sweet days

きみのとなり

2

　
……やっぱりわからない…

帰り道。

きりきりと痛む胃を押さえながら考える。
目の前を歩く甲田さんは、きっと誰が見てもかっこよくて、おしゃれだ。
一緒に街を歩いてると、すれ違う人たちに振り返られるし…。
それに比べて僕は…地味でクラスの中でもまったく目立たないタイプだ。
平凡としか言いようのない容姿だし、取り柄だってなんにもない…。

なのに僕は今、なぜか甲田さんとつきあっている(ことになっている)。

「………」

はああと深い溜め息を吐いた瞬間、甲田さんが振りかえった。

「寒くねぇ？」
「え？！ええっと、だ、大丈夫です…」

どもりながら、なんとか答える。

「………」

甲田さんはおもむろに自分のマフラーを外すと、僕の首にぐるぐると巻きつけた。

「えっ、ちょっ…、」

驚いて戸惑う僕を他所に、さっさと歩きだす。

「………」

マフラーは、とても暖かかった。



「……あ、あの」
「ん？」
「よかったら、これ…」

ドキドキしながら差し出したのは、自分がつけていた手袋。

「……いい」
「……あ、そ、そうですよね…」

……何やってんだろう、僕…

ずっとコートのポケットに手を入れてるからもしかしたら寒いのかなとか、マフラーのお返しにとかいろいろ考えたけど、検討違いもいいとこだった。
そもそもこんなフリース素材の安物の手袋、甲田さんが使うわけないのに…。

自分のあまりのバカさ加減に落ち込んでいると、かわりにさと甲田さんは言った。

「手、つないでいい？」
「……え」

返事をする前に、僕の手はすっぽりと甲田さんの手の中に収まった。

「………」
「………」

甲田さんはすべてにおいてマイペースだから、何を考えてるのか僕には全然わからない。

……でも…たぶん、悪い人じゃない…とは、思う…

「……あったかい、です」
「うん」

僕は甲田さんの笑顔を見て心臓をばくばくさせながら、そっと手袋をポケットに入れた。



end