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第四章:燃えつきろ! 男女大競演舞会編
26話:戦いの幕開け
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【開会式】
トレビアンの校舎裏にはそれなりに大きな山や森林が広がっているのだが、これがすべて学校の敷地だと聞いたときにはさすがの俺も驚いた。
この深く巨大な森の奥にはトレビアンの所有する様々な施設が点在しているらしい。
収容人数五万人と言われるこの競技場もそのうちの一つで、俺たちは広いフィールドの中央に立ちながら、その圧倒的なスケールにただただ唖然とするばかりだった。
「トレビアンの敷地内にこんな大それた建物があったなんて……」
と、みんな驚きまくっている。
どこからやってきたのか、観客席には老若男女津々浦々の満員御礼で、大歓声がものすごった。
俺達は戸惑いながらも、選手用に用意された観覧席に足を運んだ。
と、競技場の中央に冴子先生がマイクを持って現れた。
いまから開会式が行われるらしい。
「開会式、長いのかな……」
俺はげんなりと肩を落としてぼやいた。
「きっと校長先生の話とかあるのよ」
「ダラダラとするのはイヤだねぇ」
みんなもやる気がなさそうにその場でダラダラとしていたが、冴子先生がマイクを持ってキリっと立つと、さすがに黙って見守った。
開会式スタート。
「男女大競演舞会。開催しますっ!」
以上。
開会式終わり。
冴子先生はそう宣言すると、さっさと次のスケジュールへと進んでいった。
「続いて、さっそく試合を始めたいと思います!」
やけにあっさりとした開会宣言を終えて、もうすぐにでも試合が始まる流れになっていた。
「さ、さすがにこれは短すぎやしないか?」
「テンポがいいね……」
たじろぐ俺たちを、観覧席の遠くに控える園田いちこはにっこりと笑って楽しそうに眺めている。
その笑顔はまるで、
「無駄を省くのがトレビアン式ですわ」
と、言っているかのように見えた。
★ ★ ★
開会式を終え、試合開始を待っていたら、選手用の観戦席に意外な人物が現れた。
「お、おまえはっ!」
俺は叫んだ。
みんなの前に現れたその人物は背が高く、魅惑的で肉感的なボディを誇る、青白いヒゲがチャームポイントの俺たちの仲間――榊松原レイだった。
どうしてレイが……。
「れ、レイちゃん! 大丈夫なの?」
俺たちの驚きと喜びの歓声に、レイは元気いっぱいにこたえる
「みんなが頑張ってるのにあたしだけ休んでるわけにはいかないわっ」
ピンクの鉢巻に黄色いメガホンを持ったその姿はまさに応援団長。
「応援。応援をするのよ! 絶対にあたしたち試合に勝って、トレビアンに居座り続けてやるのよーっ!」
「な、なんだかその言い方はイメージ悪いよ……」
いつも通りにツッコミを入れる俺。
いつものノリ。
いつもの笑顔。
レイは満足そうにうなずくと、目尻にたまった涙を拭いて、
「みんな、心配かけてごめんね」
と言うのだった。
【開始】
そして、ついに試合が始まろうとしていた。
「では、両チーム。三人の勇者、前へ」
冴子先生の合図とともに、選抜に選ばれたアキラと横峯センパイとシオンの三人は、広大な競技場の中央に歩みを進める。
対するトレビアン側の選手も、堂々とした姿で決戦の地へと赴いた。
三人の勇者が向かい合わせて立ち並ぶ。
知力、体力、時の運と決められた相手同士が目の前に対峙し、互いの視線はすでに熱い火花を散らしていた。
シオンには如月愛子――。
「如月さん……!」
「決着、つける」
横峯センパイには鈴原真実――。
「横峯センパイ……」
「私の相手はあなたなのね」
そしてアキラには……メガネでそばかすがトレードマークの、ちょっと地味めな女の子が相手として待ち構えていた。
「……だ、だれ?」
アキラの疑問符に地味子ちゃんも対抗して、
「あなたこそ誰ですか」
と。
試合前の睨み合いでもっとも白熱していたのは、ある意味、この二人だったのかもしれない。
【運・電光石火の決着】
知力と体力のグループはいったん選手観覧席へと下がり、運の選手だけがフィールドの真ん中に残った。
「では第一の戦いをはじめます。選手は道町アキラさんと鈴木うららさん!」
この子、鈴木うららさんって言うのか……。
互いに礼をすると、二人の間に一つの移動テーブルが運ばれてきた。
テーブルの上にはガラポンが乗っかっており、冴子先生はこれを指さして、
「運の勝負は――このガラポンをガラガラと回して、赤い玉を出したほうが勝ちとします!」
と言った。
「じ、地味だっ!」
その場にいる誰もがそう思ったに違いない。
ガラポンで勝負だなんて……。
男女大競演舞会――その過酷な試合内容とはこの程度のものなのか?
