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Happiness
5.電話
しおりを挟む今日は近所のお魚屋さんで、ブリの切り身を買ってきた。
いつも来てくれるからっておじさんがオマケしてくれて、ゴキゲンで帰ってきたんだけど…。
「………」
『――なる?』
「…えっ、あ、はいっ」
心配そうなカズちゃんの声に、はっとする。
『ちゃんと戸締まりをするんだよ?』
「大丈夫です。お仕事頑張ってください」
できるだけ明るく言うと、電話を切った。
……あーあ…
煮物は苦手だけど、料理の本を見ながら頑張って作ったのに…。
「………」
……なんだか、寂しい…
誰かを待ってる時には、そんなふうに思わないのに…。
基本的に、なるはこの部屋に一人でいる事が多い。
いっちゃんは時間が不規則だし、カズちゃんも夜勤があったり今日みたいに急に帰れなくなったりする事もあるので、慣れてはいる。
お仕事だし仕方がないって、わかってるんだけど。
ぼんやりと、準備が整った食卓を眺めた。
ここにくる前は、いつも一人だった。
おうちでも一人、学校でも一人。
なるは、いないものだと思われてた。
というより、いらないものだと思われてたんだ。
急に食欲がなくなって、テーブルに並べていた食事を全部冷蔵庫にしまった。
もう寝よう、と思った。
これ以上いろいろ思い出す前に、眠ってしまおう。
お風呂に入って歯を磨いて、前にいっちゃんがお店の人から貰ってきた猫のぬいぐるみを抱えてベットに入る。
シーツが冷たい。
なかなか眠れなくて、でもようやくウトウトし始めた頃に、電話が鳴った。
「……もしもし…」
『――なる?』
「カズちゃん…?お仕事は…?」
ごしごしと目をこすりながら、枕元の灯りをつける。
『休憩中。ごめん、寝てた?』
「ううん…どうしたの?」
『まだ起きてたら、ゲームをして遊ぼうと思ったんだけど』
「ゲーム…?」
『そう。寂しくなくなるゲーム』
電話口で、カズちゃんは楽しそうに言った。
「……か、カズちゃ…」
『ちゃんと言われた通りにしてる?』
「う……ん…」
『いい子だね、なる』
カズちゃんの優しい声が部屋に響く。
ハンズフリーに設定した携帯は、シーツの上に置いてあった。
「あ…あんッ…」
『勃った?』
「……は、はい…」
ベタベタになった手を見て答える。
……なんか、恥ずかしい…
別に、見られてるわけじゃないのに…。
『じゃあ、後ろに指を挿れてごらん?』
「え…」
『ゆっくり、一本ずつだよ?』
「……は、い…」
言われた通りに、ソコに手をもっていく。
『入りそう?』
「…………、」
『ちゃんとローションを使うんだよ?』
「……は、い…」
息を吐き出しながら、答えた。
『……いやらしいね。もうそんなに濡れてるの?』
「………!」
……なんでわかるの…?
『指を動かして』
「……んっ、…ッ…」
『なるがキモチいいとこ、探してごらん?』
……キモチがいい、とこ?
