたお話を、ファンタジー小説とかラノベと言います」

「じゃあ、ここに出てくるフワフワのパンとかケーキって王都にもないのですか」

「この世界にはないですね。作者は、おいしそうな食べ物を考えたのですね」

「おいしそうなのに」

「そうですね。でもねレイシア。頭の中で考えられる事はやがて作る事ができるかも知れませんよ。科学は人の願いで発展しているのですから」

 私は科学の発展について話すのもいいかなと思いました。

「じゃ、魔法もないの」

 おや、魔法に興味を持ちましたか。

「魔法、ですか。あるにはあるのですが、そのお話みたいに便利なものではないですよ。出力調整が効かないので」

 ファンタジー小説ラノベでは、『ファイアーボール』とか『ファイアーランス』とか『ファイアーウォール』とかいろいろ考えられていますが、現実の魔法は脳筋。最大出力でぶっ放つだけなのです。一般の役に立つのは光魔法の治療ヒールくらい。調整出来ない魔法は戦争ぐらいにしか使えないのです。

「先生、魔法について教えて下さい」

 私は、ファンタジーの魔法と現実の魔法の違いについて教えました。そのついでに関数も混ぜ込ませました。レイシア様は「魔法ツマンナイ」と魔法への興味を失墜しましたが、マイナスの計算は理解した模様です。マイナス計算は学園でも余程のエリート変わり者しか興味を持たない選択科目なのですが……。まあ、いいでしょう。

 レイシア様、私の知識は全てレイシア様にお伝えしましょう。それが私をすくい上げて下さった、クリフト様への恩返しです。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚  ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。  しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。  なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!  このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。  なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。  自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!  本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。  しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。  本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。  本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。  思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!  ざまぁフラグなんて知りません!  これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。 ・本来の主人公は荷物持ち ・主人公は追放する側の勇者に転生 ・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です ・パーティー追放ものの逆側の話 ※カクヨム、ハーメルンにて掲載

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

聖女の替え玉がんばります!~ぽんこつメイドが聖女に扮してみたら超有能。偽物だけど貴公子達に溺愛されて世直しムーブが捗ります!!~

R・S・ムスカリ
恋愛
聖都の子爵邸で働くダイアナは、失敗ばかりのぽんこつメイド。 ある日、聖女である子爵の娘が行方をくらませてしまう。 娘の失踪をごまかすため、子爵は背丈と顔が瓜二つのダイアナに身代わりを命じる。 替え玉に扮することとなった彼女は、本物顔負けの聖女を演じて世間を騒がせる一方、社交界の貴公子達から熱烈なアプローチを受ける。 しかし、彼らは口にできない秘密と心の闇を抱えていた。 ダイアナは持ち前の明るさと聖女への〝なりきり〟で彼らの心の闇を払い、共に乱れた国家、宮廷、社交界を世直ししていく。 その果てに、奇跡も魔法も使えない一少女のがんばりが、真の聖女ですら成し得なかった世界の理を改革する!! ※恋愛成分よりも冒険成分が多めです。 ※中盤からマスコットキャラ(もふもふ)も登場します。 ※敵味方ともに人間キャラの死亡退場はありません。 ※本作は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアップ+」でも公開中です。 ※HJ小説大賞2021後期 二次選考通過作品です。

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

【完結】契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めたい~

九條葉月
ファンタジー
【ファンタジー1位獲得!】 【HOTランキング1位獲得!】 とある公爵との契約結婚を無事に終えたシャーロットは、夢だったお花屋さんを始めるための準備に取りかかる。 花を包むビニールがなければ似たような素材を求めてダンジョンに潜り、吸水スポンジ代わりにスライムを捕まえたり……。そうして準備を進めているのに、なぜか店の実態はお花屋さんからかけ離れていって――?

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

処理中です...