いや、そんなハズはない。
「では、順番にガラポンを回してください!」
冴子先生の指示に従い、アキラとうららは順番にガラポンを回した。
ガラガラガラ……ポンっ!
「私は……白でした」
「ん……。赤だ」
アキラは赤い玉を空にかざし、まじまじと見つめた。
さあ、ここからいったいどんなどんでん返しがあるのだろう?
そう意気込んでいたのだが、
「赤! それは勝利の玉です。勝者、道町アキラ!」
冴子先生が勝利宣言を下し、会場がものすごい絶叫に包まれた。
ワーワーワーっ!
油断はならぬ、油断はならぬと思いながら、結局なにごとも無く勝者として会場を追い出されたアキラは、
「もしかして本当にこれで終わり――?」
と、放心状態で選手観覧席まで戻っていった。
「やったね、アキラちゃん!」
「アキラ、おめでとう!」
勝利に湧き上がったみんなの前でもなぜか喜べないアキラ。
観覧席に座り、頭を抱えてこう嘆くのだった。
「なんというか、ドラマチックのかけらもない! もっと、なんかこう、私のキャラを全面に押し出した展開を期待してたのにぃっ!」
そんなアキラに俺は言ってやった。
「キャラなら全面に押し出してたじゃん。ちゃんと地味だったよ」
その後、俺はアキラにボコボコにされたのは言うまでもない。
トレビアンの校舎裏にはそれなりに大きな山や森林が広がっているのだが、これがすべて学校の敷地だと聞いたときにはさすがの俺も驚いた。
この深く巨大な森の奥にはトレビアンの所有する様々な施設が点在しているらしい。
収容人数五万人と言われるこの競技場もそのうちの一つで、俺たちは広いフィールドの中央に立ちながら、その圧倒的なスケールにただただ唖然とするばかりだった。
「トレビアンの敷地内にこんな大それた建物があったなんて……」
と、みんな驚きまくっている。
どこからやってきたのか、観客席には老若男女津々浦々の満員御礼で、大歓声がものすごった。
俺達は戸惑いながらも、選手用に用意された観覧席に足を運んだ。
と、競技場の中央に冴子先生がマイクを持って現れた。
いまから開会式が行われるらしい。
「開会式、長いのかな……」
俺はげんなりと肩を落としてぼやいた。
「きっと校長先生の話とかあるのよ」
「ダラダラとするのはイヤだねぇ」
みんなもやる気がなさそうにその場でダラダラとしていたが、冴子先生がマイクを持ってキリっと立つと、さすがに黙って見守った。
開会式スタート。
「男女大競演舞会。開催しますっ!」
以上。
開会式終わり。
冴子先生はそう宣言すると、さっさと次のスケジュールへと進んでいった。
「続いて、さっそく試合を始めたいと思います!」
やけにあっさりとした開会宣言を終えて、もうすぐにでも試合が始まる流れになっていた。
「さ、さすがにこれは短すぎやしないか?」
「テンポがいいね……」
たじろぐ俺たちを、観覧席の遠くに控える園田いちこはにっこりと笑って楽しそうに眺めている。
その笑顔はまるで、
「無駄を省くのがトレビアン式ですわ」
と、言っているかのように見えた。
★ ★ ★
開会式を終え、試合開始を待っていたら、選手用の観戦席に意外な人物が現れた。
「お、おまえはっ!」
俺は叫んだ。
みんなの前に現れたその人物は背が高く、魅惑的で肉感的なボディを誇る、青白いヒゲがチャームポイントの俺たちの仲間――榊松原レイだった。
どうしてレイが……。
「れ、レイちゃん! 大丈夫なの?」
俺たちの驚きと喜びの歓声に、レイは元気いっぱいにこたえる
「みんなが頑張ってるのにあたしだけ休んでるわけにはいかないわっ」
