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45.隣国王子様との恋愛フラグ

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「全く気にしてないんだけどね」

 これはウィル様の伯母様からも聞いていたこと。

 ロナルド殿下は、王兄殿下と同じことをするんじゃないかって…多くの人に思われているの。

 私達と同世代の親って、イコール王兄殿下と同世代が多いから…。実際に学園在学中、殿下の行動を間近で見ていた人もいる。これは隣国では有名な話で、どの家も娘を婚約者にしたがらないみたいなんだよね。

 しかもロナルド殿下は沈黙を守り、一切否定してこなかったため、噂に拍車がかかってしまったの。

 女にだらしないと嫌っている者もいるそうで…殿下に婚約者ができないのも、その噂のせいだとか。

 いやー、女にだらしないとか絶対にないと思うけど。でも女性の気持ちが分かるからこそ、女性慣れしてるって思う人はいるかも?

 ちなみに第二王子にはそんな噂は最初からなく、婚約者もいる。王子だから。

 ごめんちょっと意味分からない。

 そしてそんな状況に心を痛めたウィル様の伯母様は、妹である側妃様にお願いしにきたのだ。王兄殿下を公的に許すことで、ロナルド殿下の状況も好転するんじゃないかって。

 実際、側妃様の許しが必要だと考えている貴族もいるみたいだし、間違ってはないと思う。

 とはいえ一国の妃をそんな理由で動かせないし、ウィル様が母方の祖父母に婚約者を紹介しに行くって名目ついでに、側妃様は怒ってないよ~って私達が代わりに言いに来たのだ。

 まぁ…ロナルド殿下は、今の状況を好都合だと思ってそうだけどね。

「それに私は、結婚するつもりがないからな」
「兄上!? 結婚は義務ですよ!」
「分かっている。でも無理なんだ。俺は…女性と恋愛できないんだ」
「兄上……」

 ロナルド殿下の中身は女性だしね。

「ずっと伯父上のせいで婚約者がいないと思われていたが、それは違う。伯父上は知っていて噂を否定しないでくれている」
「このこと、父上は?」
「…………」

 あー、まだ言ってないんだ。

「それで相談なんだが」
「王太子になるつもりはありませんよ」

 食い気味で否定された第二王子。

 別に王が結婚してなくても良くない? っていうのは甘い考えなのだろうか?

 それより…私達ってこれ以上この話を聞いてていいの?

 ウィル様と顔を見合わせ、断りを入れて私達は先に退室させてもらった。




 その後兄弟で話し合い、弟にも協力してもらって両親を説得したそう。

 まさか『別に王が結婚してなくても良くない?』って無意識に声に出してしまってたのが、解決の糸口になるとは思わなかったけど。

『元々3次元には興味なかったんだよね~』
『そうでしたか』
『だから可哀想だなんて思わないでね?』
『分かりました』
『うん! じゃあ…お米、頼んだよっ!』
『お任せください』

 滞在中、味噌をなんとか見つけたいと盛り上がったり、いつか和菓子も食べたいと、小豆を見つけたら連絡し合おうと約束して、私達は帰国の途についた。


 しばらくしてロナルド殿下は王太子となり、後継は弟の子にすると宣言した。


✽.。.:*・現在・*:.。.✽


「これ、ロナルド殿下から届いたよ」

 差し出されたのは隣国の国印が入った手紙。ローズに狙われていると、ウィル様が早急に送っていた手紙の返事が来たのね。

「拝見しても?」
「うん」

 手紙の内容は、教えてくれてありがとうってこと、貴族との関係が改善されつつあること、そして…今更婚約者に名乗りを上げてくる者がいて面倒だって事が書かれていた。

 学園に入学し殿下と接することで、噂とは違うってことを知ったんだろう。顔も整っていてイケメンだったしね。

 それから…

「小豆…気になります」

 ロナルド殿下が見つけたみたいなの。なんでも友人となった令嬢の領地で栽培されてたとかで。令ね…。楽しそうで何より、なのかな?

「実物も送ってくれてるよ」
「本当ですか!?」
「うん。メープル伯爵家用に分けてもらってるから、帰りに渡すね」
「ありがとうございますっ」

 しかも側妃様のご実家が協力してくれるそうで、私が自由にアレンジしていいって。

 やったね!

 嬉しくなり、隣に座っていたウィル様に抱きついた。そのまま膝の上に乗せられてしまったのは、不可抗力。


 攻略対象者かぁ…。

 あーあ。また悪い方向に考えてしまった。

 ぎゅっとウィル様の服を掴み、気持ちを落ち着ける。

 実はロナルド殿下から、私宛にメープル伯爵邸に手紙が届いたの。もちろん偽名で。日本人ぽい名前だったから、もしかしてと思って開いたのよね。

 その手紙は全て日本語で書かれていた。


『ウィルハルト殿下からの手紙で思い出したんだけど、アークライト王国って乙女ゲームの世界だよ! 私、友達に勧められてやってたんだ。

 プレイヤーのデフォルト名がローズ。

 でもまさか自分が攻略対象者に転生してたとは思わなかったよ。

 ちなみに私の攻略法なんだけど、自由恋愛を主張していて、婚約者がいないことを父親である王と揉めてるんだよね。それが煩わしくって隣国に留学し、ヒロインと恋に落ちる事で解決するんだけど…隣国の男爵令嬢とか問題しかないよねー』

 実際のロナルド殿下の問題は学園入学前に解決済みで、留学することもなく自国の王立学園に通っているもんね。

 うーん。ゲームって攻略後まで描かれないし、隣国王子ルートは友情エンドなのかも?


 …………ロナルド殿下には婚約者がいないって意味では、彼との恋愛フラグを折る必要はなかったのかもしれない。

 でも殿下は3次元に興味ないって言ってたし、中身女性だし、男爵令嬢じゃ王族に嫁げないし……怒らないでね?

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