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エピローグ
しおりを挟むある朝、あの野球の試合の結果がどうしても気になって那波に訊いてみた。
「覚えてないの?」
「うん」
「おまえあの時すごかったんだぜ?奇跡の一打!」
「……まじで?!」
「バントだけど」
「……ははは(引き笑い)」
「まぁでも、それが成功したお陰で俺が出て、逆転ホームランみたいな」
「……結局おいしいとこは全部おまえに持ってかれるんだな、俺は…」
……ん?
「てゆうかおまえあの時、もしダメでも俺がなんとかするって言ってなかった?」
まかせとけっていうその言葉に後押しされて、俺は打席に立ったような…。
「……言ったっけ?そんなこと」
「……けど、よく考えたら俺がアウトになった時点でおまえ出れなかったんじゃん」
「……ついカッコつけたんじゃね?」
「……おまえさ…」
昔からほんっと、いいかげん…。
「……そういえば、」
味噌汁を飲みながら、那波が言う。
「俺この間、あの梨香って子と会ったんだよ」
「ふぅん、どこで?」
「駅前」
梨香は仁王立ちで、あんたこうちゃんを幸せにしないと絶対許さない、今度泣かせたりしたら全身全霊で呪ってやると息巻いていたらしい。
それはさぞかし、迫力があっただろう。
「……てゆうかアレ目が本気だったよ。俺マジで怖かったもん」
「もう呪われてるかもな」
「……やっぱり?」
「これからは、せいぜい頑張れよ」
「……おう」
真面目な顔で頷いた那波を見て、思わず吹きだす。
「あ、そうだ。今度の旅行のことだけどさ…」
なんてことはない、平凡な朝。
俺は、なんだかとても幸せだった。
end.
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