迷子猫(BL)

kotori

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第3章

8.

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「………。よく、わかんない」

あの時の海斗は怒ってたけど悲しそうで、それを見たらなんだか胸が苦しくなって。
疑われた事よりも、そんな顔をさせてしまった自分に腹がたった。

「……なんでだろ。あんたといたら俺、ちょっと変になるみたい」
「……変?」
「なんか、どうでもいい事が気になって苛々するし」

自分で自分が、よくわかんなくなるってゆうか。

「……それは、俺と一緒にいたくないって意味?」
「……そうじゃないけど」

そうじゃないから、困ってるんだけど。

「……先輩が、それはヤキモチだって」
「……は?」

海斗が立ち止まって俺を見た。

「……だから俺、ヤキモチやいてるんだって」
「なんで?てゆうか、誰に?」
「……忘れた」

うそつけ、と海斗。

「……てゆうか、俺も」
「……は?」
「そんなおまえと先輩に、ヤキモチやいた」
「………」
「………」

顔を見合わせて、同時に噴きだす。

「バカじゃん、俺ら」
「ほんとだな」





「何が気になる?」
「は?」

部屋に戻ると、海斗は俺を抱っこしながら言った。

「さっき、気になって苛々するって言ってたじゃん。俺に嫌なところがあるなら、なおすから」
「……別にない」
「じゃあ、誰が気になんだよ?」
「………」

ぶにゅっと頬をつねられる。

「いひゃい、はなへ」
「じゃあ答えろ」
「………」

じんじんする頬を手でさすりながら、ぽつりと呟く。

「……元カノ?」
「は?」
「……ミサキって、人」

海斗の目が見開かれる。
俺はその時別になんでもない顔をしてたけど、でもほんとは。
ほんとはすごく、緊張してた。




 
「……美咲?え、てゆうか、なんで…」
「……前に海斗のクラスの奴らが話してるの、聞いた」

明らかに狼狽している海斗を見て、少し後悔した。

「話したくないなら別に…」
「………。すげぇ胸くそ悪くなりそうな話だけど、それでもいい?」

俺の髪に顔を埋めながら、海斗が言う。

「………。海斗、」
「……聞いて欲しいかも、俺も」
「……うん」

俺の髪を撫でながら、海斗はぽつりぽつりと話し始めた。

それは胸くそ悪いというより、とても悲しい話だった。


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