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90.バイト②
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やったー! 俺、明日からカフェ店員になります。
光琉からバイトの許可をもらって、すぐに応募したんだ。
食堂もだし、校内にあるカフェは学校が休みの日は閉まっている。だから募集しても中々人が集まらないそうで、すんなり俺に決まった。
俺的には平日のみってのがありがたいけどな。
協力してくれた一樹と蓮には報告しておこう。
「どうやって説得したわけ?」
「………正直に話した」
「香坂くんの誕生日プレゼントを買いたいって言ったの?」
「言った」
俺だって黙っていたかったけど、『バイトしたい』『ダメ』の攻防戦が続くだけだし、光琉の機嫌がどんどん悪くなるしで、言うしかなかったんだ。
「まぁでも良かったね」
「おう。ありがとな」
*
「じゃあレジの仕方を教えるね」
「お願いします!」
制服に着替え、記念すべき初バイト。教えてくれるのは稜里大学に通うベータの男性。基本的にこの先輩から仕事を教えてもらうんだ。
ちなみに俺以外、店長含めスタッフは全員ベータ。
「後ろに付いてるから、次に来たお客さんで対応してみようか」
「はい!」
という会話が聞こえていたんだろう。すでにアップルティーを注文し、レジから一番近い席に座っていた光琉が注文をしに来た。
「いらっしゃいませ」
「アップルティーを」
「かしこまりました」
慣れない手つきでレジを打ち、会計をして……
って、写真撮り過ぎ。
「光琉……」
「日向可愛い」
「…………」
ここで邪魔するなら帰ってくれと言えない俺も俺だよな。
実は結構緊張しているから、店内に光琉がいてくれて安心する。
「すいません」
無事に初接客を終えてから、後ろにいる先輩に謝っておいた。
「さっきの、彼氏?」
「はい///」
「そっか。俺、ベータだってちゃんと伝えておいてね」
「え? 分かりました…?」
なんで?
「アルファの嫉妬は怖いからね」
「俺、声に出してましたか?」
「顔に書いてたかな。分かりやすいって言われない?」
よく言われますって言おうとしたら、アップルティーを受け取った光琉が、レジの向こうから腕を伸ばして抱きしめてくる。
「光琉、俺今仕事中」
「浮気」
なにかと思えば、ムスッとして濡れ衣を着せてきた。
「してないから」
「さっき顔、赤くしてた」
「それは…光琉の話をしてたからで」
「ふーん」
バイト前にも大量に付けてきたフェロモンをさらに追加してきて…俺は心地いいけど、先輩は少し嫌そうな顔をしている。恐らく、ベータにも伝わるほどの威圧フェロモンを付けているんだろう。
「先輩…俺、長く働けないかもしれません」
「確実に無理だろうね」
「ですよね…」
それからも俺がバイトの日は光琉が居座るようになった。たまにパソコンで作業をしながら…
「カッコいい」
「ははっ。岩清水くんも大概だね」
「え?」
「彼の重い愛を普通に受け入れてるし」
重い愛?
「カッコいいとしか思わないんでしょ?」
「はい……?」
だって光琉がパソコンに向かって仕事をしている姿、カッコよくないか? あの姿を見たら、光琉を好きになる人がもっと増えちゃうって心配するレベルだぞ?
「君たちお似合いだと思うよ」
「/// ありがとうございます」
「あまり顔を赤くしないで。後が怖いから」
? 何が怖いのかは謎だけど、お似合いだと言われて嬉しい。
バイトが終わり、着替えを済ませ、裏口から出ると光琉が待ってくれている。
「光琉、お待たせ」
「お疲れ様」
毎回、俺が着替えている間に片付けて、裏口に回ってきてくれるんだよな。
「ふふ」
「ん?」
「なんでもない」
お疲れ様と言いながら、ぎゅっと抱きしめてもらえるのが嬉しい。
「日向、バイト続けたい?」
「え?」
応募の時点で長く働けないかもとは伝えていた。これはオメガの生徒のあるあるらしく、店長は笑って俺を働かせてくれたけど…。
光琉もバイトをしてるし、俺に合わせて、これ以上光琉に無理をさせたくないんだけどなぁ。
「光琉、大変じゃない?」
「心配いらないよ。ただ、日数は減らしてほしいかな」
「わかった。店長に相談してみる」
バイトを続けられるなら、紅茶の淹れ方も教えてくれるって言われてるんだ。俺、アップルティーを美味しく淹れられるようになりたいから。
相談の結果、週1~週2で働くことになった。
それと…
「日向に感謝しかないよ」
蓮も一緒に働くことになった。学校内だし、俺が一緒だからと親の許可をもらえたらしい。蓮は医学部に行くための費用をできるだけ稼いでおきたいそうで。
「勉強時間減るよ?」
「日向と違ってコツコツしてるから大丈夫」
「………事実すぎて何も言えない」
俺も内部進学の道も残しておけるよう、成績を落とさないよう気をつけよう。
*
今月働いた分は来月に入金されると知り、数日後プレゼント代を親に借金することになると、この時の俺はまだ知らない。
光琉からバイトの許可をもらって、すぐに応募したんだ。
食堂もだし、校内にあるカフェは学校が休みの日は閉まっている。だから募集しても中々人が集まらないそうで、すんなり俺に決まった。
俺的には平日のみってのがありがたいけどな。
協力してくれた一樹と蓮には報告しておこう。
「どうやって説得したわけ?」
「………正直に話した」
「香坂くんの誕生日プレゼントを買いたいって言ったの?」
「言った」
俺だって黙っていたかったけど、『バイトしたい』『ダメ』の攻防戦が続くだけだし、光琉の機嫌がどんどん悪くなるしで、言うしかなかったんだ。
「まぁでも良かったね」
「おう。ありがとな」
*
「じゃあレジの仕方を教えるね」
「お願いします!」
制服に着替え、記念すべき初バイト。教えてくれるのは稜里大学に通うベータの男性。基本的にこの先輩から仕事を教えてもらうんだ。
ちなみに俺以外、店長含めスタッフは全員ベータ。
「後ろに付いてるから、次に来たお客さんで対応してみようか」
「はい!」
という会話が聞こえていたんだろう。すでにアップルティーを注文し、レジから一番近い席に座っていた光琉が注文をしに来た。
「いらっしゃいませ」
「アップルティーを」
「かしこまりました」
慣れない手つきでレジを打ち、会計をして……
って、写真撮り過ぎ。
「光琉……」
「日向可愛い」
「…………」
ここで邪魔するなら帰ってくれと言えない俺も俺だよな。
実は結構緊張しているから、店内に光琉がいてくれて安心する。
「すいません」
無事に初接客を終えてから、後ろにいる先輩に謝っておいた。
「さっきの、彼氏?」
「はい///」
「そっか。俺、ベータだってちゃんと伝えておいてね」
「え? 分かりました…?」
なんで?
「アルファの嫉妬は怖いからね」
「俺、声に出してましたか?」
「顔に書いてたかな。分かりやすいって言われない?」
よく言われますって言おうとしたら、アップルティーを受け取った光琉が、レジの向こうから腕を伸ばして抱きしめてくる。
「光琉、俺今仕事中」
「浮気」
なにかと思えば、ムスッとして濡れ衣を着せてきた。
「してないから」
「さっき顔、赤くしてた」
「それは…光琉の話をしてたからで」
「ふーん」
バイト前にも大量に付けてきたフェロモンをさらに追加してきて…俺は心地いいけど、先輩は少し嫌そうな顔をしている。恐らく、ベータにも伝わるほどの威圧フェロモンを付けているんだろう。
「先輩…俺、長く働けないかもしれません」
「確実に無理だろうね」
「ですよね…」
それからも俺がバイトの日は光琉が居座るようになった。たまにパソコンで作業をしながら…
「カッコいい」
「ははっ。岩清水くんも大概だね」
「え?」
「彼の重い愛を普通に受け入れてるし」
重い愛?
「カッコいいとしか思わないんでしょ?」
「はい……?」
だって光琉がパソコンに向かって仕事をしている姿、カッコよくないか? あの姿を見たら、光琉を好きになる人がもっと増えちゃうって心配するレベルだぞ?
「君たちお似合いだと思うよ」
「/// ありがとうございます」
「あまり顔を赤くしないで。後が怖いから」
? 何が怖いのかは謎だけど、お似合いだと言われて嬉しい。
バイトが終わり、着替えを済ませ、裏口から出ると光琉が待ってくれている。
「光琉、お待たせ」
「お疲れ様」
毎回、俺が着替えている間に片付けて、裏口に回ってきてくれるんだよな。
「ふふ」
「ん?」
「なんでもない」
お疲れ様と言いながら、ぎゅっと抱きしめてもらえるのが嬉しい。
「日向、バイト続けたい?」
「え?」
応募の時点で長く働けないかもとは伝えていた。これはオメガの生徒のあるあるらしく、店長は笑って俺を働かせてくれたけど…。
光琉もバイトをしてるし、俺に合わせて、これ以上光琉に無理をさせたくないんだけどなぁ。
「光琉、大変じゃない?」
「心配いらないよ。ただ、日数は減らしてほしいかな」
「わかった。店長に相談してみる」
バイトを続けられるなら、紅茶の淹れ方も教えてくれるって言われてるんだ。俺、アップルティーを美味しく淹れられるようになりたいから。
相談の結果、週1~週2で働くことになった。
それと…
「日向に感謝しかないよ」
蓮も一緒に働くことになった。学校内だし、俺が一緒だからと親の許可をもらえたらしい。蓮は医学部に行くための費用をできるだけ稼いでおきたいそうで。
「勉強時間減るよ?」
「日向と違ってコツコツしてるから大丈夫」
「………事実すぎて何も言えない」
俺も内部進学の道も残しておけるよう、成績を落とさないよう気をつけよう。
*
今月働いた分は来月に入金されると知り、数日後プレゼント代を親に借金することになると、この時の俺はまだ知らない。
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