nesessary(BL)

kotori

文字の大きさ
上 下
2 / 84

2

しおりを挟む
 
初めは、つきあうつもりなんかなかった。

男で、しかもガキ。
関係を持ったのは単なる成り行きだったのに、なぜかこんな事になっている。

……何やってんのかね、俺も…

店が終わり、飲みに行く誘いを断って部屋に帰った。





「……おかえりなさい」

伸ばされる、白くて細い腕。

「先に寝とけって言ったろ?」
「……まだ眠くないもん」

そう言いながらしがみついてくる祐希を、はいはいと抱きしめる。

「メシ、食ったか?」
「うん」

部屋の隅に置いてある、コンビニのビニール袋。
中身は多分大量の弁当の残がいだ。

「……おまえあれ、全部食ったの?」
「うん。皐月のぶん、冷蔵庫にあるよ」
「……さんきゅ」

今の仕事を始めてから夕飯はあまり食べなくなった。
だからいらないって言ってるのに、祐希は俺のぶんまで買ってくる。

「……てか、こんなに食えねえよ」
「じゃあ一緒に食べる…」

……まだ食う気か…

結局祐希を抱っこしたままビールを飲み、テレビを見た。

「……おい、寝るならベットに行け」
「……う、ん…」

真夜中の三時過ぎ。
お子様は寝てる時間だ。
また溜め息をついてウトウトしている祐希の手から箸を取り、ベットに運ぶ。
布団をかけたら、一緒に寝ると泣きそうな顔でぐずられた。

……ったく、何才児だよ

「……わかったから」

しばらく髪を撫でていると、祐希はようやく安心したように目を閉じる。
そしてすぐに、規則正しい寝息が聞こえてきた。

……ほんと、めんどくせえガキ…

だけど放っておけない理由があるのだ。




 
祐希と初めて会ったのは、もう三年以上前だ。
那波が店に連れてきた。
俺と那波は結構長い付き合いで、今の店で一緒にバイトをしていた事もあった。

当時のあいつはかなり荒れていて、特にそっちの方は目もあてられない程の酷さだった。
だから二人は一応つきあってはいたけれど、あまり上手くはいってなかったんだと思う。

――他に好きな奴がいるって言ってんのに…代わりでもいいって言うんだよ、あいつ…

那波は根はいい奴なので、突き放すことが出来ずに悩んでいたようだった。
それでつかず離れずの関係がずるずると続いていたが、それも最近ようやくカタがついた。
というのも、那波の長年の片思いがようやく実った。
これには祐希も諦めるほかなかったらしい。





――……どうします?

ある日、祐希が一人で店に来ていた。
客が少なくて暇だったのでカウンターで(主に那波の)話を聞いてやってたら、疲れたのか途中で眠ってしまった。

――いいよ、俺が送ってく

バイトの子を先に帰すと、やれやれと肩を揺すった。

――ほら、起きろよ

――……んぅ…

――家どこだよ、送ってくから

祐希はカウンターから顔を上げ、目を擦りながら那波?と呟いた。



あの時、自分のなかで湧きあがった感情はなんだったのか。
それは今でもよくわからない。

照明を落とした薄暗い店内に浮かびあがる、白い輪郭。
涙に濡れた瞳は澄んでいて、幼さが残るその表情からは妙な色気が醸しだされていた。
気づいたら、俺はまるで誘いこまれるように小さく開かれた唇に口づけていた。

――……ん、ぅ…

祐希は一瞬驚いたように身じろいだけど、キスを続けているとそのまま身体を預けてきた。
そうなると、もう後には引けなくなった。

その日、初めて祐希と寝た。
そしてこの妙な関係は始まった。

男と関係を持つことに躊躇いはあったし、正直面倒なことになったと思ったりもしたけど。
祐希と過ごす時間は、案外愉しかった。
表情や感情がころころ変わって、見ていて飽きない。

甘えたがりでヤキモチやきで、すぐ拗ねるところもかわいいと思うし、ワガママで生意気なところに辟易することもあるけど叱れば大抵は素直に謝るし。

それに何より、身体の相性がいい。
祐希はベットのなかでは申し分なくかわいい。
あいつはドMだ、たぶん。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...