6 / 14
6
しおりを挟むそして迎えた、職場体験初日。
俺はひよこ組の前に立っていた。
クマのアップリケ(手縫い)がついたエプロンも用意したし、笑顔の練習もした。
「……よし、」
緊張はしてるけど、気合いも充分だ。
園児達の前で簡単な自己紹介を済ませると、先生から取り敢えず今日はみんなと遊んであげてくださいと言われた。
……遊ぶって…鬼ごっことかかくれんぼとか?
どうしようかと考えていると、視線を感じた。
「………」
「………」
……み、見られてる…
見慣れない人間だから警戒されてるのかもと思った俺は、懸命に笑顔を作った。
「お…お兄さんと一緒に、遊ばない?」
「………」
「………」
と、次の瞬間。
その場にいた園児の一人が、まるで火がついたように泣きだした。
「え?!ちょ、ど、どうし…」
「いやーっ!」
まるで伝染したかのように、周りにいた園児達も泣き始める。
「こわいいいい!!」
「こっ、怖くないよ!ほら、大丈夫だから!」
「うぁああん!!」
……あぁ…
何がどうしてこうなった。
子どもたちは一向に泣きやむ気配が無く、途方に暮れていると先生が慌ててやってきた。
「どうだ、現実を目の当たりにした気分は」
「……最悪っすよ…」
放課後の屋上。
本気で落ち込んでる俺を見て、早川はハナで笑った。
「情けねぇツラしてんじゃねぇよ。まだ初日だろうが」
「そりゃそうっすけど…。てか、マジどうすればいいのか全然わかんなくて…」
「………」
あの後泣いている園児達は先生が宥めてくれたけど、俺はオロオロするばかりで結局何も出来なかった。
「なんとかしたくても、ビビって泣かれるから近寄れねーし…」
「……ふーん、」
早川は煙草に火を点けた。
「てか、ビビってんのはおまえじゃねーの?」
「……え?」
「ガキっつーのは、意外と人をよく見てんだよ」
意味深な笑顔を浮かべながら、早川は言う。
「だからおまえもガキをよく見てみろ。ビビってないで」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
愛する者の腕に抱かれ、獣は甘い声を上げる
すいかちゃん
BL
獣の血を受け継ぐ一族。人間のままでいるためには・・・。
第一章 「優しい兄達の腕に抱かれ、弟は初めての発情期を迎える」
一族の中でも獣の血が濃く残ってしまった颯真。一族から疎まれる存在でしかなかった弟を、兄の亜蘭と玖蘭は密かに連れ出し育てる。3人だけで暮らすなか、颯真は初めての発情期を迎える。亜蘭と玖蘭は、颯真が獣にならないようにその身体を抱き締め支配する。
2人のイケメン兄達が、とにかく弟を可愛がるという話です。
第二章「孤独に育った獣は、愛する男の腕に抱かれ甘く啼く」
獣の血が濃い護は、幼い頃から家族から離されて暮らしていた。世話係りをしていた柳沢が引退する事となり、代わりに彼の孫である誠司がやってくる。真面目で優しい誠司に、護は次第に心を開いていく。やがて、2人は恋人同士となったが・・・。
第三章「獣と化した幼馴染みに、青年は変わらぬ愛を注ぎ続ける」
幼馴染み同士の凛と夏陽。成長しても、ずっと一緒だった。凛に片思いしている事に気が付き、夏陽は思い切って告白。凛も同じ気持ちだと言ってくれた。
だが、成人式の数日前。夏陽は、凛から別れを告げられる。そして、凛の兄である靖から彼の中に獣の血が流れている事を知らされる。発情期を迎えた凛の元に向かえば、靖がいきなり夏陽を羽交い締めにする。
獣が攻めとなる話です。また、時代もかなり現代に近くなっています。
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる