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第1章
10.
しおりを挟む相変わらず混んでいる電車のなかで、俺は頭痛に悩まされていた。
勿論二日酔いではない。
朝、いつもの時間に目が覚めた。
隣りには熟睡している海斗の姿――それは日常的な光景だったけど、なんだか腑に落ちない。
その理由に気づいたのは、歯を磨いている時だった。
「……海斗!!」
歯ブラシを持ったままベットに駆け寄る。
「……んー…はよ、」
「俺昨日、何時に帰ってきた?!」
「……は?」
海斗は眠たそうに目を擦っている。
「……どうやって帰ってきたのか、全然覚えてないんだけど」
「……まじ?そういや前も、そうだったっけ…」
二時頃だよ、と海斗。
「カハラさんって人が送ってくれたんだよ。寝てるおまえをおぶって」
「……っ」
全身から血の気が引く。
「おまえ、ほんとに覚えてないの?大変だったんだぜ、一緒に寝るとか言って全然寝ねーし」
「……昨日華原さんとご飯食べてたら、偶然会社の人たちが店に来て…」
必死になって昨日の記憶を呼び起こす。
「ビールを勧められて、断れなくて…」
「……え、じゃあおまえ、あの人と二人で飯…っておい、」
「俺もう行くから!今日は自分で起きろよ!」
俺は急いで支度をすると、朝食も摂らずに部屋を出た。
……サイアクだ、
吊り革にぶらさがりながら大きな溜め息を吐く。
以前ユカリさんの店で飲んで、翌日海斗からその時の自分の様子を聞かされた時は本当に死にたくなった。
あれ以来一滴も飲んでなかったのに…なんでよりにもよって、と頭を抱える。
……まじどうしよう…会社行きたくねー…
会社に着いて重たい気分でエレベーターが来るのを待ってると、ぽんと肩を叩かれた。
「よう、」
「……室長!」
慌てる俺に対し、彼は今日も爽やかだ。
「あっあの俺、昨日…」
「あぁ、気にするな」
酔っぱらいには慣れてるから、と華原さんは笑う。
「……すみません…」
穴があるなら入りたいとは、まさにこういう状況の事をいうんだろう。
その時、ポーンという音とともにエレベーターの扉が開いた。
「………」
時間が早いからか、上昇するエレベーターには誰も乗ってこない。
沈黙に耐えかねた俺は、おそるおそる口を開いた。
「……あの、昨日の事なんですけど…俺、なんか変な事…しませんでした?」
「変な事ってどんな事だ?」
「いえ、ちょっと…具体的には」
言えるワケがない。
すると華原さんは不思議そうな顔で俺を見た。
「もしかして、覚えてないのか?」
「……はい」
「そうか…」
胃がきりきりと痛むのを堪えながら、彼の言葉の続きを待つ。
「いや、みんな驚いてたよ」
……あああやっぱり…
くらりと眩暈がした。
「ビールをジョッキ半分飲んだと思ったら、その場でこてっと寝やがって」
華原さんは溜め息を吐きながら言った。
「しかも全然起きないし。しばらく放っておいたけど、さすがに置いては帰れないからなぁ」
……え、
「……それだけ、ですか?」
「それだけっておまえ、運ぶの大変だったんだぞ?おまえんとこエレベーターもないし、おかげで筋肉痛だ」
華原さんは苦笑いを浮かべてたけど、俺は安堵のあまりその場にしゃがみこみそうになった。
「だけど意外だったな、三宅の友達」
「……友達?」
「ほら、昨日家にいた…一緒に住んでるんだろ?」
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