ピンクの鉢巻に黄色いメガホンを持ったその姿はまさに応援団長。
「応援。応援をするのよ! 絶対にあたしたち試合に勝って、トレビアンに居座り続けてやるのよーっ!」
「な、なんだかその言い方はイメージ悪いよ……」
いつも通りにツッコミを入れる俺。
いつものノリ。
いつもの笑顔。
レイは満足そうにうなずくと、目尻にたまった涙を拭いて、
「みんな、心配かけてごめんね」
と言うのだった。
【開始】
そして、ついに試合が始まろうとしていた。
「では、両チーム。三人の勇者、前へ」
冴子先生の合図とともに、選抜に選ばれたアキラと横峯センパイとシオンの三人は、広大な競技場の中央に歩みを進める。
対するトレビアン側の選手も、堂々とした姿で決戦の地へと赴いた。
三人の勇者が向かい合わせて立ち並ぶ。
知力、体力、時の運と決められた相手同士が目の前に対峙し、互いの視線はすでに熱い火花を散らしていた。
シオンには如月愛子――。
「如月さん……!」
「決着、つける」
横峯センパイには鈴原真実――。
「横峯センパイ……」
「私の相手はあなたなのね」
そしてアキラには……メガネでそばかすがトレードマークの、ちょっと地味めな女の子が相手として待ち構えていた。
「……だ、だれ?」
アキラの疑問符に地味子ちゃんも対抗して、
「あなたこそ誰ですか」
と。
試合前の睨み合いでもっとも白熱していたのは、ある意味、この二人だったのかもしれない。
【運・電光石火の決着】
知力と体力のグループはいったん選手観覧席へと下がり、運の選手だけがフィールドの真ん中に残った。
「では第一の戦いをはじめます。選手は道町アキラさんと鈴木うららさん!」
この子、鈴木うららさんって言うのか……。
互いに礼をすると、二人の間に一つの移動テーブルが運ばれてきた。
テーブルの上にはガラポンが乗っかっており、冴子先生はこれを指さして、
「運の勝負は――このガラポンをガラガラと回して、赤い玉を出したほうが勝ちとします!」
と言った。
「じ、地味だっ!」
その場にいる誰もがそう思ったに違いない。
ガラポンで勝負だなんて……。
男女大競演舞会――その過酷な試合内容とはこの程度のものなのか?
いや、そんなハズはない。
「では、順番にガラポンを回してください!」
冴子先生の指示に従い、アキラとうららは順番にガラポンを回した。
ガラガラガラ……ポンっ!
「私は……白でした」
「ん……。赤だ」
アキラは赤い玉を空にかざし、まじまじと見つめた。
さあ、ここからいったいどんなどんでん返しがあるのだろう?
そう意気込んでいたのだが、
「赤! それは勝利の玉です。勝者、道町アキラ!」
冴子先生が勝利宣言を下し、会場がものすごい絶叫に包まれた。
ワーワーワーっ!
油断はならぬ、油断はならぬと思いながら、結局なにごとも無く勝者として会場を追い出されたアキラは、
「もしかして本当にこれで終わり――?」
と、放心状態で選手観覧席まで戻っていった。
「やったね、アキラちゃん!」
「アキラ、おめでとう!」
勝利に湧き上がったみんなの前でもなぜか喜べないアキラ。
観覧席に座り、頭を抱えてこう嘆くのだった。
「なんというか、ドラマチックのかけらもない! もっと、なんかこう、私のキャラを全面に押し出した展開を期待してたのにぃっ!」
そんなアキラに俺は言ってやった。
「キャラなら全面に押し出してたじゃん。ちゃんと地味だったよ」
その後、俺はアキラにボコボコにされたのは言うまでもない。
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