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第一章 ステキなお姉様になるよ(レイシア5歳)
3話 初めてのダンス
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教会の活動の一つに孤児院の運営がある。様々な理由で親の庇護が受けられない子供達を保護するのだが、孤児院のあり方は教会次第。神父(運営)や領主(タニマチ)の思い一つでどうとでもなってしまう。
ターナー領の孤児院は、王国一孤児に優しいと言っても過言ではない。神父が頑張っているから。領主がケチらないから。
おかげで、例えば旦那を亡くし後妻に入る未亡人に、
「子供は要らん、連れてくるな」
といった横暴な相手がいたとする。言う事を聞かなければいけない母親が、自領の孤児院を嫌がり、わざわざ他領から子供を捨てに来る。そんなことがよく起こっていた。
王都近くの裕福な地域に住んでいながら遠いど田舎まで来られる程余裕のある家の子供が、あまり豊かとは言えないターナー領の孤児院に捨てられて行くのだ。理不尽……。
世知辛い話だが、他領の孤児院は酷い所が多い。親心としては少しでも子供に幸せになって欲しいと言う事だろうが、ターナー領からしたらいい迷惑。
しかし来る孤児こばめない。
それが、人の良いターナー領の性質。
故に農村特有の『ご近所同士の相互扶助』がしっかりしているのどかな田舎の割に、ターナー領の孤児院には多くの子供達が集まっていた。
◇
教会の控室。洗礼を終えたレイシアに両親は、「よく頑張った」「素敵でした」とレイシアを褒めながら、家族でゆっくりと休憩していた。
儀式をやりきって緊張の解けたレイシアは絶え間なく話し続けていた。しばらくして興奮が収まるのを見届けてお父様が言った。
「レイシア、私があげたプレゼントの正しい使い方を神父様が教えてくれるよ。これから神父様に字を習って来なさい。素敵なレディになるためにね」
と言って石板とチョークを渡した。
レイシアは石板を胸に抱え、迎えに来た神父に連れられて教会を出た。歩きながら神父は、
「これから行く教室の中では、私の事をバリュー先生と呼ぶように。君のことはレイシアと呼びます。これは教室での先生と生徒の約束事です。よろしいですね」
と伝えた。
レイシアが、「はい、バリュー先生」と言うと神父は「よくできました」と褒めた。そして先生は教室の扉を開いた。
◇
敷地の奥に孤児院がある。食堂では子供達が自習をしていた。机と椅子が設置された広い部屋は食堂しかないから。奥にある調理場では当番の孤児が、お昼ごはんを調理していた。
「はい、皆顔を上げてこちらを見なさい」
神父がそう言うと、みんなの視線がレイシアに集まった。レイシアは神父の陰に隠れた。
「大丈夫。ほら顔を出して挨拶しなさい」
神父がレイシアの背に手をやり前に誘導する。レイシアは勇気を出して挨拶をした。
「はじめまして、レイシア・ターナーです」
とスカートを摘んでお辞儀をした。
あちらこちらから一斉に「カワイイ!」「キレイ!」「おひめさま?」「ホンモノ?」といった声があがった。
「はい、みんな静かに、今日から皆と一緒に勉強するレイシアです。仲良くするように」
「「「は~い」」」とみんな答えた。
「じゃあレイシア。そこの席に座りなさい。」
「はい。バリュー先生」
「よろしい。では授業を始めます。今日はレイシアの初めての授業です。ですから『レイシア』の文字を覚えましょう」
先生はレイシアの石板の上半分に『レイシア』と大きく書いて、レイシアに見せながら言った。
「この文字とこの文字が合わさって『レ』、この文字一つで『イ』、これとコレとこの記号を合わせて『シ』この文字は一つで『ア』です。自分の名前は大切ですからここのスペースに何度も書いて今日中に覚えましょう」
レイシアが見本の文字を、書いては消しまた書いたのを確認して、神父は周りの子供達に指導に行った。
◇
「今日の授業はここまでです。お昼ごはんの支度があるので5歳以下の子は外で待ってるように。6歳以上の子は調理場へ集合」
神父がそう言うと子供達は、
(お姫さまのような服を着たカワイイちっちゃな新人と遊べる!)
とテンション瀑上がり。
教会では、孤児がまともな仕事につけるように、礼儀作法も指導している。故に授業中は静かだったが、休み時間は無関係。
「かわいい!」「どっから来たの!」「お外行こう」「あた\#@……」「わら%&+」「√π׶∆×」と一斉に話し出すので聞き取ることも出来ないレイシア。思いっきり腕を引っ張られ外に連れて行かれた。
レイシアは屋敷の中ではいつも静かな大人としか接していなかったので、あまりの勢いにどうしていいか分からずパニック。「こっちこっち」と駆けずり回る子供達に引きずられたレイシアは思わず、
「ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャーー」
とお嬢様らしからぬ笑い声をあげてクルクル回った……。子供のパニックはいつも想像のナナメ上。
子供達は大喜び。レイシアのパニクったテンションにシンクロしたのか
「「「 ウヒャヒャヒャヒャー 」」」
と笑いながら手を繋いで大きな輪になり、グルグルグルグル回り始めた。
(お祈りした、名前も書いた。でも分からないことだらけ。そうだ輪になったままダンスしよう… これだわ!)
