手をつないで(BL)

kotori

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Valentine編

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「……淳から貰ったの?このチョコ」
「あ、うん。上手にできてるよね」

電話を切ったこうちゃんは、にこにこ笑って言った。

「……まぁ、あいつ何気に器用だから…」
「羨ましいんだ、俺料理とか全く出来ないから…」

淳を羨ましがるって、相当だな…。

……にしても、そっか…これはこうちゃんのチョコじゃないのか…

って何ガッカリしてんの俺…。
でもこんな日に呼び出されたら、やっぱ期待しちゃうじゃん…。

……いやいや普通、男がチョコあげたりしないから…

「それで…、買ったもので悪いんだけど…」

ごそごそと鞄から取り出された、小さな水色の包み。

「貰ってくれる…?」
「……え?」
「あっ、あの、ほら俺の学校ってこういうの結構、普通で…」

こうちゃんは急に慌てだす。

「吉岡くんには文化祭の時助けてもらったし、そのお礼ってゆうか…」

真っ赤なほっぺが小さな子どもみたいで、ほんとかわいい。

「ありがと。嬉しい」

その小さな包みを受け取ると、こうちゃんはホッとしたように笑った。

……やっべえ…

どうしよう、本気で嬉しい…。
こうちゃんが、俺の為にチョコを…。



「……あれ?」

ふと気づいた。

「え?」
「……さっきこうちゃん電話した時…あいつどこにいた?」
「え?家みたいだったけど…」

もしかしてあいつら、一緒にいたんじゃね…?

「………」

なんかすごく嫌な予感がするんですけど…。

「吉岡くん?」

まぁいっか…。

「あ…や、なんでもない。てゆうかさ…リク、でいいよ?」
「リク、くん…」
「くんいらねーって、タメだし。こうちゃんは名前、なんていうの?」
「航太」
「じゃあコウタって、呼んでいい?」
「……うん!」

俺たちがそんな爽やか青春ドラマみたいなことをやっている頃…淳はやっぱりとんでもない目に遭っていたらしい。





数日後、ファミレス。

「……あん時はマジ死ぬかと思った…」
「……想像したくねーな…」

リクはストローの袋を結びながら言った。
巽はキレると、何をするかわからない。

「……まぁでもよかったじゃん、元カノの件も誤解だったわけだし」
「……うん」

元カノと手を繋いでた本当の理由。
それは元カノが、浮気した今カレを懲らしめる為の策だったらしい。
リクが本人に直接訊いて、確かめてくれた。

なんでそれを言わなかったのかと問い詰めると、言い訳みたいで嫌だったんだよと巽は珍しく気まずそうな顔をして答えた。

「前に自分から振った手前、頼まれたら断れなかったと。なんだかんだ言って女には優しいよなあ、あいつ」
「それはそれで、なんか複雑だけどな…あ、なぁ、コレなんて書いてあるかわかる?」
「んー?なにこれ、英語じゃねーな…フランス語…?」
「巽、どんなに頼んでも教えてくんねーの…あのどケチ野郎…」
「……誰がケチだって?」

いつの間にかドリンクバーから戻ってきていた巽。

「金がないって言うから、メシ食わせてやってんのに」
「……ごめんなさい」
「まだ躾がたんねーみたいだな」
「……!!それはイヤああああ!!」



《moi-pour-tojours-elle-sera-en》

俺のもの。



end.
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