「……、はぁ、っ、」
……どうしよう……腰が、動いちゃう…
「……ンっ!」
びくんっ、と身体が震えた。
「ふあっ…!」
『見つけた?まだ前は、触っちゃダメだよ?』
「う…」
伸ばしかけた手を、慌てて引っ込める。
『アレ、用意できてる?』
「う、うん…、でも」
『大丈夫。なるだって、もっとキモチよくなりたいでしょ?』
カズちゃんの言葉に、ごくりと息を飲む。
そしておそるおそる、傍に置いてあった極太のバイブに触れた。
『息を吐きながら、ゆっくりね』
「……はい…」
中屈みになって、それをあてがう。
「……!」
ひやりとした感触。
……怖い…
「かっ、カズちゃん、やっぱりムリ…」
ほとんど泣きそうになりながら言った。
『なる、目を閉じて?』
「……、こう?」
『そう。そのまま、乳首を触って』
シャツの中に手を入れて、自分の小さな突起に触れる。
「……んッ」
ピリッとした甘い痺れが背筋にはしった。
「あ…」
『思い出して?俺はいつもどんなふうに、触ってた?』
……カズちゃん?カズちゃんは…
指で優しく揉んだり、ざらざらした舌で舐めたり…。
「……はぁっ…」
たまに強く吸って、軽く歯をたてて…。
「あ、あっ…んッ」
またビクン、と身体が震える。
『なる…なるはかわいいね…今すぐ帰って、抱きしめたい』
「カズ、ちゃん…」
『でも、無理だから…、だから今日は、ソレを俺の代わりにして?』
「……んッ、あ、ああっ!」
なかに、ズブズブと押し込まれていくバイブ。
「あ、あ…カズちゃ…っ!」
『なる…、』
「やっ、あ、入って、く…!」
いつもと違う感覚に、身体がついていけない。
「あ、あっ…!…どう、しよ…」
涙がぽろぽろ流れた。
こわい…。
『なる、落ち着いて?大丈夫だから』
返事の代わりにヒック、としゃっくりをあげた。
『泣かないで。ほら、目を閉じて?』
「………」
『俺を想像してごらん?』
「……カズちゃ…ん…」
カズちゃんは、いつも優しい。
エッチの時はちょっと意地悪だし、変なコトもいっぱいするけど…。
なるがキモチいいこともいっぱいしてくれる。
ぎゅうって抱きしめて、よくできたね、って誉めてくれる…。
……だからなるも…カズちゃんに、キモチよくなって欲しくて…
「……カズちゃん…」
『ん?』
「……カズちゃんのが、欲しいよぅ…」
『……なる…』
わがまま言ったらだめって、わかってるけど…。
『……いいよ、帰ったら、いっぱいあげる。だから今は…ソレで我慢して?なるはいい子だから、できるよね?』
「はい…」
『ソレを俺のだと思って、動かしてごらん?』
半分挿れたままのバイブを、両手で握る。
「……んっ、ああッ!」
……カズちゃんっ…
目を閉じて、必死でバイブを押したり引いたりした。
その度に後ろから、じゅるじゅるといやらしい音が聞こえる。
「、あ、あ、あっ!」
さっきまで冷たかったソレは、もうすっかりなるの体温に馴染んでいた。
「カズちゃ、おっき…ひあッ、あ!」
『……なる、』
「あんッ、んッ」
さっき見つけたキモチいいところにそれを擦り付けると、もう止められなかった。
「かっ、カズちゃん…っ、すご…い、あッ、もう、だめぇ…ッ!」
『まだ、ダメだよ?』
「で、でも…っ」
『俺がいいっていうまで、待って。なる、スイッチはわかる?』
「ス…イッチ?」
『コードの先についてるから、押してごらん?』
もうワケがわからなくなって、それらしきものを押した。
「ッ…!あ、ああああっ!!」
強すぎる刺激に、頭が真っ白になる。
「いやぁぁっ!カズちゃ…!!」
『……っ、』
「あ、も、もう、だめぇっ…!あ…、んああッ!」
『なる…っ』
もう我慢なんてできるわけがなくて、夢中で自分のモノを扱いた。
「あっ、あっ、イッちゃうっ、カズちゃ、ああっ、ぁッ!!」
『……っ!』
自分の指で先端を擦ると、どぴゅっと白い液体が溢れた。
「ひああっ!あ、ぁ、!!」
のけぞった身体がビクビクっと震えて、きゅうっと後ろが締まる。
「あ…、ぁ…」
それはいつまでたっても終わらなくて、たまらずスイッチを切った。
はあはあと息を切らしながら、前のめりにうずくまる。
『……なる…イっちゃた…?』
「……っ、はぁっ…、ご、ごめん、なさい…」
カズちゃんにいいって、言われてないのに…。
『いいよ、謝らなくて。ごめん、びっくりしたね…いっぱい、出た?』
「……う、ん…」
『そう。じゃあ、もう一回しようか』
………え?!
びっくりして顔を上げる。
『まだ、抜いてないよね?』
「う、うん…」
……で、でも…
『ゲームはまだ、終わってないよ?』
カズちゃんは楽しそうに笑った。
結局、カズちゃんの休憩時間が終わるまでゲームは続いた。
電話を切った途端に力尽きて、そのまま眠ろうとした頃にいっちゃんが帰ってきて…そんな状態のなるを放っておくはずもなく…なるの長い一日は、まだ終わりそうになかった。
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