♬ラン ラ ラ、さあ丸くなって輪舞
ラ ラン ラン、すぐにできるから
ルン ル ルン、ああ輪になってダンス
ルルー ルルー、友達になれるよ
み~ん~な~~で~~~(ジャカジャン)♪
踊りきった。歌いきった。
壊れまくったテンションのまま、みんなは心を一つにして大声で笑った。
「「「ウヒャヒャヒャヒャー」」」
ターナー領の孤児院は、王国一孤児に優しいと言っても過言ではない。神父が頑張っているから。領主がケチらないから。
おかげで、例えば旦那を亡くし後妻に入る未亡人に、
「子供は要らん、連れてくるな」
といった横暴な相手がいたとする。言う事を聞かなければいけない母親が、自領の孤児院を嫌がり、わざわざ他領から子供を捨てに来る。そんなことがよく起こっていた。
王都近くの裕福な地域に住んでいながら遠いど田舎まで来られる程余裕のある家の子供が、あまり豊かとは言えないターナー領の孤児院に捨てられて行くのだ。理不尽……。
世知辛い話だが、他領の孤児院は酷い所が多い。親心としては少しでも子供に幸せになって欲しいと言う事だろうが、ターナー領からしたらいい迷惑。
しかし来る孤児こばめない。
それが、人の良いターナー領の性質。
故に農村特有の『ご近所同士の相互扶助』がしっかりしているのどかな田舎の割に、ターナー領の孤児院には多くの子供達が集まっていた。
◇
教会の控室。洗礼を終えたレイシアに両親は、「よく頑張った」「素敵でした」とレイシアを褒めながら、家族でゆっくりと休憩していた。
儀式をやりきって緊張の解けたレイシアは絶え間なく話し続けていた。しばらくして興奮が収まるのを見届けてお父様が言った。
「レイシア、私があげたプレゼントの正しい使い方を神父様が教えてくれるよ。これから神父様に字を習って来なさい。素敵なレディになるためにね」
と言って石板とチョークを渡した。
レイシアは石板を胸に抱え、迎えに来た神父に連れられて教会を出た。歩きながら神父は、
「これから行く教室の中では、私の事をバリュー先生と呼ぶように。君のことはレイシアと呼びます。これは教室での先生と生徒の約束事です。よろしいですね」
と伝えた。
レイシアが、「はい、バリュー先生」と言うと神父は「よくできました」と褒めた。そして先生は教室の扉を開いた。
◇
敷地の奥に孤児院がある。食堂では子供達が自習をしていた。机と椅子が設置された広い部屋は食堂しかないから。奥にある調理場では当番の孤児が、お昼ごはんを調理していた。
「はい、皆顔を上げてこちらを見なさい」
神父がそう言うと、みんなの視線がレイシアに集まった。レイシアは神父の陰に隠れた。
「大丈夫。ほら顔を出して挨拶しなさい」
神父がレイシアの背に手をやり前に誘導する。レイシアは勇気を出して挨拶をした。
「はじめまして、レイシア・ターナーです」
とスカートを摘んでお辞儀をした。
あちらこちらから一斉に「カワイイ!」「キレイ!」「おひめさま?」「ホンモノ?」といった声があがった。
「はい、みんな静かに、今日から皆と一緒に勉強するレイシアです。仲良くするように」
「「「は~い」」」とみんな答えた。
「じゃあレイシア。そこの席に座りなさい。」
「はい。バリュー先生」
「よろしい。では授業を始めます。今日はレイシアの初めての授業です。ですから『レイシア』の文字を覚えましょう」
先生はレイシアの石板の上半分に『レイシア』と大きく書いて、レイシアに見せながら言った。
「この文字とこの文字が合わさって『レ』、この文字一つで『イ』、これとコレとこの記号を合わせて『シ』この文字は一つで『ア』です。自分の名前は大切ですからここのスペースに何度も書いて今日中に覚えましょう」
レイシアが見本の文字を、書いては消しまた書いたのを確認して、神父は周りの子供達に指導に行った。
◇
「今日の授業はここまでです。お昼ごはんの支度があるので5歳以下の子は外で待ってるように。6歳以上の子は調理場へ集合」
神父がそう言うと子供達は、
(お姫さまのような服を着たカワイイちっちゃな新人と遊べる!)
とテンション瀑上がり。
教会では、孤児がまともな仕事につけるように、礼儀作法も指導している。故に授業中は静かだったが、休み時間は無関係。
「かわいい!」「どっから来たの!」「お外行こう」「あた\#@……」「わら%&+」「√π׶∆×」と一斉に話し出すので聞き取ることも出来ないレイシア。思いっきり腕を引っ張られ外に連れて行かれた。
レイシアは屋敷の中ではいつも静かな大人としか接していなかったので、あまりの勢いにどうしていいか分からずパニック。「こっちこっち」と駆けずり回る子供達に引きずられたレイシアは思わず、
「ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャーー」
とお嬢様らしからぬ笑い声をあげてクルクル回った……。子供のパニックはいつも想像のナナメ上。
子供達は大喜び。レイシアのパニクったテンションにシンクロしたのか
「「「 ウヒャヒャヒャヒャー 」」」
と笑いながら手を繋いで大きな輪になり、グルグルグルグル回り始めた。
(お祈りした、名前も書いた。でも分からないことだらけ。そうだ輪になったままダンスしよう… これだわ!)
♬ラン ラ ラ、さあ丸くなって輪舞
ラ ラン ラン、すぐにできるから
ルン ル ルン、ああ輪になってダンス
ルルー ルルー、友達になれるよ
み~ん~な~~で~~~(ジャカジャン)♪
踊りきった。歌いきった。
壊れまくったテンションのまま、みんなは心を一つにして大声で笑った。
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